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地元起業家にとっての課題 [ブータン]

過剰な輸入品が地元起業家を苦境に
Excessive import poses challenge to local entrepreneurs
Thukten Zangpo記者、Kuensel、2021年10月16日(土)、
https://kuenselonline.com/excessive-import-poses-challenge-to-local-entrepreneurs/

【抄訳】
経済ロードマップでは、約22,000人に雇用を提供する小規模零細産業(CSI)が2030年までに約50,000人を雇用できると示している。しかし、現在CSI部門で従事している人々は仕事を辞めていっている。

ティンプー市内にあるCSIマーケットのソナム・チョフェルCEOによると、CSI部門で働く人々の80〜90%が、海外に行くか、他の仕事に就き始めているという。CSIは国内産業の95%を構成しているが、国内総生産(GDP)への貢献度は5%未満でしかない。 「しかし、それは最大20%程度は貢献できるる力が潜在的にはあり、政府が私たちを支援してくれれば、輸入品に取って代わる可能性があります。」

同氏によると、農業部門では、サプライチェーンや配送のシステムが欠如しており、その産品が付加価値を付けてくれる人や起業家に届かないため、儲かるビジネスになっていないという。 「500のCSIを収容するCSIマーケットは、産品の5%しか受け取りません。」同氏は、市場の90%が輸入品で溢れており、過剰な輸入はCSIにとって大きな脅威になっていると指摘した。

CSI部門をもっと魅力的にするためには、CSIにより多くのインセンティブが与えられるべきだという。 「政府は全国信用保証制度と国立CSI銀行を通じてCSIを財政的に支援していますが、コーディネーションに欠けています。」例えば、CSI部門ではプラスチック製造はできないが、市場に出回っているすべてのパッケージ製品はプラスチック包装されている。 「プラスチック包装品が規制されていれば、地元生産者により平等な競争の機会を提供するでしょう。」他にも、同氏は、金融アクセス、許認可や諸手続きのための単一窓口となるファシリテーションセンターがあると良いと指摘した。
(後半に続く)

起業家も同様の課題を指摘している。ケンガ・ポテト・フィンガリングのオーナーであるジャンチュ・ドルジさんによると、プンツォリンでロックダウンが続いていた頃、200〜300kgの冷凍フライドポテトの売上があった。 「しかし、プンツォリンで輸入再開された後、私はそこまでの売上を達成できなくなりました。」また、元ツアーガイドで石鹸事業を始めたティンレイ・テンジンさんは、今はポテトチップス生産にシフトしたという。彼は、ブータンは他国からの輸入製品の多くを国内で生産できる可能性があると指摘した。

一方、アジア開発銀行(ADB)は、ブータンの人口ボーナス期が1995年に始まって2038年まで続くと予想されているため、若者がCSI部門で仕事を得られる可能性は非常に高いと指摘している。人口ボーナスは2013年にピークに達するが、その後ボーナス規模は着実に減少し、2038年以降は人口構成が重圧に変わると見られている。「ブータンの43年間の人口ボーナス期には、人口ボーナスは毎年推定1.6パーセントポイント程度経済成長の底上げに貢献できただろう」と報告書は指摘する。

政府は、成長の潜在能力が高いCSI部門を促進し、地域および国際市場で競争力のあるニッチを創出していくことや、CSI部門を産業部門の主流として位置づけられるようにするため、第12次5カ年計画において、CSI開発のためのCSIフラッグシッププログラムに12億ニュルタムの予算配分を承認している。

先日、自動手消毒器と手洗い洗剤噴霧器の輸入代替を目指して新製品を発表した若者グループの記事をご紹介した。多分、その時の記事だけでは書き足らないと思ったのか、同じ記者が、クエンセル紙上で別の記事を発表した。前回の記事をご紹介した際、スタートアップセンターに入居している女性起業家の声として、「パッケージングや消費者のニーズに合わせた製品多様化等、今の技術でできることに限界がある」と言っていたことについてもふれた。

それと同じような問題点の指摘が、今回の記事の中でも見られる。プラスチック包装ができる業者は国内におらず、きれいなパッケージングが施されている輸入品に、やはり消費者は飛びつくということが暗に指摘されている。

プラスチック包装の是非はあるにせよ、以前スタートアップセンターを訪問した時、入居している企業の取扱い商品の幾つかを写真撮影させてもらったのでここで紹介しておく。

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4年前に初めてこのスタートアップセンターの前身の施設を訪問した時と比べると、パッケージングは随分良くなったように思える。箱の印刷は国内でできるようになったらしい。ただ、ビニール包装は熱溶解で密閉化するところまでは行っていないところもあり、クッキーでも箱から出してみると、透明ビニール袋でホチキス止めがされていたのには少し驚いた。

前述の女性生理用品についても、今ある機械では単一の厚さのものしか作れない。量によって何種類かの厚さの生理用品を生産することは、今ある技術ではできないのだとその女性起業家はおっしゃっていた。

だから、優遇融資制度を整えたからというだけでは経済省はダメで、記事の中でも指摘されている通り、融資以外の制度的支援も、一貫性が求められるのだろう。

例えば、また女性生理用品の話になるが、日本の生理用品メーカーから、技術指導を受けられないかという相談を僕は個人的に持ち掛けられた。でも、そういうコネクション探しを個人の努力だけでやるのには限界もある。本当は経済省小規模零細産業局がそうしたニーズに目を光らせていて、外国の製造業とのコネクションを本気で考えてくれたらいいのに。というか、経済省は、そういう照会のできるネットワークを各国在外公館との間で作るべきではないか。

日本についても、大使館でもJICAでもJETROでもいいので、そういう、小規模零細企業のニーズに対して日本国内の企業を紹介してくれるようなチャンネルがあったらいいのにと思う。

もちろん、ブータン産品が国際市場のニッチに食い込んでいくという、輸出の発想になると、輸入代替を考えて「政府なんとかしろ」と言っているだけでは済まない。いかにニッチとはいえ、国内の消費者を相手にして「これくらいでいいだろう」と思っているレベルが、国際市場に出すならそれなりに上がる。「ブータン産」だからというプレミアムだけでなんとかなるところもあるかもしれないが、リピーターにはなりづらいだろうし。経済省もその辺はシビアに企業には伝えていかないといけない。

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