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『バングラデシュIT人材がもたらす日本の地方創生』 [仕事の小ネタ]

バングラデシュ IT人材がもたらす日本の地方創生

バングラデシュ IT人材がもたらす日本の地方創生

  • 出版社/メーカー: 佐伯印刷
  • 発売日: 2021/07/26
  • メディア: 単行本
内容紹介
南アジアに位置し、1億6,000万人の人口を抱えるバングラデシュ。「デジタル・バングラデシュ」を政策目標の一つとして掲げ、IT産業開発・IT人材育成に力を入れている。一方、IT人材不足と高付加価値産業の育成に悩む日本の地方都市。本書は、バングラデシュ・日本を舞台にして、青年海外協力隊が始めたムーブメントから受け継がれてきた、バングラデシュのIT国家資格導入、IT人材・産業育成と、日本のIT人材不足の解消という「地方創生」に同時に貢献する、産官学を巻き込んだ現在進行形のバトンリレー。その軌跡を知る著者が、当時の関係者と共に振り返る。
【購入(キンドル)】
佐伯印刷出版が手掛けるこのJICA研究所のプロジェクトヒストリーのシリーズも、今は20冊以上になっているそうだ。初期には僕自身も執筆を経験させてもらったし、何冊かは執筆者のサポートをさせてもらった。そうした経緯もあり、初期の刊行物はたいてい目を通していた。しかし、2016年頃から新刊書を後輩から見せてもらう機会も減った。担当者も代替わりし、僕も先輩ヅラして「読ませろ」と言いづらくなった(笑)。

ブータンでの国際協力案件がプロジェクトヒストリーで取り上げられることはおそらくない。採用寸前まで行った企画もあったが、予定していた執筆者の筆が進まず、もたもたしているうちに、その協力案件の当事者だった方が、ご自身で回顧録として本にされた。自費出版だが、内容的にはプロジェクトヒストリーといっても遜色ないものだった。近年、この案件以上にブータンにインパクトを残した協力は思い当たらない。もうプロジェクトヒストリーとはご縁もない、僕はそう思っていた。

それなのに今回このシリーズの最新刊をカネを払ってまで読んだのは、あとがきに僕が登場するからだ。そのあたりの経緯の話は端折るが、いろいろな意味で他人事ではない案件だったのである。

1つには、このIT国家資格導入の話、2018年頃にブータンでも検討できないかと盛り上がったことがあるからだ。1人の青年海外協力隊員が提案してきたもので、バングラデシュの経験を参考にして、かなりしっかりした企画書が書かれた。しかし、当時この分野の協力隊員はその1人のみで、しかもその唯一の隊員が任期短縮で帰国してしまった。他にも理由はあったのだが、この話は尻すぼみになった。

そして今回、別の立場で再びブータンに来て、関係公的機関に挨拶回りしていた時、僕はある政府高官から、「バングラデシュであなたたちがやったことを、ブータンに対してもやってほしい」と切り出された。訪問目的はまったく別件なのに、日本人だというだけで、JICAに対する要望をこの場でされるのには正直戸惑った。僕は先にも述べた経緯から著者の狩野さんにかなり執筆初期の段階で原稿を見せてもらっており、このバングラデシュでのIT人材育成協力が15年近くかけて今の形で成果を出せるようになってきたという経緯を、ある程度承知していた。だから、バングラで10年以上かかったことを、ここブータンでたった2、3年でやれと言われても、それは難しいですと取りあえずの難色は示しておいた。

バングラデシュでできたのだから、ブータンでもできると言われても、それは違うと思う。そもそもIT技術者の統一国家資格の必要性を政府に訴えるにあたって、ITインストラクターという職種の協力隊員が、バングラデシュには数名いたそうだが、ブータンではそれが1人だけで、グループでの活動にまで昇華できなかった。その他にも、日本政府の関係者が頻繁にバングラデシュ入りしている様子や、JICAの中でのバングラデシュ担当職員の人数とか、本書を読むとかなり好条件が揃っていたのではないかと窺われる。

バングラデシュは、インドほどではないにせよ、IT人材の母集団が相当大きく、その分上位の人材のレベルはそれなりに高い。人材の能力比較は難しいが、母集団の規模の違いが、優秀な人材の数の差にも表れるのではないかと考えられる。それだけ規模の人材プールがあるから、日本政府関係者の頻繁な渡航や、ODAや民間企業による資源投入もある程度正当化されるだろう。

本書では、この協力を動かすのに、場面場面で実に多くの関係者が登場される。産学官連携の特徴だともいえるが、これだけの規模の資金や人材の投入を行って、バングラデシュで実現できたことを、ブータンで再現するのは難しいだろう。10分の1の規模でもいいのだと言われても、日本側の人材投入を10分の1にはできない。産官学がそれぞれ果たした役割を、たった1人の人間で担えと言われても無理でしょう。

そういう、再現性に関する検討が可能な材料を与えてくれたのが本書だった。この本は、群像劇ともいえるパートもある一方で、著者ご自身が案件実施に相当関わってきておられて、再現性に関する考察にもそれなりの紙面が割かれている。おそらくそのまま英語の読み物にしてもいい示唆に富んだ内容になっている。英語版が出ないかなと期待してしまうところだ。

なお、ブータンに話を戻すと、IT人材を日本の企業で採用するようなことを企図して動いておられた日本の企業もあったとも耳にした。コロナ禍で日本人の長期滞在者が帰国を余儀なくされて、話が頓挫しているだけなのかもしれない。そこは日本語教育も絡めて、日本人の考え方とかしつけとかも教えようとはされていた節もあるので、状況が正常化してくれば、バングラデシュについて行われた取組みとよく似た建付けでの小規模な取組みは、ブータンでも見られるかもしれない。先の例えで言えば、規模を10分の1にして考えるなら、日本政府関係者やODA関係者のコンポーネントはあえて組み込まないで、企業と日本語教育関係者の連携で話を進めるというのも一案だということでもある。

最後に、僕はキンドルでダウンロードして読んだけれど、Kindle Paperwhiteだと文字が薄く、マーカーで線も引けず、ちょっと読みづらかった。製本版の方をお勧めしたい。

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