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『だれでもデザイン』 [仕事の小ネタ]

だれでもデザイン 未来をつくる教室

だれでもデザイン 未来をつくる教室

  • 作者: 山中俊治
  • 出版社/メーカー: 朝日出版社
  • 発売日: 2021/11/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
みんなのためのデザインから、一人ひとりのためのデザインへ。偶然の出会いを大切に、隣の人の脳みそも借りて。スケッチして、観察して、アイデアを伝え合う。Suicaの改札機、美しい義足。人間と新しい技術の関係を考えつづけてきたデザイナーが中高生に語る、物づくりの根幹とこれから。「才能とは無関係。誰もが身につけられる方法を話します」
・ささやかでも、誰かを確実にハッピーに
・まわりのものをよく見る(本当に見てる?)
・言語としてのスケッチは確実に上達する
・楕円が描ければ、人工物も、自然物もなんでも描ける!
・ものを作るために、作り方を発明する
・「誰も見たことがないもの」を描く
・アイデアが生まれる瞬間に触れる
・「うまくいかなさ」をいくつも発見する
・ウケなくてもくさっちゃダメ
・「ひとりのため」のデザインが未来を開く
人間がなにかを作ることの意味を、作りながら手で考える。本書で、一緒に手を動かしながら、体感してみてください。
【購入】
今から1カ月前の話になるが、東京駅近くの八重洲ブックセンターが閉店した。自分の記憶が正しければ、僕が父に連れられて初めてこの書店に来たのは、1979年3月下旬のことだ。虎ノ門で開かれた英検の表彰式で村松増美先生の講演を聴き、岐阜に戻る前に立ち寄ったこの巨大書店で、父に買ってもらった1冊が村松増美『私も英語が話せなかった』(サイマル出版会)だった。

大学に入ってからも、ここの語学書・洋書階にはたびたびお世話になった。バイトのヘルプで某フロアのエスカレーター踊場で働いたこともある。初めての訪問から44年後、3月31日で閉店を迎えるこの老舗書店で、かなりガラガラになっていた棚を物色し、4冊を購入して、愛着あるこの建物に別れを告げた。

本日ご紹介する本は、その最後に購入した4冊のうちの1冊である。「デザイン」書籍のコーナーに平積みされていた。著者のことはほとんど何も知らなかったが、「だれでも」というタイトルに惹かれて手に取った。閉店前の割引があったわけじゃないが、360頁もある本で税別1900円なら、出してもいいかと思って購入した。今週ようやく読み始めた。結論はというと、お金を出した以上の価値のある本だった。

繰り返しになるが、僕の問題意識は誰もがデザインできるように自信を付けてもらうにはどうしたらいいかというところにあった。以前何かの記事でも書いたし、他の方が著書の中でも言及されているが、ブータンの人って「絵心」がない、というか、デザインのセンスがないと僕は感じていた。

ファブラボCSTで観測していると、「〇〇を作りたい」とやってくる学生がちょくちょくいる。ぼそぼそとしゃべる英語があまりにも聴き取れないので、「寸法入れたスケッチを描いてみてよ」と頼むと、僕が何を言っているのかわからないという困った表情をする。で、かろうじてスケッチを描いてくれた子の絵を見ても、何が作りたいのかがまったくわからない。何かモデルにしているものがあるようなので、それを見せてくれと言うと、ネットで拾ってきた写真を見せてくれる。それでようやく何が作りたいのかがわかる。(「寸法は?」との問いには、ほとんど答えられる子はいないのだが、まあそれは別の話…)

なんか、もうちょっと手描きのスケッチのレベルを上げられないかなと考えていた。僕は中学の頃、落書きどころか漫画を描いていた時期があって、「ジャンプ」や「サンデー」の掲載作品のアングルを模写したりして、自己流でイラストをやっていた。でも、これだと人に伝えるというのがうまくできない。

そんなところに、この本と出会ったという次第。本書は、著者が関東地方のいくつかの学校から高校生を集めて開いたものづくりプロトタイピングの4日間ワークショップで、毎日何をやって、参加した生徒とどんな会話を交わしたのかをまとめた記録集になっている。いわば、4日がかりのメイカソンの運営記録である。前半の2日間は、描画の基本練習のようなところから、身の回りの製品を分解してその中から気になったパーツをスケッチしてみるというところまで体験させている。後半は、分解した部品から拡張させて新たなプロダクトをデザインするというアイデアスケッチと、それに基づくプロトタイピングの体験にまで展開していく。

描画の基本演習からプロトタイピングまでどう進めればいいのか、この本自体がアイデアソン、メイカソンの運営のノウハウの詰まった1冊となっている。今の僕の問題意識に、恐ろしくピッタリ合致した内容の本だった。参加者にこういうふうに話しかけたらいいのかとか、学ばされることが非常に多かった。

そうは言いつつも、自己流で学んだ描画だけでは、まだまだ不十分だと言うのも痛感させられた。先ずは自分自身でスケッチを何度もやってみて、まともな絵が描けるようになることから始めないと。本書で描かれた出来事の追体験の第一歩は、まさにスケッチの練習ということであった。

ありがとう、八重洲ブックセンター。最後の最後に、素晴らしい本と出会わせてくれて、本当にありがとう。
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