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ペマガツェルの赤糖生産 [ブータン]

ペマガツェルの天然赤糖作り
Making natural jaggery in Pema Gatshel
Thinley Dorji記者、BBS、2022年2月19日(土)、
http://www.bbs.bt/news/?p=165999
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【抄訳】
ペマガツェル県ナノン・ゲオッグ(郡)の赤糖「ツァシ・グラム(Tshatshi Guram)」はかなりの人気産品だ。ナノンやツァシの人々にとって、赤糖は唯一の収入源となっている。伝統的な手作業で何十年も赤糖を作ってきた。赤糖は、サトウキビの樹液を固形化するまで煮込んで出来上がる。

農民は畑からサトウキビを収穫し、仮設の加工場に搬入する。サトウキビはそこで圧搾され、樹液が抽出される。圧搾には機械が用いられる。伝統的な方法よりも簡単だからだ。

「サトウキビ栽培は、私が16か17の時に始めました。いくらかの収入を得るのに役立ちました。それに、赤糖を親戚などに持って行ける贈答品として、手元に置いておくこともできます。そうして、この文化を今も意地してきているのです」――シンリ村の住民であるチェテンさんはこう述べる。

「私は父が赤糖加工をしているのを見ていました。そうして加工方法を学びました。それ以降、振り返ったことはありません。若い人にも教えたいと思います」――クルン村の住民であるノルブ・ワンディさんはこう述べる。

抽出された樹液はゼリー缶に注がれ、加工所から家に持ち帰る。樹液は大きな平鍋に入れ、加熱しながら継続的に攪拌が行われる。加熱の温度は火加減で調節される。このプロセスは7時間近くにも及ぶ。赤糖生産はかなりのスキルを必要とする、きれいに整理されたプロセスである。

「私たちはこのプロセスを正しく理解していなければなりません。液体をかき混ぜ続ける必要があり、粒粒だらけにしたり、焦がしたりしてはなりません。限界以上に煮込みすぎると、赤糖とはまったく別のものになります。黄色に変わるときがちょうどいいのです。不純物やホコリを取り除くために、かき混ぜ続けねばなりません」とノルブ・ワンディさん。

液体を望ましい型に落とし込む前に、円錐状の穴がくり抜かれた木製の板にトウモロコシの粉をまぶす。このトウモロコシ粉は、樹液が板にくっつかないようにする。準備ができたら、樹液を型に流し込む。7時間も煮込むような手の込んだ作業を経て、赤糖ブロックの受け皿が出来上がる。

「電気オーブンがあるというのを聞きましたが、私たちはまだ受け取っていません。オーブンがじきに供与されると聞かされたのですが。もしそれがあれば、いつも悩まされる煙のことは忘れられます。薪の使用を削減してくれる効果も期待できます」とチェテンさんも述べる。

「山で木を伐ることはとても難しく、利用できる木も多くありません。赤糖の煮沸には、薪が最低3~4本は必要です。電気オーブンがあれば、状況が大きく変わるでしょう」とノルブ・ワンディさん。

「ツァシ・グラムは、うちのゲオッグでしか生産されていません。なので、皆が興味を持っています。それをどう加工するか、今学んでいるところです。加工工程は骨の折れるものではありませんが、煙はきついです。長時間にわたって、燃える火のそばにいなければなりません」――トンシン・ガク村出身の若者であるタシ・トブゲイさんはこう述べる。

しかし、赤糖作りの手間暇かかる方法は、人々がそれを諦めるのを止めることができていない。ナノン・ゲオッグの2つのチオッグでは、約100世帯がサトウキビ生産と赤糖作りに従事する。

「私たちは何十年も赤糖で商売してきました。しかし、この生産過程が疲れる作業だと思う人が増えてきています。でも、赤糖は私たちにとっての唯一の収入源なのです。ここでは野菜栽培は行っておらず、赤糖だけが収入創出手段です。だから、できるだけの努力は払うのです」とノルブ・ワンディさん。

「サトウキビの葉と樹液抽出後の廃棄物は、家畜の餌にもなります。ほぼほぼまっとうな額の収入を得ていて、買ってくれるお客さんが全員一度に訪れるわけでもありません。一度に100ペアを買ってくれるお客さんもありますが、ほとんどの場合は10~15ペア程度です」とチェテンさん。

住民は年間2万から20万ニュルタムの収入を得ている。国際的な研究によると、赤糖はその健康上のメリットで知られている。体内を浄化し、消化を助ける機能があるという。

ブータン国営テレビ(BBS)のティンレー・ノルブ通信員、最近、ペマガツェルから地元産品について積極的に発信してくれていて好感が持てる。そのうちに同県でも生産されている納豆の生産も取り上げてくれないかなとも思う。

記事の中にあった記述について少し補足しておくと、「ペア」という言葉が使われているが、ナノンの赤糖(ジャゴリ)は常に2個1セットで売られている。しかも、谷あいの農村地域であるナノンの赤糖は、その上の山の尾根添いに通っている国道沿いのナルフン集落の屋台の店頭でしか見られない。透明のビニール袋に2個入っており、ラベルは紙片をホチキス止めして売られている。

もう1つは、なぜ円錐状なのか、なぜこの形状なのかという疑問だが、これは、以前ナノンを訪問した際にゲオッグ行政官(GAO)に訊いたところでは、木板にノミで穴を彫り込むので、この形にしかならないのだと説明を受けた。

この辺のエピソードは拙著でも紹介している。さらにその時に書いたが、この、特段の理由もなくそこに今ある技術要素を生かしてもこの形でしか作れないと言う赤糖ブロックが、もしシリコン製の型枠等でいろいろな形に加工できたら、そしてパッケージングをもう少し工夫できたら、うまくマーケティングすることによってもっと売れると当時は思った。

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ナノンの赤糖がティンプーで入手できるという話は、残念ながら僕の限られた知見の範囲内では耳にしたことがない。納豆のケースと同じく、ティンプーにより近いチランでも同じように赤糖が作られていて、そちらはペアではなく、デカい塊が1個で売られている。これもこれでもうちょっと小ぶりのブロックにしてくれたら、道中のおやつとしてほおばるにはいいと思うのだが。大市場により近い土地で競合産品があるのでは、ナノンの赤糖がティンプーに入って来るのは難しいかもしれない。

以前の綿織物の報道の時は、最初の報道の後にCOVID-19のせいで買い手が村に来てくれないから売れないという泣きの続報があったが、ナノンの赤糖はどうなのだろうか。ナルフン集落の露店が開いていれば店頭で販売できるだろうが、タシガン~サムドゥップジョンカル間の交通量が少なかったり、行動制限が残っていたりしたら、これも「ナノンの赤糖がCOVIDのせいで売れない」という続報があるのかもしれない。

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