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冬休みに増えるIT知識補完研修 [ブータン]

ITキャンプが若者のデジタル・デバイド対策に
IT camp bridging digital divide among youth
Sonam Tshering記者(モンガル)、BBS、2022年1月3日(月)、
http://www.bbs.bt/news/?p=164185
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【抄訳】
私たちは、デジタルテクノロジーが世界経済と人々の生活、仕事、遊びの方法に革命をもたらす、そんな時代に生きている。しかし、この国では、少なくとも今のところ、PCやラップトップなどのデジタルテクノロジーにアクセスできるのはほんの一握りの人々で、革命は達成可能とはほど遠いようだ。恵まれない若者がデジタルリテラシーとテクノロジーを通じてデジタル世界をナビゲートできるよう準備するため、モンガルのゲルポシン情報技術単科大学(GCIT)でITトレーニングキャンプが開催された。

世界の他の場所では、人々は人工知能、IoT、自動運転車などについて話し合っている。しかし、モンガルでは、国の未来を形作る上でより大きな役割を担う高校生が、Microsoft Officeツールと基本的なコンピュータネットワークの実行方法を理解し始めたところに過ぎない。 Project SHERABのおかげで、手遅れになる前に少なくとも基本を学んでいる。

ProjectSHERABの主催者の1人であるDechen Rabgyalは、この研修により、学生が高等教育機関や大学に移行する際に必要な知識を身に付けることができると述べた。「私たちの主な選考対象は、自宅にコンピュータを持っていない学生です。もちろん、彼らは学校でITクラスを受けていますが、一部の人にとっては、それは選択科目であり、必須であっても、生徒は十分な時間を得ることができません。ですから、休暇中に、GCITのような関連する専門知識を持つ教員がそのような研修を提供できれば、彼らはより多くを学ぶのに役立つだろうと私たちは考えました。」

王立ガバナンス戦略研究所(RIGSS)の基礎リーダーシッププログラムの卒業生でもあるボランティアのグループで構成されるこのプロジェクトでは、2週間のキャンプを編成した。それは、自宅でコンピュータにアクセスできないモンガルの75人の12年生向けである。モンガル県教育担当官のレポートによると、12年生の350人以上の生徒が自宅でコンピュータにアクセスできない。

「参加者の適性検査を実施したところ、ほとんどの生徒はITに関する知識が限られていることがわかりました」――GCITのトレーナーの1人であるKarma Dorjiさんはこう述べる。

「キャンプに来た当初、私は他の参加者のように速くタイプすることができなかったので、初めは難しく感じました。でも、キャンプを通じて、より的確でより速くタイプできるようになりました。研修に参加した後、ゾンカ語Unicodeのインストールと使用方法も学びました」――参加者の1人、Jigme Chodenさんは述べる。

「研修前は、ソフトウェアのインストール方法がわかりませんでした。でも、ここのトレーナーは、いろいろなソフトウェアをインストールして使用する方法を教えてくれます。今では、研修で学んだ知識を学校の友達と共有することができます」――別の参加者であるTshering Jamtshoさんはこう述べる。

全国世帯別ICT調査レポート2021によると、国内の世帯の約4%のみがコンピュータを所有し、19%がラップトップを所有し、約4%がタブレット端末を所有しているという。

「ITの理解や知識がないと、学生、特に若い世代は、急速に変化しグローバル化する世界に積極的に参加できない可能性があります。したがって、これらのグループがケアされないまま放置されると、大きな不利益が生じるでしょう。第二に、私たちは主に若者をターゲットにしましたが、それは、一般の人々、特に指導者も強調しているように、若者は国の未来であるが、未来はテクノロジーにあるからです」――Dechen Rabgyalさんはこう述べる。

プロジェクトSHERABは、昨年1月にパロの学生を対象に同様のキャンプを実施した。彼らはさらに、将来、国内他地域でもキャンプを実施することを計画している。

コンピュータとデジタルリテラシーは、世界がますますデジタル化される中、特に若い世代にとって、必要不可欠なものとなりつつある。こうしたプロジェクトは、特に国内の遠隔地で若者が直面しているデジタル・デバイドに対処する上で大いに役立つだろう。

学校が長い冬休みに入ると、全国各地で、さまざまな課外学習プログラムが展開される。長いお休みだからゆっくり遊ぼう、楽しくやろうという感覚はこの国ではあまりなく、また、会場提供する教育機関側も、長い休みの期間中施設を遊休状態にしておくのはもったいないという意識があるようで、記事でも紹介されているようなプログラムはすんなり受け入れられる。企画力や、県の教育担当官との連携は問われるだろうが、僕はブータンの素朴でよい一面だと思う。

以前、僕は、自分の職場のお隣りさんから、「お前、IoTの知識あるか」と訊かれたことがあった。「micro:bitを使って、IoTの感覚を知ってもらうぐらいのことならできるけど」と僕は答えた。そのお隣りさんは、元々ゲルポシンのGCITの先生方と何らかつながりのある人らしく、さかんにGCITがそういう人材を欲しがっていると言っていた。BBSで報じられていたITキャンプの趣旨から言って、あまりIoTには踏み込んでいないのではないかと予想はされるが、彼はここ2週間ほどずっと職場を不在にしていたから、きっとこのキャンプの運営にも関わっていたに違いない。

かく言う僕も、今週末から、冬休みでティンプーにいるCSTの学生を対象に、micro:bitの講習会を開く予定だ。毎週土曜日の午前だけだが、受講希望者は各回とも15人に達し、デバイスが2基しかないのにどうやってやるか、頭を悩まされている。同時に募集した、ファブラボ・ブータンと共同での1週間のハンズオン機械操作研修も、募集定員20人に対し、現時点で54人もの応募があり、どうさばこうか考え中だ。別に急がなくても、今年6月に「ファブラボCSTプンツォリン」がオープンしたら、同様の機械操作習熟研修は、学内でも受講できるようになる筈だが。

さて、BBSの報道内容に戻って気になったのは、受講した生徒の学校にはコンピュータラボはある筈で、そのラボが、授業時間以外でどのように運営されているのかという点だ。誰か受付係がいて、生徒は放課後に来て使用してもいいということならいいのだけれど、もし自由時間に生徒がアクセスできる環境になければ、せっかく冬休みに集中的に研修を受けても、その後自身で反復練習をすることはできないだろう。また、この種の研修は、各学校にその気があれば、もっと頻繁に、しかも反復練習できるコンピュータが近くにある環境で、実施できるものだと思う。つまり、ひょっとしたら、デジタル・デバイド対策と銘打ちつつ、知識面では対策と言えるかもしれないけれど、フィジカルなアクセス面では対策になっていない可能性があるということだ。

とはいえ、このキャンプの建付けは僕にとっては参考になった。いい報道をありがとう、という感じだ。「プロジェクトSHERAB」のことも覚えておこう。

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