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再読『実践Fabプロジェクトノート』 [仕事の小ネタ]

内容紹介
3Dプリンターやレーザー加工機などでデータから製品を製造できるデジタルファブリケーションが話題となっています。本書は、日本でその活動を行ってきた市民工房「FabLab(ファブラボ)」および関連施設によって書かれたデジタルファブリケーションの入門書です。本書ではFabLabおよび関連施設6か所で実際につくられた40のアイデアとそのつくり方を写真で紹介しています。たとえば、自分の顔の立体データを3Dプリンターで出力したり、アクリル板をレーザー加工機でカットしてボタンをつくったりなど、初心者でも半日程度で製作できる実例約40点を掲載。各ラボの利用案内や設置機材の説明もあり、これから自分で3Dプリンターやレーザー加工機を使ってみたいという方々にぴったりの実践的入門書です。
【購入(積読)】
10月は、仕事上の行き詰まりを感じた1ヶ月だった。あまりそれを詳述するつもりはないのだが、「今のままで本当にいいのか」と自問自答することも多く、特に、毎週土曜日に主宰しているワークショップがなくて暇な週末を過ごしたりすると、本当に余計なことを考えるのでダメだ。

で、ちょうど三連休となる10月最後の週末、気付けば10月の読書はあまり捗っておらず、1日1冊でも読まないと、毎月のノルマと思っている10冊にすら到達しないのに愕然とした。慌てて手元にある積読蔵書のうち、短時間で一気に読めそうな本書を選んで1日で読み切った。

元々、僕が前回の駐在の際に持って来ていて、そのままJICAの事務所の蔵書として寄贈していたものである。当時、JICAではブータンに第2のファブラボを作るという協力プロジェクトでブータン政府側と協議をしていたので、参考になればと思い、寄贈して帰国した。で、図らずも2年後にまた戻って来ることになり、自分自身もこの国のファブ施設を使いこなせるようになりたいと思い、昔寄贈した蔵書を手元に持ち帰って読み返すことにした。

当然、前回2014年10月29日にそのレビューをこのブログで紹介している。くしくも、時期も現在と同じ10月下旬だった。ちょうど7年ぶりの再読となった。

初版刊行は今から8年も前のことで、少なくとも自分が知っている限り、本書で登場している「ファブラボ渋谷」は神田に移転して「ファブラボ神田錦町」になっているし、僕の実家にほど近い岐阜県大垣市の「f. Labo」は場所は変わらないけれど「ものづくり空間Fab-core」と名称が変わっている。初読から7年の間に起こった大きな出来事は、本書に登場している何人かの方とは面識ができたということが挙げられる。で、そういう方々が、日本で「ファブラボ」という言葉が聞かれ始めた当時、どんなプロジェクトで何を製作されていたのか、本書を読み返してみて初めてわかった。

同じ文献でも、時間をおいて再読してみると、読んでいる時に自分が置かれた状況によって、見るポイントが異なるのだなと感じた。なぜ再読までに7年も要したか、なぜブータンに置きっ放しにしたのか、その理由を考えると、本書に収録されている40のプロジェクト事例から、自分の作りたいもののインスピレーションがなかなか得られなかったからではないかと思う。開発途上国を相手にしていると、実はもっと様々なものづくりのニーズに接する機会がある。本書の事例は惹かれるところはあるものの、それがドンピシャで途上国のニーズにマッチするかというと、そうでもなかった。だから、少なくとも「何を作るか」という点での参考にしづらい―――それが初読の際の印象だった。

それを踏まえて今回の再読だったのだが、自分もここで使用されているデザインソフトや工作機械に多少の知識と経験が伴ってきたからか、写真入りで説明されている製作プロセスで、何がどのように進められたのかが、以前よりもよくわかるようになってきていた。実際、本書で紹介されているものを、それとは知らずに当地で3Dプリントして作ってしまっていたというケースもあった。

そして、今の自分自身の能力の限界がどのあたりにあるかを自覚した上で、第2章「家具やプロダクトをつくってみよう」や第3章「電子基板をつくってみよう」、第4章「生活で使うものをつくってみよう」あたりは、自分が取りあえず実践してみることで、少し自分の可能性を広げられる余地がありそうだなと感じた。単純に自分のものづくりのスキルだけでなく、他者を巻き込んでものづくりに取り組んでもらうような「仕掛け」を考える上で、本書で書かれていることはかなり参考になる。

言い換えると、再読で感じたのは、本書が、読者による複製やリミックスを想定した製作プロセスの「シェア」を、相当意識しているという点である。本書の中でも書かれているが、ファブラボの基本原則は「学ぶ(Learn)」「作る(Make)」「共有する(Share)」というらしい。でも、多くのファブ施設では「学ぶ」「作る」は相当意識されているが、「共有する」ことに関しては、出来上がった作品の展示やデザインデータの公開はともかく、製作プロセスを複製・リミックス可能な形で公開する取組みは、恥ずかしながら僕もあまり知らない。

本書は、日本のファブラボのコミュニティが、形成初期の段階で考えた、1つの「シェア」のあり方なのではないか―――そんな気がした。

であれば、本書や、本書で言及されている製作プロセス公開サイトを参照しつつ、自分でやってみるというのが僕にとっての次のステップになるのだろう。そう考えると、11月の自分の行動計画に、少し「こんなの入れてみよう」というアイデアが浮かんできた。

ありがとうございます。いいタイミングで再読できたと思う。

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