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『アパレルの終焉と再生』 [シルク・コットン]

アパレルの終焉と再生 (朝日新書)

アパレルの終焉と再生 (朝日新書)

  • 作者: 小島 健輔
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2020/12/11
  • メディア: 新書
内容紹介
アパレル業界における、過剰に供給して過半が売れ残る「ギャンブルビジネス」は死に体だ。シーズン毎にトレンドを仕掛けて買い替えを煽り、メディアと結託して「ブランド神話」を創造し煽ったファッションシステムの手法はもう通用しない。新型コロナの収束がみえず、消費者の「エシカル(倫理)」志向が高まり、アパレルは歴史的な転換期を迎えている。衣料品の役割が大変容した今、生き残りをかけた業界の実態に、ファッションマーケティングの第一人者が迫る。
【購入】
昨年12月、年末年始を東京で過ごすことが確定してしまった後、ならば休日読書でもしようかと仕事納めの日の帰り道で本屋さんに立ち寄り、購入してしまった新書のうちの1冊。同時期に図書館でも数冊の本を借りてきてしまい、結局購入した積読書籍はそのまま後回しになってしまった。

マイカテゴリー「シルク・コットン」で最近取り上げている書籍は、たいていがこの種の業界分析で、本書もその点ではデジャブ感のある論調だった。新型コロナウィルス感染発生後に出た本なので、コロナの影響に言及がある点は付加価値だといえるが、もともとはいろいろなメディアに著者が行ってきた寄稿をドッキングさせて作られた本のようで、新書サイズなのに、プロローグ、エピローグを除いても8章もあり、中には10~15頁しか分量のない章もあった。繰り返すが、新書サイズなのにだ。

こうして、一部の章は分析も深くない。特に、僕にとって最も関心があった「エシカル」に関しては、ちょっと触れられているだけであっという間に終わってしまった。でも、全部そうかというとそういうわけじゃない。ファッションマーケティングのコンサルタントをなさっているだけに、他書よりも分析内容が深いのではないかと感じる箇所もあった。多分、その分析力が本書の付加価値なのだろう。

でも、それがあだになっているようにも感じる。なにせ、カタカナの業界用語や略語が多い。もちろん一部の用語は※マークを付して各節の末尾に解説もされているのだけれど、初出でそれをやられた後、なんの補足もなく再掲が頻繁になされるから、どうせなら用語の解説は本文中でやって、巻末にまとめて用語集か何かを付けてくれたらいいのにと思ってしまった。そうして※が付されているケースはいいが、解説もなく使われている用語も目立ち、そんなの知ってて当たり前だと言わんばかりの論述が多くて、一般読者向けになっていない。業界の人ならともかく、僕のような一般読者にはつらい。

しかも、なんとなく感じるのは上から目線。それで今の業界にダメ出しをしている。僕はそこに違和感を感じる。この方は「ファッション流通ストラテジスト/コンサルタント」でしょ?今この業界が体たらくだというのなら、その責任の一端はコンサルタントにもあるように思う。少なくとも、こういう今の衰退トレンドに対して、再生の取組みに実際に自分は一枚噛んで、こんな成果もあげていますよというケースがあるのであれば、そういうのも紹介してほしかった。その方が、論調に説得力が増す。

タイトルで言われているほど、「再生」の部分が感じられる本にはなっていないと思う。もし、「エシカル」の部分がそれだというのであれば、十数頁という短い章で済ませるのではなく、もっと書き込んでも良かったのではないだろうか。また、リモートワークが当たり前になってきて、スーツ・ネクタイ姿での出勤が不要になってきて、より近所でのショッピングで済ませる消費者が増えてきているというのもひょっとしたら「再生」の方向性といえるのかもしれないが、それならそれで注目している店舗とかがあれば紹介してみて欲しかった。

最後の最後に、「DXでリードタイムの劇的短縮と需給ギャップ解消」という節が第8章で出てくるが、ここは面白かったかな。企画段階のCAD、3Dモデリング、生産段階のCAMに初めて言及されるが、この部分はもっと深く知りたいと思った。

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