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そのミシンはどうするの? [ブータン]

縫製研修で織物コミュニティをエンパワーメントーペマガツェル
Empowering weaving communities through tailoring training- Pema Gatshel
Thinley Dorji記者(ペマガツェル)、BBS、2022年4月28日(木)
http://www.bbs.bt/news/?p=168586
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【抄訳】
ブータン東部は伝統手織物でよく知られている。この国の織り手の輩出元とも見られている。そんな伝統を守り、東部の織り手のコミュニティを金銭的にエンパワーするため、ペマガツェル県チョンシン及びユルン郡(ゲオッグ)の若手20人が仕立ての研修を受けた。

この3カ月間にもあたる研修は、チョンシン・ゲオッグのトンサ村で今日から始まった。これは労働省の実施する「村落技能開発プログラム」の一環で行われたもの。

参加者の1人、トンサ村のプンツォ・ワンモさん(19歳)は、学校を辞め、綿織物で生計を維持してきた。しかし、仕立ての技能がないため、テゴやキラといった既製品を作るための縫製段階で困難に直面している。「最近はほとんどの人が既製のテゴや伝統衣類を求めておられます。仕立ての研修を受けて、もっと収入を増やしたいです。」

玄奘、綿織物は一反5,000~7,000ニュルタム程度である。プンツォさんの計算だと、もし最終製品にまで加工度を上げることができたら、取引価格は倍になると盛られている。

彼女と同様、他の研修参加者も、自分たちの綿織物の売上げを増やせると研修に期待をよせている。「お客さんは既成衣類を求めているので、織物のまま売ったら、あまり実入りは多くありません。収入を増やしたいので縫製の技能をもっと学べたらと思います」——そう述べるのは、ユルン・ゲオッグから参加しているペマ・ザンモさん。

参加者は民族衣装であるゴやキラ、テゴ、伝統的な帯等の縫製技能を得る。労働省関係者によると、こうした研修は、単に技能の習得だけではなく、織り手に起業家になってもらおうと意図して行われているとのこと。.

僕のブログではおなじみ、BBSのペマガツェル県担当、ティンレー・ドルジ通信員のレポートである。そして、舞台もいつかのトンサ村である。

トンサ村には実際に訪問したことがあるから言うが、たぶんこの研修の会場は、チョンシン・ゲオッグのゲオッグセンターではないかと思われる。

BBSのニュースの尺の問題なのか、ティンレー通信員の記事は報道素材としての目の付けどころは僕好みなのだが、突っ込みが甘いと感じるところもある。例えばこの記事を読んで、僕は次の2点も知りたかった。

1つめは、この研修は主催は労働省だとのことだが、トンサ村の綿織物クラスターの振興を進めていたのはAPIC(伝統工芸品振興庁)の筈で、労働省はAPICと連携しているのかどうか。というか、なぜ今までAPICはこの地域の綿織物の付加価値をさらに上げるような取組みを今まで導入してこなかったのか。その部分に、この労働省の研修の有効性を解くカギがあるような気がする。

2つめは、写真を見る限りでは、大量のミシンが研修目的で持ち込まれたようだが、これってその後どうされるのだろうかという点。この点については、僕に定見があるわけではないが、研修受講者の多くは自宅にミシンがあるわけではないだろうから、たとえ2カ月研修をやったとしても、研修が終わったら自宅での復習ができない。この大量のミシンをリースする仕組みか、ないしはミシンの購入資金を融資する仕組み、ないしはゲオッグセンターあたりにミシンを数台設置して住民がアクセスできるような仕組みなどの提案がないと、研修をやりましたからハイあとはどうぞ実践して下さいというのでは技能は定着しないと思う。

ペマガツェル県内でも、トンサ村はかなりアクセスしづらい場所だから、ミシンを入れてもメンテナンスや修理のサービスが各世帯にちゃんと届けられる保証はないだろう。

APICはそれでも綿花の種取り機や繰糸機をゲオッグセンターに設置して住民が共同利用できるような仕組みを作っていた。ミシンもそういうのに乗せられると本当はいいのだが。

それでもちょっと可能性を感じるのは、こうしたメンテナンス修理が必要になるかもしれない機械がペマガツェルにあるということで、これを機械工学科を有するジグミナムゲル工科大学(JNEC)と最初からつなげられれば、これらの機械が故障で使えない期間の短縮にはつながるかもしれないからだ。

最近、今年ブータンで立ち上がるファブラボが軌道に乗ったら、ブータン政府は次のステップとして、東部にもファブラボを作りたいとの計画があるらしいと耳にした。モンガル(ゲルポシンIT大学)、タシガン(シェラブツェ大学)、サムドゥップジョンカル(JNEC)だという。どこもそうだと思うが、学内ユーザーの取り込みは勿論のこと、そこそこファブラボの有用性を高めたければ、周辺コミュニティに出て行って御用聞き的な活動も相当やらないといけない(しかも、受益者が最初からソリューションの共創プロセスに関与していることが前提となる)。

JNECはすでにアナログ工作機械が相当数あるので、ファブラボがなくても今からでもミシンのメンテナンス修理はやろうと思えばできる。労働省が、単発の研修を実施するだけでなく、そういう仕組みも考えて今からJNECに声をかけたりしていれば、こんな研修も面白い展開になるかもしれない。そんな可能性も少し感じる報道ではあった。(ティンレー通信員、もっと掘り下げて取材して下さいね。)

【お詫びと訂正(2022年5月6日)】
別の記事を書くためにリサーチをしていて、そもそもこの研修はチョンシン・ゲオッグセンターではなく、ナンラムタウンのどこかで行われていたことを知りました。どうりで…。しかも、この研修は、ナンラムタウンの住民向けというのがメインで、チョンシンやユルンからも参加者があるというような書きぶり。労働大臣も参加され、かなりの力の入れようだった模様。こりゃあAPICとは別のロジックで行われた感じですね。お詫びして訂正させていただきます。


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