『トヨトミの逆襲』 [読書日記]
内容紹介【購入(キンドル)】
経済界を震撼させた超話題のビジネス小説
「99%が真実」という噂で書店から本が蒸発した!? あまりに詳しすぎる内部情報、関係者しか知らないはずのエピソードが満載だったため、小説を偽装したノンフィクションではないかと噂され、発売と同時に一気にベストセラーとなった超問題小説「トヨトミの野望」の第二弾が遂に文庫化! EV、自動運転、ライドシェア、さらにカーボンニュートラル、地球温暖化。激震する自動車業界の巨大企業に、さらに世界的IT企業が襲いかかる。持ち株比率たった2%の創業家社長は、この難関を乗り切れるのかーー気鋭の経済記者が覆面作家となって挑む「この国の危機」の真実。新聞が書けない極秘情報満載のビジネス小説登場!
アマゾンや読書メーターの書評に、「前作と続けて一気に読んでしまった方がいい」というコメントをいくつか見かけたこともあり、実際に僕もそうしてみた。週末読書だった。土曜日は午前中は仕事、午後も15時以降に仕事があったため、その間の空き時間とか、仕事が片付いてからの自由時間とかを使い、土曜日だけで一気に読んだ。
タイミングとしてはちょうど良かった。本作品の結末が明らかになるのは2022年の年末頃だ。つまり、前作から本作にかけてはずっと実際にあった出来事を織り交ぜ、それを作品の構成にうまく生かして描かれてきたが、本作品の後半になると物語の舞台が現時点を追い越し、未来に起こることを予想しつつ描かれている。それも遠い未来の話ではないので、経済記者かつ覆面作家の著者の取材と分析にもとづく未来予測が、どれくらい当たるのかを見てみるにはちょうどよい。
もちろん、トヨ〇自動車の現社長が退任するとか、航続距離が1000㎞を越えるEVを本当にトヨ〇自動車が年末までにリリースできるのかとか、そうした近未来の話だけでなく、自動車業界とIT業界が相互に乗り入れてのトータルモビリティサービスへの移行といったことは、今の趨勢からいって確かにその通りだと思う。現在の自動車業界が直面する課題と今後の方向性を理解するのにも役立つ経済小説だ。
また、将来の話になってくるので、前作と違い、実在の人物や企業がモデルとして存在するのかどうかもわからなくなっており、本作品は作者の創造性が発揮しやすい内容となっている。単にエンタテインメント小説と割り切って読んでも、十分楽しめる作品だ。特に、森製作所がトヨトミ自動車との取引打ち切りからコイル巻き技術をさらに突き詰めていき、しまいには豊臣統一社長に頭を下げさせるという展開は、池井戸潤『下町ロケット』シリーズを思い出させるような面白い展開になっている。
僕の気に入ったフレーズを2カ所だけ拾って、本日の紹介記事をまとめさせていただきたい。
AIにブロックチェーン、IT、つまりコンピュータサイエンスの先端技術ばかりが注目されますが、だからといってものづくりの価値が失われるわけじゃない(p.270)
あなたは昔、”この指とまれ”と言って、先端技術でパートナーとなる企業を募ったが、強力な仲間を集めるためには自分で走り回らなければならない(p.281)
どちらもどこかの誰かさんに伝えたい言葉であるが、先ずは自分の肝に銘じて、自分の行動として率先して示していきたいと思う。
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