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中古車両のパーツはオープンソース化しよう [ブータン]

日本から消防車3台と多目的車2台を受け取る
Bhutan receives three fire-fighting and two utility vehicles from Japan
Sonam Tenzin、Choni Dema記者、BBS、2021年9月29日(水)、
https://www.bbs.bt/news/?p=158325
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【要約】
ブータンは本日、日本から3台の消防車を受け取った。 JICAブータン事務所の所長が、本日、ティンプーのチャンザムト地区にある消防署で王立ブータン警察に車両を引き渡した。消防車両は国内の消防および救助サービスの能力をさらに強化する。 これまでに、ブータンは草の根プロジェクトを通じて日本から30台のそのような車両を受け取っている。(報道の後半は省略)

ここ数日のソーシャルメディアで、消防車3台を前にJICAの所長と王立ブータン警察(RBP)の長官が並んで写っている写真とともに、何度も報じられているのがこの中古消防車の供与である。背景を多少なりとも仄聞している者として、よくぞここまで漕ぎ付けられたと、関係者の方々のご尽力に敬意を表したい。4年ぐらい前からこの供与の話はあったが、いろいろな事情でなかなか進まずにこれだけ時間がかかったようである。

日本の消防車は耐用年数が比較的短いと言われている。出動件数が多いからなのだか、規程でそう決められているからなのだか、理由はよくわからない。でも、ブータンの場合はティンプー管区でも火事での出動件数は雨期で1カ月に1回程度、乾期の冬場だと1週間に1回程度とそれほど多くなく、従って日本の中古消防車でも、こちらに来たらまだ十分に現役で活躍できる余地がある。現に、1990年代に供与された中古消防車が今でも現役で使用されている。丁寧に使われていると言える。

だから、今回報じられている内容については、若干正確性を欠いて誤解を招きかねないところはあるとはいえ、いいお話だと思って読ませていただいた。

今回の東京都町田市からの消防車供与がどのような仕組みで行われたのかは承知していないが、過去の中古消防車供与は、日本政府の「草の根・人間の安全保障無償資金協力」が使われている。この中に、中古機材の供与について、輸送費を草の根無償資金協力で支弁するというプログラムがあるのだ。ブータンでは、中古消防車の他に、中古ゴミ収集車の供与でもこのプログラムは活用されている。

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資源の再利用という観点からは、このプログラムの着眼点はすごく良いとすら思う。少なくとも、これらの車両が稼働している間は…。

僕が気になっているのは、日本で既に耐用年数が過ぎてから、さらに10年も20年も使っていると、既にメーカーは同じ車種や搭載機器の製造を中止していて、よってスペアパーツも生産終了していて、必要になった時に容易に手に入らないのではないかということだ。実際、RBPに以前供与された中古消防車で、油圧系の不具合を直せる整備工場がティンプーになく、使用不能状態で消防署敷地内に置かれていると報じられたことがあった。

そもそも中古車なのだから、20年も使って不具合が生じたら、それは廃棄処分にして、互換性がありそうなパーツは取っておいて、他の車両で不具合が出た時に使い回したりすることは可能なのだろう。駆動系のパーツはそういう使い方は確かにできそうだ。でも、油圧系はパーツの互換性がそれほどあるとは思えないし、整備できる人材が国内にあまりいない。中古パーツの国際取引市場もあるらしいが、そこで売りに出ているパーツが第三国のものだったりすると、どういう状態にあるのか、買い手が確認する術もない。

いいプログラムだと認めた上で、できれば日本政府の草の根無償の制度設計を担当されている方には、メーカーが生産終了している機材の場合は、そのパーツのデータをオープンソース化することを輸送費支弁の条件にするとか、考えてもらえないものだろうか。たとえ本体の供与主体が日本の自治体だったとしても、輸送費支弁を政府が行う際の供与条件を遵守し、パーツのデータを公開するよう、政府とともにメーカーに求めるようなことはできないものだろうか。単純すぎると言われるかもしれないが、メーカーにそれを条件付けても、メーカーのこうむる負担はそれほど大きくないのではないかと思われる。

もしパーツのデータが公開されているのであれば、それをダウンロードしてこちらの町工場で複製を作ることだってできるかもしれない。多少質は落ちるかもしれないが、頻繁に故障してもすぐに複製してクイックに交換し、稼働時間の落ち込みを最小限で食い止めることができる。しかも、オープンソース化してしまえば、現地でそのデータを自分でゼロから作る手間がかからない。雇用にもつながる。

もっと言えば、もしそのメーカーがパーツを調達していた中小の町工場が鋳型をキープしていて、たとえ生産終了していても、そのパーツの鋳型はどこのどの工場にあるのかがデータ管理されていれば、1品もののパーツ発注を一元的に受ける窓口を政府が設けて、パーツの入手を支援するような制度を作ってもいい。そうすれば、ODAが日本の雇用にもつながるというストーリーが出来上がる。

中古機材の供与に限っての話でよいので、そんな新たな制度作りを、日本政府は進めてくれないものだろうか。そんなことを考えながら、ここ数日の消防車に関する報道を見ていた。

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