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ロックダウン中でもできること3 [ブータン]

僕の知人で、以前大洋州で青年海外協力隊をやっておられたIさんは、岐阜に拠点を置き、国際協力の発信と相互学習の場を主宰されている。すでに23年間にもなる。県庁近くのNPOの会議室だったり、JR岐阜駅近くの会議室だったり、長年対面で実施されてきた。

僕は生活の拠点が東京にあったので、会場が岐阜だとよほどのことがない限り月例の勉強会に顔を出すことは難しい。こちらから売り込んで勉強会での発表をやらせてもらったことが3回ぐらいあったが、単なる出席というだけでわざわざ岐阜まで行くことはできない。

新型コロナウィルス感染拡大がはじまった2020年3月この定例会が開けなくなった直後、僕の方からIさんに「オンライン化」を提案した。ちょうどZoomの有料アカウントを取得したところだったので、僕の方でホストをやってもいいとお伝えした。お陰で遠隔地からであっても僕は毎回出席できるようになり、岐阜におられる方々とのつながりを維持することができるようになった。また、これが良いことなのか良くないことなのかはわからないが、発表者の方も岐阜に来られる必要がないため、遠隔地から発表していただけるケースが増えた。

一時存続が危ぶまれた勉強会も、オンライン化によって、月一回のペースがその後2年間維持されている。

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これとはまったく別の文脈になるが、これまで駐在した南アジアのどこの国でも、JICAから派遣されている技術協力専門家の間では「専門家会」というのがあり、月一回ぐらい集まって、案件別の縦割りで行われているODAの事業に、横の交流で情報共有の機会を設ける試みが行われてきた。特に盛んだったのは1990年代半ばのネパールで、毎回ではなかったが、時にホテルを会場にして、離任される専門家の活動報告会が行われ、その後立食パーティーがくっ付いていた。これにはJICAの事務所員も行けたし、大使館の方も来られた。この当時のネパール専門家会は、ニューズレターまで出していた。

翻ってブータンでは、「専門家会」という食事会は昔からあったらしい。昔のJICAの事業は、ザクッと言えば「技術協力専門家」と「青年海外協力隊」という2つの枠しかなく、あとは短期で来られる開発調査のコンサルタントがいらっしゃるだけだった。JICAは、その後、この「技術協力」の枠を、これまでの「直営専門家」と新たに設けた「業務実施コンサルタント」という2つのカテゴリーに分けた。後者の方も技術協力専門家ではあるが、コンサルティング企業にまとめて業務実施を発注するので、企業側も多くの場合人員の短期派遣が中心となり、ここで専門家間の交流に1つの谷間ができてしまった。ブータンでは、「直営専門家」の数はその分少なくなったので、「専門家会」は不定期の食事会として細々と維持されるに過ぎなくなった。

もう1つ、「青年海外協力隊」の方は、文字通りの「青年」の方に加え、「シニアボランティア」という比較的新しいカテゴリーが付加され、ブータンの場合は一時期そのシニアのウェートが相当高まり、「専門家会」に近い集まりは、「青年」は「青年」で、「シニア」は「シニア」で、といった形で、派遣スキームによる縦割りが起きてきた。

コロナ禍で、協力隊員は全員が一時退避を余儀なくされ、業務実施コンサルタントも来れなくなった。これまでに形成されてきたスキーム別の縦割り内での横の交流は、この時点でいったんリセットされた。継続中だった技術協力プロジェクトの直営専門家だけは退避を免れて最後まで派遣期間を全うして帰国された。僕を含め、JICAが協力隊員や専門家の派遣再開を決めた直後の2021年4月以降に派遣されてきた人間にとっては、横の交流、相互学習のプラットフォームは存在しない状態だった。

そうした経緯を踏まえて、昨年6月から、僕たちは先ず「専門家会」を再開。これに「協力隊員」にも加わってもらい、月一回ペースの食事会を開いてきた。新しく来られた協力隊員がいらっしゃれば、歓迎会も開いた。離任される隊員の方には、送別会も行ってきた。

こうして徐々に作りはじめた横のネットワークをベースに、年明けからはフォーマルに情報共有できる勉強会でも付加できないかなと考え、どうやれるか思案を巡らせていた矢先、首都がロックダウン入りした。

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経緯の説明が長くなりましたが、ここからが本論―――。

ロックダウンがこれだけ長引く中で、僕が考えたのは、自分が持っているZoomの有料アカウントをもっと活用することでした。それが先週からはじめた小中高生向けTinkercadオンライン研修であり、さらにこれをFacebookライブで発信することでした。自分が講師を依頼された大学生向けオンライン講義も、録画して後で編集し、今後使い回せるコンテンツとしてアーカイブに残す作業もしています。

そして、上記の「専門家会」も、月一回の食事会はロックダウン解除後再開するとして、鯱張った勉強会は、岐阜でIさんが主宰されている勉強会に倣って、定例としてオンラインでやったらどうかと考えました。その試みが、「ブータン開発協力オンライン月例懇話会」です。

お互いがお互いのやっていることを知ること、さらにJICAが業務実施コンサルタントを使ったりして、専門家や協力隊員とは異なるスキームを使ってやっている調査や事業について聞かせてもらうことで、一人一人の参加者がより情報武装できるでしょう。例えば、このところ僕がブログ上で頻繁に言及している「ブータン全国総合開発計画2030策定プロジェクト」も、業務実施コンサルタントが支援して策定された計画が向こう2030年までの政府のグランドデザインになるというのであれば、我々関係者の誰もが内容を知っていた方がいいと考えられます。

下記の書籍に収録された拙稿において、僕は、ブータンではJICAの事務所が所員だけで地方のニーズ発掘や案件監理に費やす努力には限界もあるので、地方配属の協力隊員や専門家、帰国研修員等も「開発協力コーディネーター」として活用を図るべきだと主張しました。今回の取組みは、その第一歩ということです。

日本の国際協力 アジア編:経済成長から「持続可能な社会」の実現へ (Minerva KEYWORDS6)

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  • 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
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  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

過去の経緯を知るためには、過去に派遣されていた専門家や協力隊員、事務所員、その他関係者の方々のお話を聴く機会も作りたいし、これからブータンでの開発協力に関わられるという方にも、どんなプレイヤーが現在活動中かを知ってもらえるような場にしたいと思います。自薦他薦は問いません。僕には岐阜のIさんのように、自分で発表者を特定して出演交渉までするようなキュレーションはとてもできないので、いろいろな方からの提案を受けて毎月の発表者を決めていきたいのです。

また、毎回の発表部分は録画して、編集後ビデオアーカイブとして保存しておくようにしたい。

ブータン人は、「ブータンは連携が下手」だと批判します。そう思っているなら自分から連携を仕掛ければいいのにと思いますが、他人が連携を仕掛けてくるまで待っているケースの方が圧倒的に多いです。そもそも、他の組織が何をやっているのかを知らないケースも多いです。例えば、同じ教育省なのに、障害児向け特別教育を担当している部署が、青年スポーツ局所管のユースセンターにすでに3Dプリンターが配備されているのを知らず、僕たちに援助を求めてくるとか…。そういうのを、中に配属されているJICA関係者で、少しでも変えていけないか、連携促進のためのカタリストになれないかという試みです。

最後に、これを読まれると、日本ブータン研究所が主催されていてすでに150回もの開催実績がある「ブータン勉強会」と何が違うのかという疑問を持たれた方もいらっしゃると思います。確かに、このブータン勉強会に登壇された専門家や協力隊員の方がいらっしゃるというのは承知していますし、過去にこのブータン勉強会が当地で開かれていた時には、JICAの関係者も大勢参加されていたと聞いています。どこかで接点が作れて、共同企画ができたらいいと思っています。でも、現時点での当方の目的は、今活動されている一人一人の関係者の交流と学習プロセスの促進、うまくいけば開発協力の効果向上というところにフォーカスしています。

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ロックダウンのお陰で、専門家会の勉強会部分を懇親会部分とは切り離してオンラインに移行させる決心がつきました。そして、オンライン化したおかげで、首尾よく今後プンツォリンに引越しした後も、自分がつながっていられる途が開けました。時々ネット接続が不安定になる不安もありますが、ゆるく続けていけたらと思います。

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