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小規模零細企業がコロナ禍で低迷している理由 [ブータン]

小規模零細産業、コロナの影響で落ち込み
CSI record shrinks during the pandemic
MB Subba記者、Kuensel、2021年8月13日(金)
https://kuenselonline.com/csi-record-shrinks-during-the-pandemic/
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【抄訳】
小規模零細産業(CSI)の登録企業数は、経済成長に向けた様々なイニシアチブにもかかわらず、昨年から今年にかけて数が減った。

「CSI報告書2020-21」によると、6月末現在、国内には20,582の認可CSI企業があり、90,000人以上の雇用を生み出している。前年同月末時点で、認可CSI企業数は21,813だった。しかし、当局は、すべてがオンライン認可更新システムを使用できるわけではなく、多くの事業者が新しい免許を申請できなかったため、新型コロナウィルス感染拡大に伴う更新の遅れが原因である可能性があると説明している。

ロクナート・シャルマ経済相は、免許更新されなかった可能性のある事業者は、有効期限が切れた日から6カ月以内に更新しなければ免許は無効になると述べた。 6月末時点で反映された免許数は、有効な免許のみ集計した結果だという。CSIの事業者数は8月11日時点で21,619にまで増加したという。これは、昨年6月に比べてまだ200社近く少ない。

一部の観測筋によると、パンデミックを含む様々な事情により、損失を被って廃業した事業者がかなりいるという。大臣は、同省が2020年7月から2021年6月までに合計3,998の事業者に新たな免許を発行したと述べる。これには1,132の認可された零細事業者は含まれておらず、その数は実質的に減少していないと付け加えた。

生産・製造、サービス、建設の3つのセクターに分類されるCSIは、国内の全事業者の約95%を占めている。CSI全体の80%をサービス部門が占め、続いて生産・製造部門が12%、建設部門が8%と続く。報告書は、有効なビジネス環境の構築が国内のCSIの力強い成長を促す前提条件だと指摘する。

同省は今年5月、意欲的な起業家がCSI新規登録申請をオンラインで済ませられる、「先ずは許可して後から規制する」アプローチを採用した。既存の事業者も、オンライン登録システムへの切替えが奨励された。同省によると、イニシアチブの一環として、775の零細規模の事業者がオンライン登録サービスを利用し、そのうち460事業者は現在の免許体制からオンライン登録システムに移行した既存零細企業だったという。

報告書によると、CSI事業者の大多数は、必要なビジネススキルを欠いていると指摘。「これは主に、能力開発に投資するためのリソースが限られているか、あるいはその重要性を認識していないという現実によるものである」と指摘する。そのような赤字は、CSIセクターの生産性の低さと成長力欠如の主な理由となっているという。

スタートアップセンター設立は、この問題に取り組むために政府が開始したイニシアチブの1つである。市場へのアクセスは、CSIが直面する課題の1つとして指摘されている。地理的な条件と国際標準を満たす製品のラインナップは限定的で、製品を国際市場に投入する際の障壁の一部だという。

中小零細産業政策2012は2019年に改訂され、新しい小規模零細産業政策として導入されている。

この記事は、毎年経済省小規模零細企業局(DCSI)がこの時期に発表しているCSI報告書の公表のタイミングで取り上げられている。コロナ禍で登録事業者数が減るのはある程度は予想もできただろうから、意外性はあまり感じられない記事の内容だ。

それでもこの記事を取り上げたかったのは、この記事が、経済省の発表をそのまま鵜呑みにして書かれているからである。オンライン免許登録システムの浸透が遅れているというが、導入したのが集計の1ヵ月前だったという点は、やっつけ感が拭えない。

それに、コロナ禍で廃業に追い込まれた事業者がいたのは事実だろう。2年ぶりにブータンに来てみて、以前は営業していた事業所が閉まっていたというところは何カ所か見た。感覚的に言って、事業廃業の事例はそこそこ多かったに違いない。そこは、やっぱり認めて欲しかった気がする。

事業者が、なぜ「やっていけない」と判断したのかについても、企業自身の能力的な問題という経済省側の解釈が必ずしも実態を示しているとは限らない。

政府の政策が小規模零細企業に対して厳しいとの声も耳にした。例えば、生活必需品の国内供給を確保するために取られた関税引下げ措置の影響で、隣国からの入ってくる安い輸入品と、国内産品が競争できなくなってしまっているという。元々内国産のものの方が高いと言われていた中で、さらに価格競争力を失うような措置だったとの指摘がある。

また、この記事ではあまりスタートアップセンターの成果について詳述されてはいない。3年前に発足したスタートアップセンターは、僕が前回いた頃には入居者もパラパラと入り始めていたが、この2年間で入れ替わりが激しい。入居期間2年間というのが厳格に適用されていて、優遇措置なしでフラットな土俵で戦っていける能力も十分付けられていない状態でも放り出されてしまったという入居者もいる。また、実際に入居者が入っている状態で見てみると、フロア配置がよく考えられていたと思えないところもある。もっと沢山の入居者を入れて、事業者間で交流させる機会を増やすとか、やり方があった筈だ。

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こういう記事を書く場合、小規模零細事業者側の声、特に、廃業を余儀なくされた事業者の声も拾って記事に反映させた方がバランスのよい報道になるのではないだろうか。確かに、事業者側にも甘さが見え隠れすることはある。海外市場へのアクセスは、確かによく問題点として指摘の声が上がるが、事業者側の認識も甘いところはあるが、その事業者の認識の甘さを指摘している政府にも、海外市場での消費者の選好について、情報を拾ってきて事業者に伝え、海外市場向け商品開発を一緒に進めていく姿勢が求められる。

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