『そして誰もゆとらなくなった』 [朝井リョウ]
内容紹介【購入(キンドル)】
『時をかけるゆとり』『風と共にゆとりぬ』に続く第三弾にして完結編。怒涛の500枚書き下ろし!頭空っぽで楽しめる本の決定版!修羅!腹痛との戦い/戦慄!催眠術体験/迷惑!十年ぶりのダンスレッスン/他力本願!引っ越しあれこれ/生活習慣病!スイーツ狂の日々/帰れ!北米&南米への旅etc…… 一生懸命生きていたら生まれてしまったエピソード全20編を収録。楽しいだけの読書をしたいあなたに贈る一冊です。
「岐阜県推し」と申しつつ、最近、朝井リョウの作品読んでないことに気付いた。
『正欲』とか『死にがいを求めて生きてるの』とか、この間にリリースされてた著書もあったのだけれど、タイトルだけ見てあまり買う気が起こらず、なんとなく敬遠して現在に至っている。
デビューしてからもう13年も経つのか。デビュー当時は早稲田の学生だったから、今やリョウ君も30代か。僕自身が彼の親ぐらいの世代であるため、彼が作品で取り上げるテーマに途中からちょっとついて行けなくなったわけだが、小説はついて行けなくても、エッセイが切り取る彼の日常ぐらいはちょっと覗いても面白いかも―――そう考えて今回は、最新のエッセイ集をダウンロードすることにした。
「ゆとり」三部作も、一作目の『時をかけるゆとり』を読んで面白いと思ったのは7年前。途中の二作目はすっ飛ばし、最新作にして完結編と銘打たれている本書に直接向かうことにした。なにせまだ発刊から2ヵ月しか経過してない。彼の近況を知るには最も適した1冊だ。
スウィーツ好きとか、ここ12年で12キロ太った話とか、映画『ラ・ラ・ランド』にドはまりしている話だとか、それなりの歩みは感じさせるものだった。それに、登場する彼の友人の多くが結婚していたり、勤め先を辞めて別の地での生活を始めていたりしている。ビーチバレーだったりダンスだったり、彼の交友関係の広さと持続性には関心させられるところもあるが、その友人たちも各々の生活が確立されつつあり、変化というのを若干ながらも感じた。「ゆとり世代」も30代を迎えるようになり、ゆとりなどと言っていられなくなってきたのかも…。
一方で、今回のエッセイはウ〇コにまつわるエピソードがものすごく多い。僕もその傾向はあって、宿泊の際に誰かと相部屋になると本当に緊張するし、朝のトイレの回数と滞在時間はそれなりに長い。でも、
著者の程度はその僕をはるかにしのぐもので、旅行にも行けない、バスや電車での長距離移動ができない等と聞くと、ちょっと気の毒になってくる。面白いのだけれど。
著者がデビューした頃、『死ぬかと思った』というしょうもない本が出て、腸の過敏で悩んでいるのは世の中僕だけではないのだと留飲を下げたことがあった。それ以来の爆笑だった。『死ぬかと思った』は、匿名の投書によるエピソードが収録されていた本で、息抜きに読むのには最適だと当時も高評価していたが、『そして誰もゆとらなくなった』の方は朝井リョウ君の実名エッセイ。作家人生大丈夫なのかなと、余計な心配もしてしまった。
トイレにアクセスできない状態で便意をもよおした時、経験者ならおわかりだと思うが、人はとんでもない行動に出る。一時的に「ゆとり」を無くし、頭の中が最悪の事態をどう回避するかでいっぱいとなる。リョウ君の友人たちだけでなく、リョウ君も「ゆとり」を失う事態が頻発するエピソードの数々。そして、誰も「ゆとらなくなった」というわけか…(笑)。
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