『いのちの姿 完全版』 [読書日記]
内容(「BOOK」データベースより)【MKレストラン文庫棚から拝借】
自分には血のつながった兄がいる。後年その異父兄を訪ね邂逅した瞬間を鮮やかに描く「兄」。十歳の時に住んでいた奇妙なアパートの住人たちの日常が浮かぶ「トンネル長屋」など、まるで物語のような世界が立ち上る―。自身の病気のこと、訪れた外国でのエピソード。様々な場面で人と出会い、たくさんのいのちの姿を見つめ続けた作家の、原風景となる自伝的随筆集。新たに五篇を収録した完全版。
先日ご紹介した奥田英朗『サウスバウンド』を返却するためにMKレストランに行った際、新たにお借りしてきた1冊。
『錦繍』を7月に読んで以降宮本作品は2カ月開いていたが、ちょうどお手頃なサイズの文庫本だったので、今回はこのエッセイ集を借りてきた。
収録されたエッセイは、京都・高台寺にある料亭『和久傳』の大女将に依頼された作者が、この料亭が年2回発行する雑誌に向けて寄稿したものである。
「完全版」とあるのは、発刊から7年分のエッセイをまとめて集英社文庫で2014年に出した後、この雑誌への寄稿はさらに3年続き、2017年に雑誌が終刊になったところで、新たに数編を加えたからだという。
僕はまだ宮本作品の初心者といえるレベルの読者に過ぎないので、100冊以上の単行本があるとされるその作品群の、原風景というをこれらのエッセイの中から垣間見るという楽しみ方ができるレベルにはない。
でも、そうした数少ない読了作品の中であっても、あの作品のあのシーンは、作者のこんな体験をベースにして描かれているのだなというのを感じ取ることができた。
回想シーンが多いこともあるが、収録されているエッセイの1つ1つが、作家・宮本輝の一人称の目線による、小説になっているような錯覚を覚えることもあった。
そして、そうした原体験をもとにした宮本輝の小説は、各々に作品に込めたメッセージが明確であることを知った。文学とはそういうものなのだろう。改めてそう思った。
最近読んだ小説のレビュー記事の中で、「面白いといえば面白かったが、作者はこの作品を通じて何を訴えたかったのだろうか」と述べたことがある。
ストーリーの展開がかなりハチャメチャで、あり得ないような出来事が次から次へと起こる。登場人物のセリフもかなり刺々しいものを含み、きな臭さを感じる。
それと比べることで、宮本作品の良さが改めてわかった気がする。
さて、お気づきかと思うが、今回、僕は段落の切り方をいつもと変えてこのブログ記事を書いてみた。
このエッセイ集がこうした段切りで描かれているので、それに倣ってやってみたものだ。
最近の自己啓発やビジネス書などもこうしたスタイルを取るものが多く、読みやすさという点でも一役買っているのかもしれない。
これを自分でやってみて感じるのは、段落を1行ないしは2行で区切るためには、1つ1つの文章を短く区切る必要があるということだ。
僕はややもすると1つ1つの文章がダラダラと長くなる傾向があり、自分自身で後から読み直しても、読みづらいなと感じることが多い。
これを矯正するためには、こういう「最大2行」ルールを適用した文章を時々書いてみるのもいいかもしれない。
短く区切っていくと、テンポも良くなる気がする。
タグ:宮本輝
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