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『ヒルは木から落ちてこない。ぼくらのヤマビル研究記』 [読書日記]

ヒルは木から落ちてこない。 ぼくらのヤマビル研究記

ヒルは木から落ちてこない。 ぼくらのヤマビル研究記

  • 出版社/メーカー: 山と渓谷社
  • 発売日: 2021/08/13
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
嫌われ者の「ヤマビル」の研究に愛をもって取り組む子どもたちが常識に挑む物語。各地で増え続けているヤマビル。山だけでなく里でも被害が増えています。知らない間に血を吸う嫌われ者のヤマビル。そんなヤマビルの生態研究に挑む小中学生がいます! その名も子どもヤマビル研究会。彼らは、山でヤマビルの数を数え、ときに自らの血を吸わせて育て、そして、解剖までするのです。そんな彼らが解き明かしてきたヤマビルの生態の数々を紹介します。そして、「ヤマビルはとてもかわいいいきものです」とまで言い切る、いききとした子どもたちの感受性に驚嘆する1冊です。
【Kindle Unlimited】
海抜300メートルのCST構内で暮らしていて、何が嫌かというと、時々ヤマビルに遭遇することである。海抜2,000メートルのゲドゥに昔配属されていた協力隊員の方に話を聞くと、朝起きると頭から血が出ていたとか、職場である学校に行くと、頭髪の隙間にヤマビルを乗せた状態で来ている生徒を見かけたという。1997年頃、仕事でネパール・ポカラ近郊の山の中を歩いていて、その日の宿泊先でトレッキングシューズを脱いだらソックスが血で染まっていたとか、翌日石畳の歩道を歩いていて、石の上で上半身(?)を鎌のようにもたげて「おいでおいで」としているヤマビルを何匹も見かけて血の気が引き、急いで駆け抜けたとか、ヤマビルに関してはトラウマになるような経験もしていて、それがあるのでブータン南部に駐在することになった時も、最大の脅威といったらヤマビルだった。(それに比べたら、サソリもアリもキングコブラも全然許せる。)

今月はここまで順調に読書量を伸ばしていて、次に何を読もうかとKindle Unlimitedの書籍を物色していて、見つけたのがこの1冊だった。三重県の菰野町周辺で、毎年月1回ぐらいのペースで集まり、山にいっぱいいるヤマビルを材料に、ヤマビルの生態研究を続けているグループがあるらしい。「子どもヤマビル研究会」という。小学校の理科の先生が、「子どもが主体を発動する授業のあり方」をテーマに長年研究を重ね、2011年に設立した地域の研究会だそうだ。その後ずっとその活動記録をアメブロで公開し続けておられるようだ。

ヤマビルアレルギーを克服するには、先ずヤマビルを知らねば―――そう思った僕は、さっそくダウンロードして読んでみることにした。

結論を言うと、おかげさまでヤマビルへの問答無用の拒否感はかなり軽減された。血を吸われてあれだけの「大量出血」になると、相当大きな傷が皮膚にできるのかと思っていたら、あれはヒルが皮膚に傷をつけた時にヒルジンという酵素(?)を分泌して血液が凝固しにくくするからだとあった。また、よく言われていたストッキングの有効性の実証実験も行われていたり、標題にもある通り、ヒルが木の枝や葉から落ちてきて下を歩く人の服に取り付いて中に侵入することはないというのも実証されたりと、今まで僕らが定説だと思っていたことが誤りだと実証してくれていることがすごく大きい。

それに、研究会に参加している子どもたちの生き生きとした姿を見ていると、必要以上に恐怖感を抱いている僕たち大人が、かえって大人げない気もしてきた。愛着が増す、とまではいわないが、本書を読めば極度な拒否反応はなくなる。また、自宅の寝室で1匹見かけたからといって、そこが大量生息地域だというわけでもないらしいので、毎晩恐怖に怯えながら床に就くというのもしなくてもいいようだ。1匹ぐらいだったら、知らないふりして血を吸わせてあげようかと…(笑)。

読みながら感じたのは、これって探求型学習の1つの姿だということだった。子どもたちがヤマビルの生態を調べるために先行研究をリサーチしたり、地理や地質の勉強をしたりと、必要な知識や情報を子どもたちが自身で集めていくよう、先生も仕向けておられる。子どもたちは自分でパワポで自分の研究テーマについて発表もするし、いろいろなイベントに出展してそこでも自分で自信を持って話す。有効なプレゼンの仕方も研究するようである。これを月イチペースぐらいで続けていくという方法論も参考になるものだ。

そしてさらに、子どもヤマビル研究会のウェブサイトも素晴らしい。ブログ形式なので、テーマ別検索がしづらいという課題はあるけれど、「ヒル研」の活動記録をアーカイブしておくことで、これから参加する子どもたちが、先輩たちが過去に行った研究や実験の様子、これまでにわかったこと、まだわかっていないことなどを参照できる。単にヒル研の組織や活動の概要紹介にとどまらない、ブログの良さを生かした記録集になっている。

こういう、活動を記録に残しておくことは非常に重要で、今僕たちのいるファブラボでも常々強調しているポイントでもある。いい本に出会った気がする。

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