僧院のデジタル化 [ブータン]
生計向上のため、僧も縫製を学ぶ
Monks undergoing tailoring training for better livelihood
Thinley Dorji記者(ペマガツェル)、BBS、2022年8月1日(月)
http://www.bbs.bt/news/?p=172780
【要約】
この国は大きな変革を迎えている。変化はほとんどのセクターで見られ、僧院であっても僧侶が様々な技能開発研修を受ける姿が見られる。独立し達観した生活を過ごせるようになるのを支援するためだ。その一環として、労働省は、農村技能開発プロジェクトを通じ、Pekar Choeling Yenlag Rabdey僧院の僧15人を対象に、ペマガツェル県ナンラムにおいて、縫製の研修を実施した。
3ヵ月にわたる研修において、若い僧は法衣の縫製を学ぶ。僧侶としての所作やエチケットを学ぶだけでは生活を持続可能なものにすることはできない。法衣やその他の衣類を自分で縫えたら、買う必要はない。ちゃんと寸法を測って、自分の体にフィットした法衣を作ることもできる。僧団の僧侶の衣装も縫ったり刺繍をほどこしたりして、これまでなら破れたら破棄していたような法衣も直すことが可能。若い僧侶の収入創出にもつながる。
今回の研修に若い僧を送り出した僧院の代表によると、今後も政府からの支援を探り、若い僧たちに、技術やコンピュータ技能、電子機器の修理の技能等を学ぶ機会を与えていきたいとのこと。
ナンラムで開かれた縫製技能研修を取り上げるのは、今年5月1日に続いて二度目となる。その時にも述べたことだが、どうやら元々ミシンが設置されている会場での技能研修のようで、参加者のその後に対する支援の仕方とかもパッケージになっているのかどうかは報じられている内容からはあまりよくわからない。
見方を変えて、この研修会場のミシンが、研修が行われていない期間中も一般ユーザーに開放されていて、利用したい人はわずかながらの使用料を支払って、かつ生地は自分で持ち込んで、使わせてもらえるというwin-winの関係でもあればいいのかもと思う。僕らがCSTに作ろうとして「ファブラボ」の縫製特化型の施設となり得るかも。たぶん、そういう施設の運営の仕方はされていないのだろうけれど。単なるSanchaiの妄想です。
現在開設準備も大詰めに入っている「ファブラボCST」にもデジタルミシン、ロックミシン、刺繍ミシン等が据え付けられている(下写真)。10人も呼ぶような大掛かりな研修は難しいだろうが、1人か2人ぐらいの小規模な研修なら実施して、先述したような機械利用については考えてもいいと思っている。
さて、このBBSの縫製技能研修の記事を取り上げたのは、恒例の「ペマガツェル」ネタだからというだけが理由ではない。むしろ、対象者が若い僧だったというところがむしろ特筆される点だ。
仏教界にもイノベーションを―――という号令が王様から出ているらしいというのは、僕が4月にプンツォリンに越してきてすぐに耳にした。パサカの僧院の方がカレッジを訪ねて来られて、何かできないかと学長と相談していかれたそうである。学長も頭を悩ませ、若い僧2人を派遣してもらって1週間のワード、エクセル操作研修を開催された。「君も考えてくれ」と言われたのだが、そのレベルからはじめたのなら、僕の出番はもうちょっと先かなと思ったのと、僕はゾンカ語がしゃべれないから、若いとはいえ僧院の方とのコミュニケーションが「笑顔」以外ではとれない。
それ以前に、僧院での生活のどこにどうデジタルファブリケーションがフィットするのかがなかなかイメージしにくかった。一度、近所の僧院を見学させてもらい、何ができるのかを考えてみたりもしたが、木材の切削加工はむしろ大工さんがやっておられるお仕事だし、せいぜい、据え付けられている仏像をスキャンして3Dデータにして、お土産物として販売するとかぐらいかと思ったいた。ちなみに、コピーはしてもいいそうです。
そこに今回の記事。なるほど、若い僧がまとっておられる法衣の縫い仕事なら、確かにあった方がいいかもしれない。同じ僧院から15人もの若い僧が研修に参加できるというのであれば、そこそこの需要は院内にもあるのかなと思われるので、それなら僧院に1台、ミシンを置いてもいいかもしれない。で、そのミシンで手に負えない場合、あるいはミシンに改良を加えたりしたい場合、お近くのファブラボへどうぞ―――となったら嬉しい。
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