『ふしぎの国のバード』 [読書日記]
内容紹介【購入(キンドル)】
1878年6月。横浜からはじまった英国人冒険家イザベラ・バードの旅は日光から新潟を通り、秋田を抜けて、ついに本州最北の地・青森へ。梅雨の東北地方でバードを待っていたのは、降り続く雨と、荒れ狂う川。そして、その過酷な自然の中であっても、工夫を凝らして生きる日本人のたくましさだった。東北編最終章の第9巻!
ブログではちゃんと紹介していなかったのだが、このコミックは第1巻からずっと愛読していて、第7巻までは中古も含めて全巻自宅で蔵書として持っている。その後の第8巻と、今月出たばかりの第9巻は、発刊時期が自分の今回の海外赴任とかぶってしまったので、キンドルで電子書籍版をダウンロードして読んでいる。
当時のバードは47歳、伊藤は17、8歳なのだが、この作品のバードは年上といっても30歳ぐらいにしか見えないし、伊藤は20代前半ぐらいに見える。もっと言うと、イザベラ・バードは、残っている肖像画を見たら結構怖そうな女性である。
それでもフィクションだと割り切って読めばそれなりに楽しめる作品で、それなりにバードの『日本奥地紀行』のエピソードを生かしているといえる。第9巻は、碇ヶ関~黒石~青森~函館という行程だが、それはそれは困難の連続だった。また、戊辰戦争からまだ10年しか経過していないのに、函館は英国の対露戦略の重要拠点になっていたようだし、当時の欧州の学者の間で、アイヌ研究が焦点になっていたという話とか、バードの旅の背景を垣間見るエピソードがとりわけ多かった気がする。

Unbeaten Tracks in Japan: Large Print
- 作者: Bird, Isabella
- 出版社/メーカー: Independently published
- 発売日: 2019/10/05
- メディア: ペーパーバック
でも、なんとなくこのバードの東北・北海道紀行の内容を忘れてきている気がしたので、実は先週末、もう1冊イザベラ・バードものを読み返してみることにした。中島京子『イトウの恋』である。週末読書としては最適だ。
内容(「BOOK」データベースより)【購入(キンドル)】
維新後間もない日本の奥地を旅する英国女性を通訳として導いた青年イトウは、諍いを繰り返しながらも親子ほど年上の彼女に惹かれていく―。イトウの手記を発見し、文学的背景もかけ離れた二人の恋の行末を見届けたい新米教師の久保耕平と、イトウの孫の娘にあたる劇画原作者の田中シゲルの思いは…。
なんと11年ぶりの再読である(⇒前回はこちら)。で、記憶というのは実にいい加減なもので、バードと伊藤の二人旅のエピソードがもっとふんだんに出てきていたと記憶していたら、それは結構前半でアイヌ生活地域までの旅を終えてしまい、戻ってきた函館で伊藤は解雇を言い渡されてしまう。『ふしぎの国のバード』も、第10巻で出てくる北海道編がどう描かれるのかはわからないが、少なくと函館到達時点までの伊藤の描き方は、『イトウの恋』における伊藤本人の手記にある心境の変化に、かなり忠実であることがわかった。(そうなると第10巻は結構な波乱が予想されるな…)
こちらの作品は、バード40代前半、伊藤20歳で描いている。コミックと比べれば年の差は実際に近いが、初読の当時に考えていた「あり得ない」という感想と比べると、今はちょっと違う。YouTubeを見ると、なぜか「逆年の差カップル」のチャンネルが結構多くて、20歳以上離れているケースも堂々と登場されている。そういうのを知ってしまうと、「ひょっとしたらあり得たのかも…」という思いには確かに変わった。
バードと伊藤の二人旅の行程の復習が目的だったので、その点については本作品の再読で達成はされた。しかし、2004年という現代の話の部分は、複線の回収が行われていない箇所が少しあって、なんだか尻切れトンボで終わってしまった感がある。
ただ、高校教師である郷土部顧問の久保耕平ではなく、部員の赤堀クンの視点でストーリーを見直してみると、歴史ってやっぱり面白いと思えるのではないだろうか。初読の際の感想ではあまり書かなかったことだが、歴史が好きになるのは、こういう過去の出来事が現代の僕たちの生活にどのように影響を及ぼしているかとか、、今僕らの目の前にある課題について、過去から学べる教訓を知ることだと思う。中島京子の作品にはそういうのが多いような気がしているのは僕だけだろうか。いろいろな意味で、『イトウの恋』は薦める。
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