ひとりで進め [仕事は嫌い]
![ビッグコミックオリジナル 2023年10号(2023年5月2日発売) [雑誌] ビッグコミックオリジナル 2023年10号(2023年5月2日発売) [雑誌]](https://m.media-amazon.com/images/I/51MeFh+mYbL._SL160_.jpg)
ビッグコミックオリジナル 2023年10号(2023年5月2日発売) [雑誌]
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2023/05/02
- メディア: Kindle版
隔週刊の「ビッグコミックオリジナル」は、2007年のインド駐在開始時に会社の近くにあった日本食レストラン「田村」に置いてあって、注文した後の待ち時間にパラパラとページをめくって読んでいた。それがきっかけとなって、帰国後も通勤帰りにキオスクで買ったりして、ずっと読み続け、2013年にキンドルを購入し、2016年にまた海外駐在になってからは、もっぱらキンドルで購読を続けている。
元々、かざま鋭二『風の大地』の続きが読みたくて購読を続けていたのだが、昨秋、作者のかざま鋭二さんがお亡くなりになり、連載が打ち切りとなってしまった。購読を続けていても舞台が難解でほとんど読まない作品もあり(どれとは言わないが)、購読を辞めるとしたらそのタイミングだったと思うが、その後も惰性で読み続けている。
そんなダラダラ続く購読の中で、現在連載中の作品の1つに、はしもとみつお『カレーマン』というのがある。舞台が神田神保町で、題材がカレーだということもあり、気になる作品ではあったが、画風は実は僕好みではなく、すごいかじり付きで読んでいるという作品というわけでもない。まあ、カレー自体は目の前にいっぱいあるような土地で今暮らしていることもあり…(苦笑)。
でも、5月2日発売の「オリジナル」第10号の『カレーマン』第20話の中に、ベンガルの詩聖ラビンドラナート・タゴールの有名な詩の引用があり、これがとても心に響いた。
もし君の呼び声に誰も答えなくとも
ひとりで進め
ひとりで進め ひとりで進め
もし誰もが口を閉ざすのなら、
もし皆が顔を背けて 恐れるのなら
それでも君は心開いて
本当の言葉をひとりで語れ
もし君の呼び声に誰も答えなくとも
ひとりで進め
「Ekla Chalo Re」の歌詞である。新型コロナウィルス感染が騒がれ始めた2020年春、日本で『タゴール・ソングス』という映画が上映された。感染拡大リスクを気にしながらも、僕は東京での試写会に行って、かなり早い時期に作品を鑑賞した。その中で歌われているのが「Ekla Chalo Re」だった。ずっと忘れていたのだが、今回の『カレーマン』での引用が気になり、調べてみて思い出したところである。
◆映画『タゴール・ソングス』公式サイト:http://tagore-songs.com/
◆「「ひとりで進め」~タゴール・ソング~」『カシコレラ』:
https://kasikorera2017.hatenablog.com/entry/2020/10/10/160253
劇中での歌を聴いているだけだとそれほど心に響いたわけではないのだけれど、今回の『カレーマン』での引用は、会社の中で自分が持っていた企画案を人にとられて、その人の企画として通ってしまった女性が、上司にそれが自分のアイデアだと訴えるという文脈で使われている。
そういう状況に今僕自身があると言いたいわけではないが、自分の声が東京に聞き届けられないというもどかしさ、聞き届けられないどころか、かえって足を引っ張られるような発言を連発されたり、こちらがムキになると逆にすかされたり、そういうのが続いていた時期にこの歌詞を見たので、余計に響いたのだと思う。
東京に聞き届けられないがために、現場にかかってくるプレッシャーは、全部僕たちのところで引き受けなければならない。「現場主義」というのは正しいが、それは現場がしっかりしろという意味ではなく、「現場にいない人は現場の声を真摯に聴け」ということではないのか。
この歌詞をなぞっていくたびに、東京に対して様々な思いが交錯する。2021年秋、「自〇」すら考えるほど精神的に追い込まれた当時の記憶も蘇った。その時に僕が自分の中で出した結論は、「自分の所属組織には期待しない。自分が信じた道は1人で歩いていけばいい」というものだった筈だ。
東京から返って来る反応や、逆に返って来ない無反応は、ストレスになることも多いが、一喜一憂していてもしょうがないので、ひとりで進みたいと思います。
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