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再読『卒業』『こころのつづき』 [読書日記]

卒業 (新潮文庫)

卒業 (新潮文庫)

  • 作者: 清, 重松
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/11/28
  • メディア: 文庫

初読:2006年8月27日
再読:2018年12月10日
既に過去に二度紹介している本を再びブログで書くにあたって、過去2回は何をどう書いたのかを振り返ってみた。初読から15年経過しているが、主に書いていたのは父の老いと絡めて読んでいたのに気づいた。重松作品を読んでいると、どうしても父との関係を絡めて感想を述べる傾向が強い気がするが、時間の経過とともに進む父の衰えを、僕がつたない文章ながらもそれなりに書き留めてきていたのを改めて感じる。

その父が今年3月に他界してしまい、本書収録の「あおげば尊し」も、僕にとっては「ささる」作品とは言えなくなってきた気がする。この本に収録された中編4編は、僕的には重松作品史上かなり上位に来る秀作揃いだと思うが、今まで「あおげば尊し」がいいと言ってた僕も、今回はむしろ、「まゆみのマーチ」や「追伸」で描かれている、子を思う母の姿の方に胸を打たれた。

今回の海外駐在を引き受けるにあたっての最大の懸念は父の容態だったが、その父が逝った今となっては、後顧の憂いなく業務に専念できるかどうかは、故郷で1人暮らす母の様子にかかっていると思う。母も今年はじめには80歳になっており、そして父を見送り、今でも時々僕から電話を入れるようにはしているが、ちょっと元気を失くしているのではないかと気になることもある。

もう1つの視点は、妻の我が子に対する思いである。うちは一番下の息子も今年が大学受験で、父親の感覚としてはもう大人で、自分の進路は自分で考えて、自分で決めさせるべきだと僕ば思っているが、そこはどうやら妻と相当違うらしい。我が子の育て方については妻とはこれまでもたびたび議論してきて、特に子どもの進路選択に親がどこまで関わるべきなのかは、大きな論点となってきた。

妻がなぜそこまで気にかけるのか、僕には今でも理解できていない。でも、これから20年、30年が経過して、我が子どもたちが僕らを見送らねばならない年齢に達した時、母がどれだけ自分たちのことを気遣ってくれていたのか、どれだけ話し相手、相談相手になってくれていたのかに、思いをはせて欲しい。とっとと一本立ちしろと言うだけのオヤジとの間には、そういう思い出を沢山作るのは難しい。

◆◆◆◆

こころのつづき (角川文庫)

こころのつづき (角川文庫)

  • 作者: 森 浩美
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2013/02/07
  • メディア: Kindle版

初読:2018年11月14日
7月の読書は基本的に既読の作品を再度味わってみるというのが多かったが、おそらく今後もしばらくは続けると思う。森浩美作品も僕はわりとよく読んでいる方だが、何度も言う通り、短編が多くて、読み進めやすい反面、印象にも残りづらく、1冊の中でも、読み進めるにつれて前に読んだ収録作品のことを既に忘れているということが多い。題材としても、日常生活の中でもほんの1日か2日程度の短時間のエピソードを切り取って描かれているものが多いので、特に重松清の最高傑作(だと僕が勝手に言っている『卒業』)の中編作品を読んだすぐ後に森浩美の短編を読むと、やっぱりインパクトに欠ける印象を抱いてしまう。

ただ、多くの評者が書かれているが、本書の収録8編は、何らかの形で関連付けられて並べられているらしい。最初の「ひかりのひみつ」と最後の「お日さまに休息を」は同じ女性が登場するので関連性が明らかなのだが、どうやら他の作品にもそういう「仕掛け」がいくつかあるらしい。それをもって本書のタイトルが『こころのつづき』となっているのではないかと思われる。

残念ながら、僕は今回はイッキ読みではなかった。それなりに仕事で忙しかったこともあって、短編であっても読み進めるのに1週間近くを費やした。また、そういう関連性が隠されていたことに最後の最後になって気付いたので、どこがそれだったのか、意識して読んでなかったので発見もほとんどできなかった。(長野・伊奈や調布・深大寺あたりがヒントになっているのだろうか…)

もし次回再々読の機会があったら、このブログ記事を最初に読み返しておいて、それから読み始めるようにしたい。


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