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『カンパニー』 [読書日記]

カンパニー(新潮文庫)

カンパニー(新潮文庫)

  • 作者: 伊吹有喜
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/05/22
  • メディア: Kindle版
内容(「BOOK」データベースより)
合併、社名変更、グローバル化。老舗製薬会社の改革路線から取り残された47歳の総務課長・青柳と、選手に電撃引退された若手トレーナーの由衣。二人に下された業務命令は、世界的プリンシパル・高野が踊る冠公演「白鳥の湖」を成功させること。主役交代、高野の叛乱、売れ残ったチケット。数々の困難を乗り越えて、本当に幕は開くのか―?人生を取り戻す情熱と再生の物語。
【コミセン図書室】
NHK-BSで現在放映中のドラマ『カンパニー~逆転のスワン』が気になり、いずれ読もうと思っていた原作。伊吹有喜作品もここのところ月1冊は読んでる感じで、多作の作家さんじゃないから新たなマイカテゴリーを立てるほどのものではまだないものの、割と年齢が近い40~50代のオジサンを主役級で登場させている作品が多くて、僕としては好きな作風だ。

テレビドラマが気になったのは、イノッチが主演だというだけじゃなく、朝ドラ『エール』の御手洗ティーチャー(古川雄大)がダンサーとして出演しているのを知ったからでもある。但し、日曜夜22時からのドラマは、同時刻には就寝するようにしている僕にはちょっと放映時間が遅く(TBSの『半沢直樹』などとはその点が違う)、どうしても見られない。

録画することもなく、ズルズルと週末を過ごして今日に至っているが、さすがにこの週末は本作品のクライマックスともいえる敷島バレエ団の12月公演が描かれるので、見逃すわけにはいかない。今だからちゃんと原作読んでおこうと思い、この週末に読み進めることにした。

伊吹作品って、「逆転満塁ホームラン」のようなスカッとした展開ではないものの、オジサンが小さくても人生をやり直すきっかけを与えるような展開の作品が多いような気がする。『ミッドナイト・バス』然り、『四十九日のレシピ』然りだ。すごい爽快感は味わえないけれど、読んでいて静かな温かさを感じさせてくれるような作品だ。それに、本作品の青柳は、会社の中での役どころで僕と被っているところが相当大きく、余計に他人事とは感じづらかった。

僕はバレエもバレエ団のこともあまり知らないが、バレエはストーリー展開上の1つの切り口であって、登場する青柳や、トレーナー瀬川由衣や、バレエダンサー高野悠や、高崎美波の復活のストーリーとして読むと、これがなかなか面白い。すでに述べた通り、僕は青柳と年齢や境遇が近いので、どうしても青柳の行動や発言を自分の日常に投射させて読んでしまうが、そうすると僕はもうちょっと頑張れるはずだなと思うことができた。

特に、今週は新規事業の社内公募の二次審査があり、僕もプレゼンに臨んだ。「自分はこれで食っていくんだ」という熱意を込めて、2年連続の二次選考進出だった。採用されるかどうか、結果は1か月後に発表される予定である。自分はこれで食っていくのだから、採否の結果を聞くまでもなく、今から始められることは始めてしまおうと思い、その第一弾をすでに今週末に始めてしまった。自分自身がその第一歩を踏み出したところだったから、青柳の復活ストーリーには共感するところが多かった。

ただ、妻の悦子さんの設定には相当に違和感があった。作品は青柳が妻から突然三下り半を突き付けられるところから始まるが、妻が娘を連れて家を突然出て行ってしまった後の青柳の仕事ぶりが周囲の皆から好感を持たれるものであっただけに、それ以前の彼のどこがどう妻としては許せなかったのか、イマイチどころか相当に納得感がない。カンパニーの面々に対する青柳の接し方が誠実であるだけに、その青柳に愛想をつかした妻のその後の迷走ぶりが対照的過ぎて、どうにも受け入れられなかった。

ちなみにストーリーの舞台は東京・調布周辺。バレエ団の練習場所は深大寺付近、ダンサーの多くは調布駅周辺のコンビニでバイトして生計を確保しながら稽古に励んでいるという。ご近所在住者としては、どんな人がコンビニで働いているのか、ちょっと注意しながら見てみたいと思う。

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