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『学校という「ハコモノ」が日本を救う』 [仕事の小ネタ]

学校という「ハコモノ」が日本を救う!

学校という「ハコモノ」が日本を救う!

  • 作者: 大竹弘和
  • 出版社/メーカー: 白秋社
  • 発売日: 2022/08/17
  • メディア: 単行本

内容紹介
公立学校は、日本中の人口密集地に集中し、しかも全国各地に大量に存在している。しかし、その充実した施設群は、1年のうち170日間も活用されていない。そこで学校を、教員免許を持った教師だけの聖域とせずに地域の共有資産としての「ハコモノ」と考え、塾やスポーツ系企業、警備会社などの民間事業者に運営参入してもらう。すると地域の高齢者やボランティアが集う、まさに地域の「中核」に生まれ変わる! そしてそこは、「教育格差」や「孤食」を解消する、子どもたちの憩いの場所になる!! これは絵空事ではない。なぜなら、この手法は既に日本各地の刑務所の運営に使われ、成功しているシステムを踏襲しているからだ。官民連携の教育、そのために活用すべき学校という「ハコモノ」の可能性を、世界の事例も交えて全ての教育関係者、自治体関係者に問う、渾身の書!!
【Kindle Unlimited】
自分のリサーチが十分でないこともあると思うが、Kindle Unlimitedですぐに読みたい本が見つからない状態が2カ月ほど続いていた。間隔を開けた方がいいかもなと思ってしばらくKindle Unlimitedを使っていなかったのだが、つい先日、読書メーターで僕がフォローしている読書家の方が、本書を紹介しておられて、しかもKindle Unlimitedとあったので、すぐにダウンロードしてみることにした。

廃校の校舎の利活用の話なのかと思っていたがさにあらず、既存の学校でそろそろ建替えの時期が到来している校舎から、民間事業者の運営参入を見越した設計として、建替えにかかる資金も民間から調達しようというPFIのお話しだった。

それはそれで面白かったので良しとする。もう20年も前になるが、当時勤めていた部署で官民連携(PPP)とかPFIとか勉強会を主催してレポートを書いていた時期が僕にはある。当時の文脈ではもっと大きな運輸交通インフラや水道、通信などでのPPPの話が中心だったが、少しだけ教育や保健の話も取り上げた。当時から比べればPPPの余地ははるかに広がっていて、本書の話も、ハコモノとしての学校の活用の話。どこの地域でもコミュニティの中心に学校は存在し、廃校になるとそのコミュニティは廃れていくリスクが相当高いと言われている。

 学校は365日、常に存在しています。しかし実は、1年のうち170日が休みなのです。「休みの日は使わないのが当たり前だ」という感覚に、国民も、慣れてしまっています。(位置No.491)

 学校を教員と子どもだけの場所に限定するのは、あまりにもったいないといえましょう。もっと学校施設に資本を投下し、市民が使える場所に変えるべきです。(位置No.494)

子どもや住民のための「場所がない」のではなく、縦割り行政の結果、「使える場所を使えなくしている」(位置No.723)

 学校教育以外の学習、文化、スポーツ、福祉などを、学校という「ハコモノ」を活用してワンストップで行うサービスが「地域交流デパートメント」です。
 この仕組みを完成させると、「行政」「民間事業者」「住民(子どもから高齢者や障碍者まで)」が、ともにメリットを享受するトリプルウィンの関係を築くことができます。さらに、この施策が拡大していけば、地域の雇用創出にもつながります。(位置No.782)

このあたりの引用を組み合わせれば、本書の論点はだいたいカバーされているのではないかと思う。本書も終盤は20頁近くにわたって、地方自治体の首長や国会議員による祝辞がこれでもかと続くので、実際の本文の分量としてはさほど多くなく、3時間もあれば読了可能だ。

確かに、うちの近所にある小学校がこういう形で民間事業者に開放されたら自分は使うだろうな~とは思わないでもない。もっと悪乗りすれば、そこの工作室にデジタル工作機械も持ち込んでくれたら、僕はもっと入り浸りになるだろう。

しかし、この著者は、地域にある他の既存のハコモノについても、学校に機能集約しろと提唱している。うちの近所でいうと、自宅から最も至近距離にある老朽化が進んだコミュニティセンターなんかは整理の対象になってしまうのだろうか。そう考えると、ちょっと悩ましいご提案だな。

また、本書を読んで、こんな「地域交流デパートメント」が仮にうちの近所にあったとして、確かに僕も老後のパートタイムで働いてみたいという気持ちはあるけれど、5つほどの学校を束ねて民間事業者に運営委託しないと収益性が確保できないというような話になると、自分と縁もゆかりもない学校にも働きに行くというようなケースもあり得るのかなというのが気になった。本書はあまり雇用条件の話にまでは踏み込んでいないけれど、意外と雇用創出にならないのかもしれないというのが気になった。

方向性としてはこれはありだろうと思う。近所の学校がこういうデパート概念を導入してくれて、工作室に3Dプリンターを入れてくれたら、是非働いてみたいです。
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