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De-suupに感謝を捧げよう [ブータン]

ありがとうDe-suup
Thank you, de-suups
編集主幹、Kuensel、2022年2月15日(火)、
https://kuenselonline.com/thank-you-de-suups/
【抄訳】
「法的文書には明記されていないが、人として当然有する、歴史の中でも形成されてきた責任というものがある。私たち全員が、誰であろうと平等に担うべき当然の責任や義務である」――オレンジ色の制服をまとった私たちの隣人が見せるサービスに、国王様のお言葉はよく体現されている。

11年前、120人の若い卒業生とミッドキャリア専門職がDe-suupの第1期生としてワンデュポダンの軍事訓練センターでの訓練に加わった時、このプログラムは世間ではまだよく知られていなかった。当時は、災害対応の基礎訓練が行われた。

今日に至るまでに、48期合計26,257人のDe-suupが訓練を終え、任務に従事し、この国のボランティア意識や住民向けサービスを新たな高みにまで押し上げてきた。オレンジ色の制服を着たボランティアはどこにもいる。治安維持チームの支援から山火事消火作業、水不足で悩む農村の家屋に水を届ける作業、パンデミックの襲来から国境を守る作業、さらには道路建設作業に至るまで、自分が誰かに関わらず、さまざまな活動で国に奉仕してきた。大きな変化をもたらしてきた。

2015年のネパール大地震や、インド・ラージギルでジェ・ケンポが祈りを捧げられた際にも、De-suupは国境を越えて、奉仕活動を行なった。オーストラリアにいる訓練終了済のDe-suupも、必要あれば現地で終結する。

国王様の意向をもとにはじまったDe-Suungは、ボランティアイズムの精神を慫慂し、倫理のポジティブな影響や、地域奉仕活動、誠実さ、市民としての責任感醸成を促進する。オレンジ色をまとった男女は、いつもそれを体現している。

ボランティアイズムや協働、リーダーシップはDe-Suung訓練プログラムの主題である一方、奉仕に対するコミットメントは特別任務の中でこれらを具体的に示す機会となっている。奉仕には滅私や寛容、共感が求められ、これらが個人の生活や地域、そして国家に変化をもたらしている。

昨日は、De-Suungの11回目の創設記念日であった。皆が一度立ち止まって、社会に変革をもたらす活動に奉仕するDe-suupに感謝の意を捧げよう。彼らは私たちに何も負っていないのに、多くの奉仕を捧げてくれてきた。その価値には値段はつけられない。私たちは彼らの奉仕活動に対して返済することはできない。せめて感謝の気持ちを表そう。

De-suung創設記念日はDe-suupの社会への貢献を反映する日でもある。中にはもっと奉仕しようにも活動できないメンバーもいる。そういう人々に対しても、私たちの思いを届けよう。

2月14日は巷では聖バレンタインデーだったが、ブータンの王立ボランティア制度「De-Suung」の創設記念日でもあった。以前からオレンジ色の制服姿のボランティアは市中でもたまに見かけることはあったが、今回コロナ禍で赴任してきてみて、パロ空港到着直後の隔離生活から、De-suupにはお世話になりっ放しで、感謝しようと言われればそれは感謝しかない。

首都ロックダウンの期間中、感染者が確認されたビルの区画は赤いテープで立ち入り禁止区域とされたが、そこの監視を行っていたのもDe-suupであった。ストレスの溜まっていた市民による投石騒ぎもあったらしく、ボランティアだけでは手に負えなくなったのか、途中から王立警察(RBP)も動員されて監視に当たっていたらしいが。

また、僕の滞在しているクロックタワー周辺はとりわけ野犬の多い区域で、同一ゾーン内なら歩いていいということで、食料や必需品調達でホテルから外に出た途端、犬に取り囲まれるというリスクも多分にあった。実際、ホテルのオーナーのお嬢さんは犬に噛まれたし、インドから来ている長期滞在者も、野犬軍団と対峙したという。餌に飢えていたんだろうと思うが、De-suupの人たちは、朝や昼にクロックタワー前のノルジンラム大通りで餌を与えてくれていたので、昼過ぎの野犬は満腹で昼寝を開始し、僕はその時間帯を狙って外出を果たすこともあった。

ロックダウン中に2回実施された集団PCR検査も、医療チームとDe-suupの混成チームになっていた。

De-Suungという制度をちゃんと理解しているわけではないが、コロナ禍になって、明らかに王立ボランティアの存在感は増したと思う。ただ、De-suupの人たちと話してみると、ボランティアになって奉仕活動に従事する以前は、観光ガイドやホテル業界で働いていたという若い人が非常に多い。今や観光産業は壊滅的な打撃を受けており、De-Suungは一種の失業対策の意味合いも今はあるようだ。

そうすると、問題はコロナ禍が終わった後のことになる。政府もDSP(De-Suung Skilling Programme)というのを打ち出して、De-suupの奉仕期間中に、さまざまな技能研修を受けさせ、奉仕期間終了後の雇用確率(employability)を高めようと取り組んでおられる由。溶接やら製パンやら、造園やらデータサイエンスやらと、とにかく外国人インストラクターを個人的なつてを頼ってガンガン招聘し、それでDe-suupに技能研修を提供している。

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《ファブラボブータンで3Dプリントを習ったDe-suupもいる》

この記事は、その技能研修の有効性を問いたくて書いているものではなく、有効であることを前提に、彼らを今後の復興フェーズにどう活用していけばいいのか、1つの試案を提示したくて書いている。

もしコロナ前の経済活動の水準に2022年だけで復帰させようと思ったら、20%近い経済成長率が必要になるらしい。これって難易度が相当高くて、普通にやっていても二桁行くかどうかといったところだろうと見られている。

テコ入れするにはよほどドラスチックな手法が必要で、その1つとして、ハイエンド市場を狙った観光誘致を提案したい。ハイエンドというのは、グローバル企業で高額の所得を得ている経営者やエグゼクティブクラス、あるいは億万長者の企業オーナーといったところをイメージしてもらったらいい。こういう人たちは、長期間は滞在してくれない。彼らの時間は非常に高価値で、それを有効に使えるのであれば、それに高いお金を払うのはやぶさかではない。

そういう人々に、隔離期間免除の特恵措置を適用し、その滞在期間を有効に使ってもらえるよう、ハイエンド市場狙いの宿泊施設や観光サービスを国が運営し、そこに退役De-suupを活用するのである。中には、至れり尽くせりのサービスは必要なくて、山の中で瞑想にふけり、会社の長期戦略に思いを巡らすだけでいいという来訪者だっているかもしれない。日本人観光客がわずか4日の滞在で落とせるお金は10万円強だが、世界の億万長者ならわずか2日程度の滞在でも、100万円以上の価値を見出して下さるかもしれない。

外国人観光客も、到着後の隔離期間が2週間もあっては、どうしても来るのに躊躇してしまう。コロナを封じ込め、というか、ブータン中部や東部は安全なのだから、高額所得者向けに安全アピールして、それでも細心の注意を払う安全対策措置を退役De-suupを動員して実施し、どんどん誘致したらいい。

そして、そういう億万長者や企業経営者、エグゼクティブにブータンファンができれば、援助に頼らなくても、民間資金の動員に将来つながっていくことすら期待できる。

De-Suung創設記念日ということで、退役De-suupのスキルをどう結集し、今後のよりよい復興――Build Back Betterに生かしていったらいいか、試案を示させてもらった。退役De-suupだけでできることではなく、そういう指揮者やプロデューサーも必要で、組織横断的な連携が求められる。そうした連携自体もこの国の課題だとは思うが、トップがそういう革新的なアイデアと世界に広がる人的ネットワークをお持ちであれば、復興策の1つとして、考えてくれないかな~と思っている。

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