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『ル・コルビュジエ』 [仕事の小ネタ]

ル・コルビュジエ (講談社学術文庫)

ル・コルビュジエ (講談社学術文庫)

  • 作者: 八束 はじめ
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2022/09/12
  • メディア: 文庫
内容紹介
20世紀を代表する、最も有名な前衛建築家、ル・コルビュジエ(1887-1965)。「全ての建築家にとっての強迫観念(オブセッション)」「近代建築の言語そのもの」……。スイスの若き時計工芸家は、なぜこれほどまでの世界的名声を勝ち得たのか。師との出会いと決別、数多のコンペティション落選や学界との論争、生涯転身し続けた作風の背景――。建築界の巨匠を“人文主義者”という視点で捉え直し、豊富な図版と共に、その全体像をクリアに描き出す!
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うちのカレッジには建築学科がある。伝統的な組積造建築よりも、鉄筋コンクリートを使った平滑な壁面処理を行うようなモデル製作の方を見かけることが多いので、モダニズム建築も学んでいるんだろう。学生との話の種にでもなればと思い、本書も読んでみることにしたが、実際のところファブラボCSTを利用している学生の中に、建築学科生とIT学科生は非常に少ないのが現状。コーディング命のIT学科生が実体のものづくりに関心を示さないのも残念だが、模型製作の際だけでも相当利用できそうな建築学科生の利用率が伸びないのはちょっと残念だ。今のところ、ル・コルビュジエの話題を仕入れても、宝の持ち腐れかもしれない。

しかし、本書を手にしたもう1つの理由は、ル・コルビュジエの設計した都市と建造物がお隣りのインドにはあるからだ。きっかけがなくて僕は自分がインド駐在していた3年間のうちに一度も行けなかったのだが、チャンディガルのことである。1950年からル・コルビュジエが都市計画の策定に関わっている。

ただ、何かの拍子に、僕はル・コルビュジエが設計したのはデリーだと思い込んでしまっていた。本書を読もうと思ったのも、最初からチャンディガルが念頭にあったというよりも、むしろデリーの方であった。読み進めるうち、インドが登場すること自体が終盤を迎えてからだったが、そこではチャンディガルだけが取り上げられていた。調べてみたが、どう考えてもインドでル・コルビュジエが関わった都市計画といったらチャンディガルが有名で、デリーに言及されることはなかった。僕の勘違いなのだろう。

機会があったら―――なんて言っても、たぶんもうそんな機会はないだろう。何しろ3年駐在していても一度も機会がなかったのだし、これから「何が何でもチャンディガル」なんて強烈な理由は生じないだろうと思う。まあ、何かの拍子に僕がしていた勘違いを是正し、「インドでル・コルビュジエといったらチャンディガル」だと認識を改めることができたのが、本書を読んでの最大の成果だと思う。

それと、評伝を読んでみて良かったと感じるのは、国際コンペに出したけれども、コンペで敗れた作品にも光を当てていたことであった。とかく僕らはコンペを勝ち抜いて、実際に形になった建造物の姿だけを見て、それらの建造物群だけをキュレーションしてその建築家やデザイナーを語ってしまうことが多い気がする。でも、コンペで敗れた作品も併せてみて、その建築家やデザイナーの一貫した思想や、あるいは思想の変遷を理解することも多いのだと思う。

ただ、読みづらかった。段落をあまりこまめに切らない文章だったこともあるが、建築やデザインに造詣のある人なら当たり前のように受け取ることのできる比喩が、僕の頭にはスーッと入って来ない。それでも節目節目のコンペに出展した作品と、そこで採用された作品との比較などができるように編集はされていたので、必要最低限のザラっとした流れは押さえることはできたと思うが、各論の部分までちゃんと理解できたかと言われると自信はない。

今の僕のレベルでの読書としては、これぐらいでいいだろうと自分に言い聞かせている。将来そんな機会が訪れるのかどうかは怪しいが、自分がル・コルビュジエを語るようなシチュエーションが万が一にも訪れたら、もう一度読み直してみることはあるかもしれない。(たぶんないだろうなぁ。)

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