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市民社会組織の課題 [ブータン]

市民社会組織の登録プロセスは緩和が必要
CSO registration process needs to be relaxed: CSOs
Samten Dolkar記者、BBS、2021年9月7日(火)、
https://www.bbs.bt/news/?p=157025
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【抄訳】
この国の市民社会組織(CSO)は、CSO登録手続の緩和を望んでいる。 市民社会の代表者たちは、昨日の「市民社会の可能性を活用する」と題したパネルディスカッションでこの問題を提起した。 彼らは、CSOはコミュニティが繁栄するための基本的要素だと指摘した。

CSOによると、現在の登録プロセスは複雑で、多くの書類を提出する必要があるという。これがCSOの成長を妨げていると指摘する。最も多忙で影響力のある人々はそのような面倒は避けたいと考えている。

CSOの成長を可能にするため、市民社会組織法の改正も提案された。その法案は夏期国会の会期中に上院に提出された。彼らによれば、CSOを管理する包括的な法制度や規制の欠如がCSOの成長を妨げているいう。

パネル討論では、ブータンメディアデモクラシーセンター(BCMD)のチェンチョ・ハム事務局長が、この法改正はCSOの成長を可能になる環境づくりの好機ではあるが、政府機関がCSOに対しすべての規則規制を課してくるリスクもあると指摘した。 「それは、機敏で柔軟性があり、非常にアジャイルで、変化する状況に適応する存在としての市民社会の良さを損ねることになるでしょう。そうだとすれば、私たちはより大きな官僚機構のレプリカとしての市民社会を作るだけに終わるでしょう。」

国民評議会(上院)の一部のメンバーは、前期国会会期中に市民社会組織修正法案が審議された際、国内のCSOの数の増加について懸念を表明した。これに対し、CSO側は、団体数の増加が国の懸念の原因となるべきではないと述べた。彼らは、同法案はCSO設立を原則許可とし、登録後に団体のプログラムを規制すべきだと主張する。

CSOを設立することで、人々は慈善活動を行い、コミュニティにおける社会問題に取り組むことができるとCSO側代表者は述べた。現在、国内には50を超える登録済みCSOがあり、さらに20団体以上が未登録の状態にある。

今年の5月下旬、ある講演会でしゃべらせてもらった時、「ブータンの CSOs は、社会や地域の課題解決にどのような、どの程度の役割を果たしていますか」という質問を受けた。おそらくその方はブータンのことをよくご存じで、「ブータンの CSOs にはたいてい王室や有力者のパトロネージがあり、お互いの領分を侵さないように忖度して、イシュー別の縦割りになっていると聞くが…」という前置きが付されていた。

今から思うと、その時のご質問にちゃんと答えられたのかどうかは自信がない。で、今回のBBSの報道の最後にあった登録CSOの数を見ると、前回駐在していた頃と比べて倍近くに増えているのがわかった。国会でCSOの急増に懸念が示されているというのは、こういう増加の仕方があったからだと思う。

ただ、増えているといっても僕の印象としてはまだまだ少ない。社会の様々な課題や様々な属性を持つグループの声を拾い、特定のニーズに応えていくのがCSOの役割だとしたら、市民社会はまだそれくらいの数のニーズしか拾えていない状況なのだということになる。

一方で、登録認可待ちの団体の声も聞いた。僕が出入りしているファブラボ・ブータンなんかは、これから国内数カ所に設置されていくであろうファブラボを束ねるネットワーク団体として、「ファブラボ・ブータン・ネットワーク」を登録するという計画だと以前聞かされた。こうしたネットワークは日本にだってあるし、昨年末にはフィリピンにも形成された。まあそうは言ってもファブラボ・ブータン以外のファブラボが未だ設立されていない現時点で、ネットワークもくそもないとも言えるが、ネットワーク設立構想の話を初めて耳にしてから、既に1年以上が経過する。

ここで何か将来の予定とか将来の構想とかを耳にしても、何割かの割引をして聞いていないと、その通りにはならなくて後でハシゴを外された思いをすることが多い。注意が必要である。

話がそれたので元に戻す。この報道は比較的短いので、実際にこのパネル討論の全体の中で何が話し合われたのかはわからない。この手のイベントに来るBBSの撮影クルーは、例えばオープニングセッションだけとか、2つ3つセッションがある時には最初の1つだけとか、特定の箇所だけを抜き取ってニュースを組み立てている。そこで議論された論点が本当にそれだけだったのかは疑問だが、かといって全体としてどんなことが論点として出てきたのかは、その場にいた人じゃないとわからない。

例えば、こちらに来て僕が耳にして意外だったことの1つに、CSOは収入創出活動をやってはいけないという縛りが存在するという話がある。何かを作って販売しても、その収入を団体の支出に回せるのなら非営利と定義していいだろうと僕らなら考えるが、ここではそれもいけないらしい。あるいは、非営利部門はCSO登録しておいて、その非営利部門の支出を別の営利部門からの内部相互補助(cross-subsidy)で賄うというのも、日本だったらよくある形態だが、ここではそれはNGらしい。

そうすると、CSOはどこも慢性的に金欠状態になり、それで仕方なく、ここに事務所を構えている外国の援助機関の門を叩いて援助を請うような行為につながっていく。本当は、同じような課題に取り組んでいる外国のCSOと直接つながる機会がもっとあったらいいのだけれど。

こういうことは話し合われなかったのだろうか。

タグ:CSO
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