ルナナに戻れない! [ブータン]
コロナ禍の状況改善がない中、帰村を懸念するルナナの人々
Lunaps worried about journey back home with the COVID situation not improving
Changa Dorji,記者(プナカ)、BBS、2022年1月27日(木)、
http://www.bbs.bt/news/?p=165150
【抄訳】
コロナ感染多発地帯でのロックダウンが続く中、プナカにいるルナナの人々は、期限までに自宅に到着できるか心配している。帰村の旅は時間との戦い。雪のためにすぐにアクセスできなくなる山登りが彼らを待ち受ける。現在、プナカには約200人のルナナ村民が滞在している。彼らは皆、厳しい村の転校から逃れるために、毎年のように、馬と一緒に低地に移住する。そして、ロックダウンがなければ、彼らは今頃村に到着していた筈である。
彼らは通常、10月から低地に向かって移動を開始し、毎年1月までにルナナに戻る。「この季節、高地では風によって乾いた草が吹き飛ばされるため、馬はヤクのように寒さに耐えることができず、十分な食料を確保することができません」とある高地民は言う。
帰村の旅はいつも楽しいとは限らない。出発するには費用がかかり、困難な道中で馬を失い、旅にはもっと多くの時間がかかる。このタイミングは高齢者にとっては死活問題にもなる。さらに、彼らは帰宅してから行ういくつかの重要な仕事の機会を逃す。「大麦の種まきに遅れます。私たちの村で育つ数少ない作物の1つなのに」――とプナカのグムカルモ村に滞在中のルナナ村民はこう述べる。
帰村の道中が楽しいものでない一方、彼らの滞在も日ごとに不快なものになる。移動が制限されているため、馬やラバの世話をするのに支障をきたしている。現在、ルナナ村民の中にはプナカにある自身の家に滞在できる人もいれば、借家での滞在を余儀なくされている人もいる。そういう人々にとって、プナカに長く滞在するほど、より多くの費用がかかる。「今月30日までにロックダウンが終了することを期待していましたが、プナカではまだ陽性者が見つかっているため、今は心配です」
何人かは村に戻るためにヘリコプターサービスに期待をつないでいる。しかし、プナカ県のCOVID-19タスクフォースの指揮官によると、タスクフォースは高地住民から帰国許可の要請を受けていないという。「彼らが安全地帯に移動するには、タスクフォースの規則に従って、十分クリーンであることを保証するため、検疫プロセスを経る必要があります」――県指揮官はそう述べる。
ルナナ村民が予定通りに旅を始められれば、ガサから家に着くまでの約9日間の行程となる。
昨年、日本で公開されて話題になった『ブータン-山の教室(Lunana: A Yak in the Classroom)』が、オスカー候補にノミネートされたというので、最近ソーシャルメディアで話題になっているが、劇中、若い教師を冬の訪れを前にして村で見送ったルナナの人々も、その後こうしてプナカに下りてきているのです。
プナカのゾンから少し北上したあたりの畑の中に、キャンプ地のようにテントがいくつも張られていて、そこに馬も繋養されている姿を、見かけたこともある。
だから、馬を連れて山を下りてきていた村人が、新型コロナウィルス感染急拡大の影響で、馬を連れて村に戻れなくなっているという報道を目にして、こんなところにもしわ寄せが来ているのだと、僕自身も気付かされた。
プナカに下りてきているルナナ村民全員が、馬とともに歩いて下りてきたわけではないという点は、補足しておく。記事にもちらりと言及があるが、ルナナ村民でも冬虫夏草採集で儲けている世帯はプナカ県内にも家を持っていて、車も持っている。ルナナからプナカまでの移動はヘリコプターだ。
だから、馬とともに下山してキャンプ地で暮らしている人もいれば、ヘリで下りてきて持ち家で暮らしている人もいる。そして、今回の報道で困難に直面しているのは前者であって、ルナナ村民全員がそうだというわけではないのではないかと思われる。
正直、いくら考えても、妙案が思いつかない。こういう、ややもすると見落とされがちなところに注意を向けた報道には感謝しつつ、どうしたらいいのかは今後も考え続けたい。歯切れの悪いコメントで申し訳ありません。
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