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タイトルが長い3Dプリントデータカタログ [仕事の小ネタ]

無料データをそのまま3Dプリント 作業に出会える道具カタログ/事例集

無料データをそのまま3Dプリント 作業に出会える道具カタログ/事例集

  • 出版社/メーカー: 三輪書店
  • 発売日: 2021/06/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
無料!簡単!すぐできる!!ものづくりのための3Dプリンタガイドブック第2弾!!「この本があれば必ず3Dプリントできる!」をテーマにした道具カタログ。
 第1弾『はじめてでも簡単 ! 3Dプリンタで自助具を作ろう』では3Dプリンタに関わるツールやサイトを満遍なく紹介し、簡単なモデリング方法を含めたツールの使い方など「自分で最初から最後まで作る」方法を紹介した。今回は「まず出力してみること」に焦点を当て、QRコードからデータを直接ダウンロードしてすぐに出力できるようにした。200を超える暮らしの道具のデータを掲載!カタログから好きな道具を選んで3Dプリントしてみよう。  好きなものを出力するだけでなく、当事者にカタログを見せて「こんな自助具がほしい」とニードを引き出すきっかけとして使用することもできる。実際にセラピストが当事者からヒアリングして自助具を作った過程や3Dモデルデータを活用した事例も多数収録している。
 3Dプリンタに慣れると既存のものを出力していくだけでは物足りなくなるかもしれない。そのために、数値を変えるだけでデータ上の物の厚みや大きさを変えられる「パラメトリック・デザイン」のモデルデータも収録している。また、第1弾では実際の道具作りを順を追って紹介しているので、そちらも参考にしてほしい。
 一人ひとりに合わせたものづくりが浸透し、生活を便利にする道具が見直されていけば、誰にとっても暮らしやすい社会が実現できるかもしれない。まずはものづくりの参加へ一歩踏み出してみよう。
【購入】
僕が3Dプリントをより身近に感じられるようになったきっかけは、三輪書店から2019年に出た『3Dプリンタで自助具を作ろう』を読んだことである。すごくよく構成ができた本であり、3Dプリンタについて知りたいと人から言われた場合、僕は迷わず本書を勧める。また、3Dプリンタについて話せと言われる時も、僕は本書の枠組みを参考にしつつ、話すようにしている。

その同じ共著者の手により、今年6月、新たなデータカタログ・事例集が同じ三輪書店から発刊された。タイトルが長く、副題「作業に出会える道具カタログ/事例集」は、どういう意味なんだろうかと首をひねる。共著者の1人は作業療法士だし、お二人が代表を務めておられるファブラボ品川は3Dプリンタを使った自助具の製作がその活動の特徴ともなっている。ファブラボ品川のHPを見ると、過去に製作された自助具が既にカタログ化されて掲載されている。データだけではない、各々の製作工程も詳らかにされ、さらに障害者も参加して行われる自助具製作イベント「メイカソン」の様子もレポートされている。

本書は、ファブラボ品川がこれまでにHP上でも行ってきた製作データや製作プロセス、協働の場づくりの経験を、1冊の書籍にまとめたものである。値段は決してお手頃ではないが、前著『3Dプリンタで自助具を作ろう』で収録しきれなかった作品がこれでもかと紹介されており、複製製作上の注意点、使用フィラメントの種類、印刷時間や内容充填率等も細かく記載されている。実際に、本書にあるQRコードからSTLファイルをダウンロードして、実際に3Dプリントしてみたケースも何度かある。

8月初旬に本書を入手してから今日まで、本書は何度も手に取り、該当ページを参照してきたのだが、11月に入り、先週末頃から少し自分の活動を見直したいと思うようになり、それで1頁目から通読してみることにした。通読するのは初めてだったが、おかげでいくつかの発見があった。

第1に、3Dプリンタを購入すると一緒に付いてくる最初のフィラメントはABSかPLAがほとんどなのだが、本書によると、ABSに代わってPET(PETG)という新たなフィラメントが徐々に注目されるようになってきているのだそうだ。僕も、寒冷地で活動していて、ABSで3Dプリントした際の収縮でいい印刷結果が得られない試行錯誤を繰り返し、なんとか自分なりの対応策を見つけ出したところだった。PETか…。ということは、目の前にもあるPETボトルも、フィラメントとしてリサイクルできるということか…。

第2に、これもフィラメントの話題だが、PETがABSに置き換わりつつあるという他に、本書が自助具製作にかなり関連したものづくりを多く取り上げていることから、全体を通じてTPUという、柔軟性を伴う3Dプリントで使われるフィラメントの登場回数が非常に多い。通読してわかったことだが、ABSはほとんど使用されておらず、TPUかPLA、そしてたまにPET使用という頻度になっている。

手元のフィラメントの在庫が残り少なくなってきたので、僕は10月にフィラメントを大量発注した。本書でTPUの頻出は気になっていたので、PLAに加えてTPUフィラメントを数本注文し、使用に慣れることにしている。一方、PETは1本しか注文していない。本書を通読してから読んでいれば、もう2、3本注文しておけばよかったと後悔もした。

第3に、パラメトリックデザインについての言及が多いこと。何かの拍子にThingiverseのカスタマイザー機能については少し耳にしていたが、本書を読んだのがきっかけとなり、カスタマイザーも試しに利用してみた。先月中旬、こちらでの知人向けに漏斗を3Dプリントして寄贈してきたが、その際は、既存のデザインデータをThingiverseからダウンロードしてそのまま3Dプリンタに連携した。できれば必要な採寸を行い、漏斗の先の部分を少し長くしたかったのだが、時間的制約もあったので、すぐに対応できなかった。カスタマイザーを使いこなせていたら、そのあたりの調整は自分でできていたと思う。

また、米国の3Dモデリングの書物によく出てくるOpenSCADも、本書で取り上げられていたのを見かけたのがきっかけで、少し調べてみた。恥ずかしながら、ようやくどういうものなのかが理解できた気がする。深掘りしていくのはもう少し先になるかもしれないが、そういうきっかけをいただいたかなと思う。(なお、パラメトリックデザインそのものについては、Fusion 360でもヒストリーバーを使って過去に遡って寸法をいじることは時々やっているので、まったく知らないという操作でもないのだが。)

第3に、新型コロナウィルス感染拡大を受けた日本のメイカーコミュニティのレスポンスについて、当時当事者としてその輪の中にいた著者の体験や考察が最後に述べられている点もよかった。自分もそんなにリサーチをしているわけではないので間違っているかもしれないが、新型コロナ感染拡大以降に出たデジタルファブリケーション関係の書籍(雑誌を除く)で、このあたりを少しでも扱っているものは本書が初めてかもしれない。

ファブラボの世界的ネットワークで提唱されている「学び(Learn)」「作り(Make)」「共有する(Share)」の中で、ややもすると「共有」の部分はなおざりにされやすい。それは、ブータンで既に4年間の活動実績があるファブラボ・ブータンを見ていても強く感じるし、2022年初めから立ち上がっていく幾つかのファブラボでも、「共有」をどう図るかについては検討されているように思えない。

それに比べてファブラボ品川では、「共有」を含めた3要素のバランスをとてもよく保っておられるように思う。本書の刊行もその一環といえる。HPを見ればいいというわけではない。日本語で書かれているとはいえ、本書を持ち歩いてこちらの障害者団体や行政の関係者の方にお見せすると、「こういう自助具が当事者の生活を少しでも良くしてくれる」と強烈な反応が返ってくる。僕が自分用に作ったスマホスタンドであっても、脳卒中の影響が残る生存者が電話を使う際、他の家族がスマホを持っていてあげないといけないらしく、スマホスタンドはその家族の負担を少し軽減してくれると好評だった。

今後も参考にさせていただくことが多い本だと思うが、取りあえず通読を一度終えたということで、ブログで紹介させていただいた。

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