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電気柵のその先は [ブータン]

AMC、野生動物自動撃退装置を試作
AMC comes out with automatic repellent to prevent animals from attacking crops
Namgay Wangchuk記者(パロ)、BBS、2022年3月30日(水)
http://www.bbs.bt/news/?p=167277
AMC.jpg
【要約】
獣害はこの国のニュースとして頻繁にヘッドラインを飾る。農家は、ブリキ缶を叩いたり、叫んだり、農地をパトロールしたりして、眠れぬ夜を過ごしながら、農地を守ろうと試みてきた。しかし、かなりの作物を野生動物に食べられる。しかし、パロの農業機械センター(AMC)が自動動物撃退装置を開発したことで、変化が訪れるかもしれない。

かかしの口には動きを察知するセンサーが装備され、何らかの動きを察知すると、かかしは直ちに照明を点灯させ、さらに大きな音がかき鳴らされる。農地所有者はすぐにアプリで侵入者についての連絡を受け取ることができる。試作システムでは、食料連鎖の頂点に立つトラやクマの鳴き声によって害獣を怖がらせるようプログラムされている。

AMC-side-1.jpg

このモデルは費用効率も良く、マイコンボードとセンサーチップは購入が必要だがプログラムは国内で行うことができる。かかる費用は2,000ニュルタム未満。インドのような近隣国から完成品を輸入していたら、5万~6万ニュルタムはかかるところ。こう語るのはAMCの研究部門長であるウゲン・プンツォ氏。

政府だけではスケールアップは難しい。そこでAMCではDeSuupやFMCLを巻き込んだ。FMCL職員や若者に訓練を施すことで、長期的にはこうしたテクノロジーを採用し、これを拡大して農家にも届くようになる。こう述べるのはAMCのキンガ・ノルブ所長。

AMCでは今後も野生動物が忌避するための試作を繰り返していくという。電気柵は最初は効率的だが、野生動物も学習し、電気柵に適応してしまうだろうと危惧する。AMCは近々フィールドでのテストを開始する予定。

日本の経験からすれば、野生動物の被害に対して電気柵を使用すると、動物がそれに適応するため、さらなる対策を人間側も考えないといけないというエスカレーションが起きる。ブータンでも、獣害対策で電気柵は有効だとさんざん報じられているが、その有効性もいつまで続くのか、少なからず疑問だった。そんなところに、この面白いかかしの画像が報じられた。お~と思ったので今回は取り上げる。

パロにもファブラボが年内にはできる予定があるが、場所はAMCのあるボンデからさらに奥にある王立アカデミーの構内である。ファブラボ設置予定の建物は一度見学させてもらったことがあるが、その部屋は今までに僕が見たファブラボのどれと比べてもはるかに広大だった。ただ、王立アカデミーは立入り規制が厳重なので、地域住民が気軽にアクセスできる施設ではない。

本来なら、3D CADが教えられるインストラクターもいて、しかもアナログ工作機器がそこそこ揃っているAMCか、隣りのFMCLにデジタル工作機器も置いて「ファブラボ」を名乗らせたら、ものづくりに関しては相当強力な拠点になっていたに違いない。農業農村開発でのデジタルファブリケーション技術の適用は、ここがリードしていったらいいのにと、僕は今でも思っている。国立アカデミーのファブラボはスポンサーがDHIなのだが、なんで自社の子会社であるFMCLの構内に目を付けなかったのかは謎だ。いろいろな思惑が働いたのか、あるいは見落としたのだろう。

だから、AMCが獣害対策のソリューションを提案しているとの報道は、興味を持って見させてもらった。

報道のされ方を見る限り、既成のマイコンボードを使っていると思われるが、何使ったんですかね。2,000ニュルタム(≒3,300円)程度で作れるということは、Arduino UNOの小売価格とほぼ同額だが。でも、これに人感センサーや照明、大音響スピーカーまで付けたら、とても2,000ニュルタムでは無理だ。

また、写真を見る限り、サーチライトの電源は少なくとも電源コードで取っているのがわかる。コンセントが近くにあるのならいいけれど、田畑が家屋から離れていたら接続が難しいだろう。太陽光など独立電源が必要で、しかも、充電は昼間だが使用は夜間となるため、充電装置が必要となる。

【補足】この件、Facebookでつぶやいたところ、AMCのキンガ・ノルブ所長から、こんな回答があった。
”colleagues are using both ESP8266, Node MCU ESP8266 microcontroller and boards and also Arduino UNO and programme is C++ through Arduino IDE. Open source. It's operated on 3.3 V to 5 to 9V DC and of course relay with 10 amp 220 V AC. For the repellent..Auduino GSM is also used to receive the message... It's available online and cheap. Durability, I have no answer. More details you can get to my engineer colleagues. We activated animal repellent and a few smart irrigation activities through above boards."


マイコンボードの仕様、電源確保の問題に加えて、もう1つ疑問なのは、これ、普及させるなら少なくとも既成のマイコンボードやセンサーを大量調達できないといけないが、そんなことができるサプライヤーは現地にいるのかということだ。この点は僕らも悩まされていて、現地のサプライヤーはそういう伝手を持っておらず、取扱い実績がほとんどない。たいてい、インドの知人に頼んでAmazon Indiaで調達するか、中国のAli Expressでの調達となるが、クレジットカード払いなので、発注に際して全額前払いが求められる。

在庫投資をしてまでそういう引合いに応じようとする現地サプライヤーは、残念ながらまだいない。そういうのが育って来ないと、記事にあるような動きを下支えしていくことにはならないだろう。

先日ご紹介したチュメ職業訓練校での3Dプリント2カ月研修もそう。材料となるフィラメントや、ヒートノズルの目詰まり対策用キット、スペアパーツなど、ほとんどが輸入だ。研修を2ヵ月やるだけだったらいいが、その先修了生が何かやろうと考えた時、原材料やパーツの入手経路は必ず問題となる。そうした様々な動きが連携もせずにバラバラに対応していたら、まとまった需要がこの国にもあるという見せ方にはなかなかなっていかない。

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