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国王行幸のスピード感 [ブータン]


9月7日(水)、国王陛下御一家がプンツォリンを訪問されたことがBBSで報じられた。BBSの報道の中に少しだけ言及があるが、この日、国王陛下はお昼前から昼過ぎにかけてCSTを訪問され、3、4年生に向けた演説と、その後教職員とのご接見をこなされている。


翌日、英国のエリザベス女王がお亡くなりになった。おそらく慰霊式典が行われるのだろうと思っていたら、9日(金)にそれがサムチで開かれたとある。南部行幸の途中ではあったが、迅速にやるべきことはやられたということだろう。

こうしてサムチで8~9日とお過ごしになられた後、10~11日の週末は、CSTの教員やプンツォリン市役所職員、その他プンツォリン周辺地域の政府関係者を集めた夕食会があるので予定を開けておくようCST教職員のグループチャットで情報が回った。土曜日にCSTのバスケットボールコートを使う可能性があるというので、教員はダンスの練習までして過ごしたが、結局土曜日ではなく、日曜夜にプンツォリン市内のRIGSS(王立ガバナンス戦略研修所)フロアを使って行われた。国王陛下は、そこにも王妃様と一緒にお越しになられた。

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石内良季
「「開発をともに進める」国民の形成
-ブータン国王による地方行幸の目的とその機能-」

『南アジア研究』2019巻(2021)、31 号、p. 85-117

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjasas/2019/31/2019_85/_article/-char/ja
要約
ブータン国王は、時に「人民の王」や「菩薩王」と呼ばれ、人々に尊敬と敬愛の念を抱かれている。一方、国民総幸福量や「上からの民主化」など、ブータン国王の影響が著しく反映されるブータン社会において、王制がブータンにおける国民形成と結び付けて語られることはこれまでほとんどなかった。そこで本稿では、1967年から2000年までの間に発刊されたKuensel 社の英字新聞を用い、ブータン国王による地方行幸の目的とその機能の分析を通じて、国民形成への影響を明らかにした。国王はブータン各地を行幸し、スピーチの実施や人々と直接触れあう中で、開発への参加と協力を繰り替えし主張してきた。そのうえで国王による地方行幸は、開発計画と密接に結びつき、南部問題といった社会状況の変化の中で、「開発をともに進める」という国民が共有すべき属性が定義づけられ、強化されていく場として機能したと考えられる。

この週末、一時帰国を1週間後に控えた身の回りの整理の過程で、日本南アジア学会の学会誌のバックナンバーのうち、ブータン関連の論文ぐらいは目を通しておこうと思い立ち、ざっと読んだ。

この研究が扱っているのは1967年から2000年までであり、続きがどうなのかは知りたいところなのだが、三代国王陛下の時代の地方行幸は道路網整備の制約から中部や東部にはなかなか行けてなくて、でも南部は国道2号線が既に開通していたので、比較的頻繁にご訪問されていたらしい。また、同じ南部でもプンツォリンやサムチだけでなく、インド側ルートを使ってサムドゥップジョンカルを訪問されるというもあったようである。

興味深かったのは、1968年5月下旬の地方行幸で、東部タシガン県のシェラブツェ高等学校開校式から、南西部サムチ教員養成学校開校式までを、中2日で走破されている。さらに言うと、サムチの前日にはブータン銀行の開業式に参加されている。当時ブータン銀行の本店はプンツォリンにあった。従って、シェラブツェ校のあるカンルンからプンツォリンまでを、中1日で移動されていることになる。これは、サムドゥップジョンカルに出てインドルートを走らないと実現困難な行程だ。また、当時ならプンツォリンからサムチ教育大学に行くのにも、いったんインド側に出て移動されていた筈だ。

石内論文によると、その時期その時期の王様の地方行幸にはそれぞれ目的があったとのことだが、今だったらプンツォリンやサムチ入りはどう捉えることができるのだろうか。王様がCSTで学生に演説されたこととも関連するんだろうか。

それと、先週水曜日から週末にかけて二度国王陛下に拝謁する機会をいただいて、そのどちらにもツェリン首相が同行されていた。国王の地方行幸には首相を帯同するというのは、ほぼ例外がないように思われる。国会の会期中であっても、それは行われていたと記憶している。

石内論文でカバーされている期間も、国王の地方行幸には首相が同行していたのだろうか。その慣習は、民主化以前と以後で変化はあったのだろうか。石内さんの分析のベースはクエンセルの記事だが、記事だけでは首相の同行までは言及されていないことの方がほとんどなので、調べようがないだろうが、ちょっと興味がある。
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