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『ヤラセと情熱 水曜スペシャル『川口浩探検隊』の真実』 [読書日記]

ヤラセと情熱 水曜スペシャル「川口浩探検隊」の真実

ヤラセと情熱 水曜スペシャル「川口浩探検隊」の真実

  • 作者: プチ鹿島
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2023/01/12
  • メディア: Kindle版
内容紹介
70年代後半から80年代にかけ、世界を股にかけ、未知の生物や未踏の秘境を求めた男たち。それが川口浩探検隊。ヤラセだとのそしりを受け、一笑に付されることもあったこの番組の「真実」を捜し求めるノンフィクション。当時の隊員たちは、どのような信念で制作し、視聴者である我々はこの番組をどのように解釈してきたのか。そして、ヤラセとは何か、演出とは何か。当事者の証言から、テレビの本質にまで踏み込む危険な探検録。
【購入(キンドル)】
なんだか、調子が乗らない日々が続いている。眼前にやるべきことは山積していて、正直自分1人の手に負えないぐらいなのに、先ず何から手に付けていいのかがわからない。帰宅したらしたで、仕事から解放されて、日本で買ってきた本でも読んで読書して過ごすべきなのだろうけれど、読書にも身が入らない。

なんだか、ちょっと精神的には落ち込んでいます。理由はわからないのだけれど、なにか、モヤモヤという感じが抜けない。

それでも何か、読書のスピードを上げられる本を1冊読みたいと思った。小説もいいのだけれど、これもなんとなく、知人が編集者をやっている双葉社の刊行物でもトライするかと、ふとダウンロードしたのが本日の1冊。

テレビ朝日の水曜スペシャル「川口浩探検隊」シリーズは、1978年3月が第1回放映で、1985年11月の第45回で放映が終了している。僕が中学3年の春から、大学4年の秋までをカバーしている。本書の筆者は僕よりも7歳年下なので、始まりから終わりまで熱狂してシリーズを見ていた口なのだろうが、僕自身は大学受験に向けて超朝型勉強を始めた高校2年時以降、大学時代はテレビもない生活をしていたので、水スぺをかじり付きで見ていた記憶があまりない。せいぜい、中3から高1にかけての2年間、シリーズでも最初の10本程度の記憶である。

ただ、その序盤の10本程度の記憶の中で、毎回何か新しい発見があるんじゃないかとハラハラしながらチャンネルを合わせ、その期待が盛り上がる瞬間にCMを挟まれ、いつの間にか夜8時45分を回っていて、最後はメーンディッシュも見られずに番組が終わって「やられた」とがっかりするのを繰り返してきた。

途中、川口隊長以下隊員数名が原住民に捕まって檻に入れらたシーンを檻の外から撮影している映像があった記憶がある。もっと記憶が定かなのは、カメラマンが川口隊長に先回りして、後ろから来る隊長をカメラ撮影しているシーンは何度も出てくる。前方にどんな危険が潜んでいるのかわからない場所で、それに背を向けて川口隊長を撮るというのがどんなに危険なのか、僕たちにでもわかる。何もないと安心していなければ前方に背を向ける撮影などできない筈だ。それを見て、何かしらのシナリオがあって、それに基づき探検隊は動いているに違いないと僕らは学校の教室でも話していた。

それでも番組は見た。見ないと翌日の学校での話題に付いて行けなかったし、そうでなくても、ある種常習性の強い演出にまんまと乗せられていたというのは認めざるを得ない。幻滅していたら早々に番組を見なくなっていた筈だが、それでも新聞のテレビ欄に「川口浩探検隊」の文字を見つけたら、その日の生活をその番組に合わせていた自分がいた。

あの時代に、外国との接点といったら、僕らには英語の教科書以外には、BCL(海外短波放送)とF1レースぐらいしかなかった。隣国の中国ですら実態がよくわからない怪しい国であり、そんな中でも人よりは外国に興味を持っていた僕には、外国に出かけていく探検隊ものは、要チェックのコンテンツだったのである。たとえ、そこに演出の要素が含まれていたとしてもだ。インターネットもなかった時代なので、テレビで報じられた情報は、僕らはそのまま受け取るしかなかったのだ。

後年、「徳川埋蔵金」で同じような手法に乗せられて、毎回番組を見て、毎回落胆して髪をかきむしったことがあるが、「川口浩探検隊」シリーズの番組制作スタッフが「徳川埋蔵金」にも流れていたらしい。少年たちに夢を与えつつ、かつ視聴率だけはがっつり稼ぐというこの手法は、水スぺの「川口浩探検隊」シリーズあたりが起源になっているらしい。で、ここで培われたノウハウが、その後の海外ロケ番組にも受け継がれていく。本書を読みながら、そのDNAの広がりというのも実感できる。

ただ、今だったらやっぱり「ヤラセ」と断定される要素が多かったようである。たぶん「演出」だろうと僕らが思っていた以上に、「演出」が多かったのを知った。プロレスを「ショー」だと揶揄する人はいるが、「川口浩探検隊」も一種のショーだ。「ドキュメンタリー」として見ちゃいけないコンテンツなのだ。でも、そうであったとしても、今のご時世でここまではできない。録画やネット検索でチェックがされやすいから、事実と異なる映像や表現があれば、すぐに指摘を喰らって炎上しかねない。

番組制作にはあまり面白みのない世の中になってしまったのかもしれない。そう考えると、無難なバラエティ番組が乱造されていてテレビが面白くなくなったというのもその通りなのだろう。

そういう、テレビ業界の変遷を理解するのに、1980年代前半を風靡した「川口浩探検隊」というのは興味深いコンテンツだと言える。


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