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『チョンキンマンションのボスは知っている』 [読書日記]

チョンキンマンションのボスは知っている  アングラ経済の人類学

チョンキンマンションのボスは知っている アングラ経済の人類学

  • 作者: 小川 さやか
  • 出版社/メーカー: 春秋社
  • 発売日: 2019/12/15
  • メディア: Kindle版
内容紹介
香港のタンザニア人ビジネスマンの生活は、日本の常識から見れば「まさか!」の連続。交易人、難民、裏稼業に勤しむ者も巻きこんだ互助組合、SNSによる独自のシェア経済…。既存の制度にみじんも期待しない人々が見出した、合理的で可能性に満ちた有り様とは。閉塞した日本の状況を打破するヒントに満ちた一冊。
【コミセン図書室】
いやはや、この1週間はかなりの綱渡りだった。在宅勤務と通勤日の比率が逆転し、週3回出勤した。しかも残業もした。何がどうしてそうなったのか。1つには今週自分の仕事上では大きなイベントがあってその準備に追われたこともあるし、年度末が近いのに思い付きのようにイレギュラーな活動を仕掛けてその経理処理をどうやって行うのか調整に手間取ったというのもある。さらには、仕事で関係のある人々が僕と同じように動いてくれるわけではなく、在宅勤務取得もバラバラなので、とにかく連携が悪い。

そんなわけで、読書のペースも鈍り気味で、ブログの更新も1週間まったく行えなかった。

でも、さすがにコミセンで借りてた本の返却日当日となってしまった。昨夜も残業してから読書をする気力はなく、返却日当日早朝に起床して、残りの100ページを一気に読み進め、なんとか帳尻を合わせた。

こんな読み方をしてしまい、本書の著者には申し訳ない。本書は、じっくり読んだらもっと面白かったに違いないが、舞台は香港で登場人物はタンザニア人たちなので、僕自身の仕事や関心との接点領域が少ないことから、なかばアリバイ作りのような読み方にとどまってしまった。

「閉塞した日本の状況を打破するヒントに満ちた」は言い過ぎだ。ここで登場する在香港タンザニア人のような生き方を日本人ができるのかといったら、そう簡単にはできない。中国・深圳とビジネスをやりそうな人にとっては香港重慶大廈の1、2階の電気街の活況の背景を知るのにはいいルポだと思う。また、こうしたことをやっているのはタンザニア人だけではないようだから、海外に駐在する人は、各々の国の電気街や携帯ショップで売られている廉価のケータイや電化製品、日本や韓国製の中古車が、外国でどう調達されてその国に持ち込まれているのか、またそのための代金決済はどのように行われるのかなど、一度は皆さん思ったことがあるに違いない疑問に対して、1つのヒントは確かに提供してくれるだろう。

「日本の状況の打破」にはならないだろうが、現地を知る手がかりの1つとして、中国や香港におけるタンザニア人のビジネス実態は参考にはさせてもらいたい。

香港も昨年の民主化運動弾圧騒ぎ以来、居心地のよい場所ではなくなってきたのではないかと思ったりもするが、著者が活写したタンザニア人ビジネスマンたちが、今も影響を受けず、ゆるくもたくましく商才を発揮して暮らしておられることを祈ってやまない。

著者の前著『「その日暮らし」の人類学』の時にも思ったが、この著者、文章がうまい。学術研究的な要素とルポライター的な要素をミックスさせて、学術的価値のありそうなことを、読みやすいレポートにまとめられている。(学術的な要素が残るので、少しだけ文章は固いが。)人類学って面白い学問だなというのを感じさせてくれる著者のフィールドワークだ。

◆◆◆◆◆

ところで、本書のキーワードの1つがサブタイトルにもなっている「人類学」だから、読みながら思い出した話がある。2017年頃、王立ブータン大学の言語文化カレッジ(CLCS)では、2019年度に人類学博士課程を開設するとアナウンスしていたと記憶しているが、今CLCSのHPを見ても、実際にアドミッションを開始したという情報は載っていない。いかに道路状況が良くなって首都からCLCSまで5時間程度で行けるようになったからといって、通学必須ならとても通えないなと思っていたが、今のコロナ禍の状況になって、遠隔学習モードも組み合わせるというのであれば、外国人でも履修の道はあるのかなと思ったりもした。

"PhD programme in Anthropology planned for 2019" CLCS、2017年10月25日
https://www.clcs.edu.bt/?p=1975

"RUB to offer PhD in Anthropology by 2020" BBS、2017年10月18日
http://www.bbs.bt/news/?p=82743
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