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『ふたつのしるし』 [読書日記]

ふたつのしるし (幻冬舎文庫)

ふたつのしるし (幻冬舎文庫)

  • 作者: 宮下奈都
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2017/04/11
  • メディア: Kindle版
内容(「BOOK」データベースより)
「勉強ができて何が悪い。生まれつき頭がよくて何が悪い」そう思いながらも、目立たぬよう眠鏡をかけ、つくり笑いで中学生活をやり過ごそうとする遙名。高校に行けば、東京の大学に入れば、社会に出れば、きっと―。「まだ、まだだ」と居心地悪く日々を過ごす遙名は、“あの日”ひとりの青年と出会い…。息をひそめるように過ごす“優等生”遙名と周囲を困らせてばかりの“落ちこぼれ”ハル。「しるし」を見つけたふたりの希望の物語。
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記事更新を5日間も滞らせていたことからもご想像の通り、先週から今週にかけて、僕の仕事は多忙を極めた。サムチに行ったりティンプーに行ったり、土日も何かしらの仕事をしていた。アテンドする相手もいらしたので、息抜きの時間があまりなかった。毎日ヘトヘトになって部屋に帰り着いていつの間にか寝落ち。深夜に覚醒して、慌てて消灯する日々が続いた。今、ようやく1人になり、少しだけひと息つける状態になったので、久しぶりにブログの更新をしようと思い立ったところである。

この間、1冊だけ本を読んだ。「読書メーター」の読友の1人が紹介していた作品で、ちょっと気になって著者の経歴を調べてみると、なんと僕の大学の後輩だった。学部が違うので「後輩」というのは言い過ぎだし、著者の学科は僕のいた学科とキャンパスが違うが、1年だけ学年が重なっており、僕は当時新入生向けオリエンテーションのボランティアもやっていたため、すれ違うぐらいのことはあったかもしれない。余談だが、学科は違うが、著者は早見優さんと同学年である。

そんな親近感もあって、初めて宮下奈都さんの作品を手に取ったわけだ。

でも、読者が著者と同世代で、同じような空間を共有していたからと言って、書かれた作品が読者にフィットするかどうかは別の話だ。重松清や奥田英朗、吉田修一の作品などは、僕には合っていると感じるし、女性の作家でも、伊吹有喜や中島京子、恩田陸あたりの作品を読んで、少なくとも自分に合ってないと感じたことは一度もない。

こんな書き始めからもご想像の通り、正直言うと本作品に関しては、読んでいて戸惑うことが多かった。この作品に出てくる主人公は2人いて、同様な生きづらさを抱えている人はきっと世の中大勢いると思う。そして、そういう人々の内面を各々の主人公の立場から掘り下げて描かれているため、共感する読者もきっと多いに違いない。僕自身も、一人一人をよく理解することの必要性に改めて気付かされた作品だと感謝しているところもある。

おそらくこういう作品が合う読者はかなりいる筈で、僕が「自分に合わない」と書いたからといって、「読まない」という判断は安易にしない方がいいと思う。

それに、僕が感じていた違和感は主人公2人の内面の掘り下げ方ではなく、2人の出逢い方の唐突さとか、舞台設定にもある。なぜハルの唯一の理解者だったかもしれないお母さんを先に逝かせたかとか、ハルが遙名の存在に気付いてから3.11までのややもするとストーカー的とも思える見守り方の描写をなぜすべて端折っていきなり3.11だったのかとか、そもそも「ふたつ」ある筈の「しるし」に、読みながら僕は1つしか気付かなかったのだが、もう1つは何だったのだろうかとか―――。疑問もあったので読み返して確認したいこともあるが、そこまでの気力もすぐには起きない。

いずれにしても、僕らよりも20歳近く若く、僕らが年齢を重ねていくにつれて、同じ時間分だけ成長していった登場人物たちである。間もなく還暦にリーチを迎えるオジサンが、今のポイントから20年以上時間を遡り、ただでも20歳ぐらいは自分より若い登場人物の成長過程を追う作品を理解できるかといったら、それは難易度が高いです。

ということで、僕自身の評価は今回は辛口。再読はいずれはしたいが、今ではない。ただ、この作品が合わないからといって、この作家が合わないかどうかを判断するのは時期尚早かもと思うので、いずれはまた別の宮下作品も読んでみようかなとは思っている。

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