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『チーム・オベリベリ』 [読書日記]

チーム・オベリベリ

チーム・オベリベリ

  • 作者: 乃南アサ
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2020/07/01
  • メディア: Kindle版
内容(「BOOK」データベースより)
約140年前、その女性は、北海道十勝の原野へ渡った。オベリベリ―和人たちによって「帯広」とされた新天地。明治の先進教育を受けた彼女は、いかに生き抜こうとしたのか。開拓に身を投じた実在の若者たちを基にした、著者が初めて挑む長篇リアル・フィクション。
【コミセン図書室】
日課にしていた早朝ウォーキングで聴いていた、NHKラジオ「マイあさ」の朝5時台のコーナー、地域の話題を届ける「マイあさだより」で、帯広の方がレポートされていた回があった。帯広市内の書店でベストセラーになっている1冊の本のことを話題にされていた。それが、帯広地方の開拓初期の歴史を描いた乃南アサの超長編小説だった。

発刊から半年。近くの市立図書館にはまだ入荷しておらず、ようやく見つけたのは近所のコミセンの新着本のコーナーだった。660頁もある超大作だったので、一瞬怖気づいたが、東京との緊急事態宣言も3月21日で解除され、早々に里帰りを考えていたので、帰省中なら読み進められるだろうと考え、借りることにした。

3月26日(金)、当初の計画よりも1日前倒しで里帰りを実行することにした。施設に入っている父の具合が良くないので、市民病院で診察を受けることになったのだ。25日の結果を母から聞いたところ、以前から経過観察中だった前立腺のがんが全身に転移していたことがわかったという。翌26日も市民病院で医師の所見を聞くというので、お昼前に最寄り駅に着くと、病院に直行した。その日は施設の送迎バスで施設に戻り、父を置いて母とともに実家に帰宅した。

3月27日(土)、28日(日)、母の変わらぬ日常に付き合った。土曜日は畑仕事、日曜日は土砂降りの雨の中、地産地消ショップや道の駅に出荷する甘夏のパッキングやぼかし作りを手伝った。朝から働いてヘトヘトで、それでも土曜夕方は末弟とともに父の様子を見に行った。2人で父の手を握った。同じく日曜夕方は母が1人で父の様子を見に行った。夕食の時間で、食欲もあったようで、母は安心して帰って来た。

29日(月)、介護施設と父の一時帰宅の日程について相談し、今週は難しいということがわかった。それなら予定通り31日(水)には東京にいったん戻ろうと考えた。午後僕はこの帰省中唯一の仕事で大垣市の産業振興施設にご挨拶で訪ね、その帰りに少し衣類の買い物をしてから帰宅した。その間、母は父のことが気になり、施設に出向いた。ずっと寝込んでいて、点滴を打たれていたのに驚き、母は父の手を握った。それに対して父はもう片方の手も動かし、両手で母の手を握り返そうと試みたそうである。点滴中だったから、スタッフさんに制止されたのだが。

30日(火)朝、今後の一時帰宅の日程について母と相談していたところに、施設から電話が。早朝、父が息を引き取っていたという一報だった。

それからは怒涛の3日間であった。葬儀社への一報と遺体の引き取り。お寺への連絡、家族、親戚への連絡。葬儀社と日程を決める。引きも切らぬ電話とLINE等のメッセージ。会社にも連絡し、献花と弔電を辞退する旨伝える。僕がもう1つプロボノで役員を務めている財団法人の方は、お悔やみの言葉もなかったので驚いたが。弔問客も次々とご訪問下さった。父が我が家で過ごす最後の夜だった。

31日(水)、14時の湯灌、16時の出棺、18時から通夜。その後、親族を家に戻し、喪主の僕はそのまま斎場の親族控室で父のお棺とともに一夜を過ごした。

4月1日(木)、10時から告別式、11時に出棺、12時火葬、13時収骨、そして14時から斎場での初七日の法要。自宅に戻った後は、資金繰りについての計算、重要書類の家探し等が続いた。もうフラフラだ。

そんな慌ただしさの中で、僕は少しの空いた時間を利用して、『チーム・オベリベリ』を読み進めた。いちばん読めたのは斎場で父と2人で過ごした一夜であった。なかなか眠りにつけず、読んではうたた寝し、目覚めてまた読んでうたた寝する、そんな繰り返しで一夜を過ごした。読了したのは告別式を終えた夜、弟家族が帰り、その日の予定がほぼほぼ終わって自室に1人戻った僕は、90分ほどかけて、残りの60頁を読み切った。印象に残る読書体験となった。

内容についてはあまり触れていないが、北海道開拓の初期の苦闘を紹介した小説というのは初めてなので、すごく新鮮だった。こうした慌ただしい数日でなければ、おそらく2,3日で読み切っていただろう。これ読んで帯広を訪ねると、味わい深い滞在になるに違いない。

さて、実家での滞在が思わぬ形で延びたため、本書をコミセン図書室に返却するのが期限オーバーになってしまいそうだ。昨年11月の入荷以降、すでに8回もの貸出が行われている人気の1冊、本当に申し訳ありません。


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