プンツォリンの災害への備え [ブータン]
プンツォリンの災害への備えは改善が必要
Disaster preparedness in Phuentsholing needs improvement
Rajesh Rai 記者(プンツォリン)、Kuensel、2022年7月6日(水)
https://kuenselonline.com/disaster-preparedness-in-phuentsholing-needs-improvement/
【ほとんど抄訳】
7月4日夜、午後8時20分、リンチェンディンの5階建てビルが炎に包まれた。人が数名、中に取り残されている。
これは、プンツォリンが災害発生時にどれくらい備えができているのかを知るための訓練である。この災害シーンが午後8時20分に発動され、リンチェンディンに災害対応チームが集結するのに47分を要した。警察が最初に到着、さらにリンチェンディンの区長(ツォッパ)、市助役、さらには市長、その他が続々と到着した。
また、De-suupはこうした非常事態に対応できる装備を十分していないことがわかった。かれらは火災に対応するのにいつものゴム底靴を履いていた。王立ブータン警察(RBP)とDe-suupは、いずれもこうした事案に備えるための、トーチランプやヘルメット、ブーツ、ナイフ等の基本装備が必要であることがわかった。
警察の緊急対応チームは、火災発生から33分後に現場に到着。救急車は訓練の場所を見つけるのに手間取り、反対方向に行ってしまった。現場到着は午後8時50分だった。
ある警察関係者の弁「我々はそれができるし、ちゃんとやらねばならない。24時間勤務体制を取っている以上、有事の際にはすべてをやめて災害の現場に直行する必要がある。人命救助が第一、財産の保全は二の次だ。」
プンツォリンは災害高リスク地区に位置する。ほとんどの災害はモンスーン期に発生する。地滑りや鉄砲水が最も頻繁に起こる。
ウッタル・クマール・ライ市長は今回の訓練における対策本部長を務め、プンツォリンでこのような訓練を行うことは重要だと述べた。「非常時に備えて、関係機関がどれくらい迅速に動けるのかをチェックしておくのは重要だ」と述べた後、今後数日間、このような訓練が頻繁に行われる予定だと述べた。一般市民もこれには加わる。 .
僕が2016年から19年春まで前回ブータンに駐在していた頃、内務文化省災害管理局(DDM)は、職員だけじゃなく主要幹部も留守のことが多い役所であった。なぜいつもいないのかというと、県や市の災害管理計画の策定支援のため、上から下まで、多くの職員が全国各地を走り回っていたからだ。で、それだけ時間をかけて各県や各市が策定した災害管理緊急対応計画は市民に公開されたかというと、少なくとも僕がブータンを離れるまで未公開のままだった。
先月、「多文化防災」というテーマの勉強会にオンラインで出た際、「そういえば当時の計画はもう公開されたのだろうか」と急に気になり、勉強会の最中にネットで調べてみた。すると、プンツォリン市、チュカ県ともに、既に災害管理緊急対応計画がウェブ上で閲覧可能な状態になっていた。自分の身は自分で守るのが大前提だと思ったので、自分の住んでいるプンツォリン市の計画書はざっと目を通してみた。
読んでみると、プンツォリン市の想定災害としては洪水と土砂崩れが中心とされているのがわかる。また、市役所の機構図とか、災害時にどこの誰が動員されて、各々の連絡先携帯番号と、役割分担、さらには災害時の市役所の防災関係装具備品のリスト、2022年までの行動計画も書かれていた。
大災害の際に、どこが避難所になるのかも書かれている。その地区に住む外国人は、読んでおいた方がよい。僕の場合は、CSTのグランドだというのがわかった。
今回の火災を想定した訓練(モックドリル)は、この行動計画にも沿ったものだったようだ。但し、この行動計画では2018-19年度に実施すると書かれてあった。その頃に1回目は開始していたのかもしれないが、クエンセルの記事にあるような課題が今回の訓練で露呈したのだとしたら、おそらくこれが第1回だったのだろうと想像する。
また、記事に出てきた現場に駆け付ける関係者の顔ぶれについても、この行動計画で挙げられているメンバーであったことがわかった。災害管理緊急対応計画を斜め読みすると、あまり「共助」の部分への言及がなく、災害対応は公的機関中心で行うという「公助」の部分が際立っている印象である。実際こうして訓練の様子を見てみると、住民の存在は希薄で、この計画の運用は公的機関中心に進められるというが裏付けられた気がする。であれば市民への公開が先送りになっていたのも合点がいく。
もう1つ、市の災害管理緊急対応計画には、CSTの役割が、リンチェンディン地区で起きた火災の際の対応で人の動員がかけられるという点ぐらいの想定しかなされていないというのもわかった。教職員だけじゃなく、学生も多くが居住する大学構内での火災の場合は、自分たちでなんとかするというのはその通りだと思う一方、それならCSTの断水状態を長引かせるのは、有事への備えとしてどうなのかという気もする。
ティンプー市の災害管理緊急対応計画も公開されているんですかね。首都在住者は読んでおかれると宜しいかと思います。
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