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『場のマネジメント 実践技術』 [仕事の小ネタ]

場のマネジメント 実践技術

場のマネジメント 実践技術

  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2010/12/03
  • メディア: 単行本
内容紹介
「個人商店化」が進み、個々人の気づきが消え入り、働く楽しさのない、「職」があっても「場」がない「職場」に、どうすれば「場」を取り戻すことができるのか。場のマネジメントとは、カネ、感情、情報が相互作用を起こしている職「場」を管理する理論。場のマネジメントの神は細部に宿っている。大きく場の全体をとらえる一方で、その場の中では小さなディテールに注意を払って、場のメンバーの間の相互作用とそこから生まれる関係に化学反応を起こそうとする作業である。本書では、「場の理論」創始者とコンサルタントが協働して、実践の技術を解説する。
【市立図書館(MI)】
読書メーターに長らく「読みたい本」リストに滞留していた在庫を少し減らそうと思い立ち、市立図書館で借りた1冊。伊丹敬之先生の「場のマネジメント」については、2013年頃に興味あって『場の論理とマネジメント』を読んでブログで紹介したことがある。当時の記事を読み返すと、それなりに書き込んでおり、「仕事の現場で、仕事をするプロセス自体の中で、人々の間で情報が自然に交換・共有され、人々が相互に心理的に刺激を与え合うように、どのようしたらできるか」という著者の問題意識には共感し、その後自分が管理職になった時にはそれなりに意識して実践しようとしてきた内容であった。

今回ご紹介するのはその実践編という位置づけの本で、『場の論理とマネジメント』と同じ頃に「読みたい本」でマークしておいて、そのまま7年間も放置してしまったものだ。繰り返しになるが僕はその後著者の論点をそれなりに実践したつもりだが、今や管理職からは身を引き、今いる職場では傍観者として他者が進める組織マネジメントを、「場のマネジメント」というレンズで見ているだけだ。

そうした立場でいると、なんだかなぁと思うことが多い。若手の社員は僕らのようなシニアの社員に訊こうともせず、僕らが知っていることがわからずにあたふたしている姿を度々目にする。それは訊かれれば答えるけれど、そういう展開にはならない。僕らがどのようなキャリアを歩んできてここにいるのか、お互いに知らない。誰が何を知っているのかがわからないのだ。

新型コロナウィルス感染拡大という状況がなければ、職場の歓送迎会も部単位とか課単位で開かれ、Who's Whoを知る機会はあったのかもしれないが、そういうのは今は行われていない。異動してきた途端に在宅勤務だったから、仕事の標準作業手順を確認するのに周囲の人にも訊けず、新参者にはエライ手間がかかった。そんな形で新しい職場での仕事が始まっちゃったもので、今の職場に関しては、チームとしての一体感をあまり感じることもできないのである。

そんな状況だから、本書が出た11年前には有効だった手法が、今も有効かどうかは保証がないと思う。本書の中でも執筆陣はフリーアドレスに対して否定的な見解を示しているが、今はフリーアドレスに加えてリモートワークが当たり前になってきており、皆が職場に出てきて対面で「ワイガヤ」しながら何かを一緒に進めるということが少なくなった。オンラインでワイガヤができないわけではないものの、14インチ程度のラップトップの画面越しに、職場と同じかそれ以上の生産性を確保しろと言われても無理がある。仕事はもっと五感をフル稼働させてやるものだと僕は思っている。また、本書でも推奨されている「飲み会」も、今のご時世、そうそうできるものでもない。

おそらく本書で推奨されている実践法は、現在の職場の状況を踏まえて見直しが必要で、それでもその実践法を推奨するなら、著者や執筆陣は、今のような状況においても有効だということを実証する必要があると思う。

本書は、伊丹先生が直接書かれているのは最終章のみで、あとは日本能率協会コンサルティングというコンサルタントが、知識集約型の職場を活性化し、生産性を高める手法として自らのブラッシュアップしてきた「KI(Knowledge intensive staff Innovation plan」という手法を宣伝するために書かれたのだろう。

組織の中の人々は、ヒエラルキーのタテ方向の命令やコントロールに敏感に動いているばかりでなく、ヨコを見て動いてもいる。ヨコとは、仕事の場の同僚であり、関係部署の人たちである。

 ヨコを見るとは、他人の動きや言動から情報を読んでいることであり、自己評価を他人との比較で自然に行なっていることであり、他人の目が気になって一種の自己牽制や自己発奮をしているということである。

 つまり、組織の中で人々はヨコの相互作用を大量にしている。情報の交換や心理的な共振・反感といったさまざまな相互作用である。そして、仕事の場には常に、カネ、情報、感情という三つのものが同時に流れている。それが、人々に相互作用をさせる原因でもあるし、人々の相互作用の結果として三つのものが流れてもいる。

 その相互作用、その結果としての情報と感情の流れを、組織全体のマネジメントに効果的に使わない手はない。しかし、ヨコの相互作用は組織の人々が半ば自律的あるいは自然発生的に行なっているものだから、タテの命令やコントロールでそれを活発化するというやり方にはなじまない。(中略)ヨコの相互作用の容れ物(つまり人々の間の場)をつくるという工夫が中心になる。それが、場のマネジメントである。ヨコの相互作用が起きやすい場をつくるマネジメントである。

 みんなで集まる、会議で白熱した議論をする、激論が終わればノーサイドで飲みに行く、すべてヨコの相互作用が活発になるようにしかけることもしばしば行なわれる。大部屋で異なった分野の連中が一緒に仕事をすれば、ついつい情報交換が起きる。たばこ部屋ももうければ、そこに集まった連中の間に仲間意識と気楽な情報交換が生まれる。

 場のマネジメントとは、(中略)人々の間の相互作用の容れ物としての場を作り出すようにマネジメント側が努力し、その中で起きる半ば自律的な情報と心理の相互作用をうまく導くことによって、組織全体の協働の成果をたかめようとするマネジメントの考え方である。(pp.19-20)

ただ、読み進めると何度も同じことが繰り返し述べられていて、退屈にもなった。コロナ禍での有効性に多少疑念を抱いているから、こちらも読むのに身が入っていないので、余計にしっくりこない。また、相互作用を生み出すための仕掛けをここまで定型化して、そのために時間を割いて集まらなければならないというのは、それ自体が結構な負担ではないのかという疑問が最後まで拭えなかった。

このやり方は確かに有効なのかもしれない。しかし、このやり方が唯一絶対なのかといえばそうでもないと思う。職場の中でお互いがお互いのことを知る仕掛け自体は必要だと思うけれど、そのためにミーティングが追加で必要だと言われてしまうと納得感がない。

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