『工夫の連続』 [仕事の小ネタ]
内容紹介【購入】
視点を変えるだけで、あらゆるものは素材になる。ゼロから考えずに、すでにあるものをハックする方法を獲得しよう。まわりの環境を変える工夫を身につければ、世界はより豊かで楽しいものになる! 自由に形を考えられるフルーツ・ボウルから駅の階段を使った劇場まで、さまざまなスケールのものを自らの手で作り、考えるための画期的なDIYマニュアル。ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展への出展などで注目を浴びる建築家、元木大輔による初の著書!
フラッと立ち寄った最寄り駅近くの書店で、それも普段ならあまり歩かないような芸術コーナーに、表紙を前面にして陳列されていたその本。「工夫の連続」という、ちょっと奇異なタイトルもさることながら、表紙のオビに載っていた、街で見かける道路脇のガードレールにちょいと引っ掛ける折りたたみベンチのイラストに目が行った。気になってページをパラパラめくってみると、そうした日常生活でよく見かける周囲の環境をちょっと変える工夫が、イラスト入りでいくつも紹介されている。しかも、使った材料と寸法に、制作プロセスまでイラスト表示だ。
これは面白い。即日というわけにはいかなかったけれど、後日またその本屋に立ち寄り、購入。買ってみて気付いたのだけれど、この本、物理的にもちょっとした工夫がほどこされており、どこのページを開いても、重しを置かなくてもパッと開いた状態で机の上に放置できる。なんでなんだろうと思って表紙カバーを脱がせてみると、なんと背表紙の部分の補強がない。DIYの作業をやりながらちょいちょい目をやり参考にする、そんな使い方にも本書は向いているように思う。
デザインとは「何かをよりよくする工夫そのもの」だと著者は言う。そして、作品に「完成というのはない」と何度か強調されている。1つの作品を制作しても、そこからのバリエーションをいろいろ考えたり、また新たな用途を思い付いてさらなる作品につなげて行ったりと、そのプロセスも所々文章で解説を挟んでおられる。その発想がどのようにして生まれたのか、制作過程で何を考えたのか、そういう思考の訓練をしていない僕のような読者にはわかりづらい箇所もなかったわけではないが、そうした解説も紹介されている作品群を理解する上では参考になった。
当然、最初は本書にある作品群の制作プロセスをなぞってみるところから始まるのだろうが、読者各々の置かれた状況に応じて、このデザインデータを改編して、その人その人の独自の作品に発展していく―――そうやって増殖していくことを多分著者は期待しているだろうし、そうした光景をイメージするとワクワクする。
今週前半、某大学の先生から依頼されて、学生向けの講師を務めた。もちろんリモートである。僕は自宅からの参加だったが、この際だからと背後にブルーシートを張って仮想背景を使用できるようにしたり、少し工夫してみた。さらに、講義開始15分前、ふと思いついてTinkercadを使ってスマホスタンドをデザインしてみた。実際これを最近購入したデスクトップ3Dプリンターで試作してみたが、フィラメントの消費が早いので、フィラメントを節約できるデザインをまたまた考えてみることになった。こういうのを「工夫の連続」というのだろうか。本書を読んで僕なりのちょっとインスパイアされたのだろうか。
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