『世界幸福度報告2022年版』 [持続可能な開発]
戦争とパンデミックの中、世界幸福度報告は明るい点を示す
Amid War and Disease, World Happiness Report Shows Bright Spot
2022年3月19日(土)
持続可能な開発に向けたソリューションネットワーク(SDSN)メルマガより
戦争とパンデミックという問題に直面するこの時期に発表された『世界幸福度報告2022(WHR)』は、暗い時代でも明るい光があることを示す。パンデミックは、痛みや苦しみだけでなく、社会的支援や慈善的行為の増加ももたらした。私たちが疾病や戦争の災禍と闘うとき、幸福への普遍的な欲求と、非常に必要なときにお互いの支援に結集する個人の能力を覚えておくことは特に重要だ。
今年はWHRの10周年を迎えた。この報告書は、世界的調査データを使用して、世界150か国以上で人々が自分の生活をどのように評価しているかを報告するものである。もちろん、幸福への関心は世界的なものである。WHRは2021年に900万人以上に届いた。WHRは、最初に発表されて以来、2つの重要な思想に基づく。1つは、幸福または人生の評価はオピニオン調査で測定できるということ。そしてもう1つは、ウェルビーイングの主要な決定要因は特定可能であり、それにより国家間の生活評価のパターンは説明可能だということだる。こうした情報は、次に、各国がより幸せな社会を実現することを目的とした政策策定に役立つ。
ジェフリー・サックス教授は、WHRの起源と目的を以下の通り説明する。「10年前、世界中の政府は、世界の開発アジェンダの中心に幸福を置きたいという願望を表明し、その目的のために国連総会決議を採択した。WHRは、より大きな世界の幸福への道を見つけるという世界的な決意から生まれたもの。今、パンデミックと戦争の時代に、私たちはこれまで以上にそのような努力を必要としている。そして、長年にわたるWHRの教訓は、社会的支援、お互いへの寛大さ、そして政府の誠実さが幸福のために重要だということである。世界の指導者はWHRに注意を払うべき。政治の注目は、偉大な賢人がずっと前に主張したように、支配者の力ではなく、人々の幸福に向けられるべきだ。」
WHRが10年前に発表されて以来、幸福と生活満足度を測定することへの関心が高まっている。これは、2005/06年度以降のギャラップ世界世論調査で入手可能なデータによりかなりの程度まで可能になっている。WHRは毎年、過去3年間の調査のデータをまとめて、サンプルサイズを増やし、精度を高めている。
150か国以上をカバーする15年間のデータが利用可能であることにより、これまでにない棚卸しの機会を我々は得ている。 幸福度が最も改善したのはセルビア、ブルガリア、ルーマニアの3ヵ国、幸福度を大きく落としたのは、レバノン、ベネズエラ、およびアフガニスタンの3カ国であった。
「WHRで検討されたデータは、世界中の人々が自分の幸福をどのように評価しているかのスナップショットと、ウェルビーイングに関する科学的見地からの最新の洞察のいくつかを提供してくれる」とララ・アクニンは述べる。 「この情報は、人間の状態を理解し、人々、コミュニティ、国がより幸せな生活を送るためにどのように役立つかを理解するために非常に強力です。」
3月20日(日)は、国連が定めた「世界幸福デー(International Day of Happiness)」である。この記事を書いているのはまさにその当日だが、日曜日であるため、ブータンの主要メディアはまだこれを報じていない。たぶん、21日あたりのクエンセルでは何らかの記事が掲載されるだろう。幸いなことに、昨夜(19日)に首相官邸から追加緩和策のアナウンスがあり、明日からティンプーは同じメガゾーン内であれば移動して事業所に行っていいことになった。レストランも再開される。そういう意味では、市民は外を歩ける幸せをかみしめる日になるであろう。僕も約1カ月ぶりに出勤できそうだし、これから年度末に向けて、片付けねばならないことが結構多い。そのために、本日は予約投稿をさせてもらっている。
この世界幸福デーは、2012年6月の国連総会決議に基づいて定められたもので、しかもこの総会決議ではブータンは主導的な役割を果たしたと言われている。それなのにこのWHRの世界幸福度ランキングにはブータンは含まれていない。ギャロップ社が既定のタイムラインで必要なデータを集められなかったというテクニカルな事情らしいが、この評価は3年間の移動平均で行われるため、2021年のデータ欠損の影響は今後2~3年続く恐れもある。間に合わなかっただけだというのなら、2023年のWHRには反映されるのかもしれないが、それで今年度のランキングの補正までやってくれるのだろうか。
ちなみに、WHRでのブータンのランキングは直近では97位だった。「幸福の国」と言われるけれど、この評価手法で計測すると、ブータンには不利であることは間違いない。データ欠損でランキングから落ちていると、読者が「ブータンが何で載ってないんだ」と言い出すだろうから、「Honorable Mention(特別賞)」みたいなもので報告書内での言及はあったらしい。
昨日ご紹介したUNDPの報告書もそうだが、WHRも内容を熟読してブログで要約を載せるのは僕の現在の仕事の肩幅を超える行為なのでとてもできない。ましてやブータンが評価対象から漏れていることもあって、幸福度に関心のある研究者ならともかく、ブータンに関心がある研究者がこのWHRにどれほど関心を持っているのかはわからない。
ということで、公表されたということぐらいしか言うことがないのだけれど、WHRのHPのヘッドラインだけを拾うと、10周年ということで、10年前との比較で幸福度ランキングが改善した上位3カ国が、上記囲みにあるセルビア、ブルガリア、ルーマニアらしい。単に改善した事実だけ示すのではなく、何が良かったのか、どんな政策介入が行われたのか、もうちょっと知りたいところではあるが。
それと、地域別に見た時の南アジアは、ブータンは含まれていないけれども、元々低いポジティブ思考要素が2020年から21年にかけて顕著に悪化し、ネガティブ思考要素が顕著に高まっている。アフガニスタンに影響を受けているのかもしれないし、南アジアでは比較的高かったブータンのデータが抜けてしまったのが、平均値の悪化につながったとも言えるのかもしれない。
で、報告書がポジ要素として挙げている「社会的支援や慈善的行為の増加」というのは、具体的には、寄付(donations)、奉仕活動(volunteering)、見知らぬ人への救いの手(helping strangers)の実行というのが、2020年から2021年にかけて増えたというのを指すらしい。
一方で、日本のランキング(54位)は結構低い。上位が北欧諸国であるのも含め、毎度のことである。僕らの業界には「開発貢献度指数(Commitment to Development Index)」というのがあって、OECD/DACメンバー国の政策の一貫性を評価する指標となっているが、これも2003年の発表以来、上位は北欧諸国で、日本は韓国と最下位争いをずっと続けている。簡単にはランキングが変動しないので、やるだけ無駄と日本政府もマスコミも考えているのか、日本ではあまり取り沙汰されない指標に成り下がっている。これと同じことが、世界幸福度ランキングにも言えているように思えてしまう。
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