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『SDGs――危機の時代の羅針盤』 [持続可能な開発]

SDGs――危機の時代の羅針盤 (岩波新書)

SDGs――危機の時代の羅針盤 (岩波新書)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2020/11/21
  • メディア: 新書
内容(「BOOK」データベースより)
地球の再生能力を超えない持続可能な世界を目指すゴールとターゲット。2030年の期限まで10年を切り、貧困や格差、環境破壊等の慢性的危機に加え、パンデミック危機の今その真価が問われている。日本政府の元交渉官とNGO代表とがSDGsの概要、交渉秘話、実践と展望を紹介する。21世紀を生き抜く知恵の宝庫がここに。
【購入】
年末年始を東京で過ごすことになったため、年末に新書をまとめ買いした。その中の1冊で、昨年夏頃から断続的に続いているSDGsに関するお勉強の一環だ。

僕自身も、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の策定プロセスを横目でウォッチしていた時期があるため、その策定プロセスで日本政府の首席交渉官を務めておられた南大使と、同じく市民社会代表として日本政府への申入れや他国の市民社会組織との連携の先頭に立っておられた稲場氏が、それも共著で本を出されたと知り、是非読んでみたくなった。特に、南大使のSDGs国際交渉回顧録は、僕らのようななかなか国際交渉の場を体験することができない人間にとっては歴史的価値がある文書だと思う。環境分野ではなく、貧困削減レジームの下でミレニアム開発目標(MDGs)の達成に取り組んできた開発協力の業界の人にとっては、待ちに待った1冊であり、そしてSDGsを扱った類書の中で、最もしっくりくる内容なのではないかと思う。

類書の多くは、気候変動対策を特に重視した内容だったり(結果的に貧困削減への取り組みやいわゆる「5つのP」のうちの「平和(Peace)」の文脈ではほとんど何も述べていなかったり)、企業にとってのビジネスチャンスという視点があまりにも前面に出過ぎていて、政府やNGO/NPOの取り組みどころか、地方自治体の取り組みへの言及すら薄かったりして、僕らは何だか「取り残されて」しまった寂寥感を覚えていた。

そんなところに真打ちとして登場された本書は、「いやいやそんなことはない、今でも貧困問題や平和構築は重要なアジェンダだし、民間資金がなかなか向かわない分野では公的な資金の役割も大きい」と勇気づけてくれそうな1冊になっている。思うに、SDGsの解説書は、自分がどういう立場でSDGsと向き合っているのかによって、どれを読んだらいいのかが変わってくる。会社勤めの方にはやっぱりその方々に向いた解説書が存在する。僕らの業界の読者にとっては本書だということなのだろう。

これから何度も引用で用いる可能性が高いので、購入した本書は、読み進めながらマーカーで線を引きまくった。それらをいちいちブログに転記していたら膨大な記事になってしまうのでそれはやらないことにしたい。

とはいえ、ないものねだりの感想を少しだけ述べておく。

これまでSDGsを扱った解説書を何冊か読んできて、どうしても感じてしまうことの1つは、政府やODAの存在感の薄さであり、また市民社会の対応への言及の薄さであった。それを、共著者のお二人がどう見ておられたのかが知りたかった。あまり接点がないところで活動されて来たのではないかと思うが、なんだか政府や市民社会組織が企業とは今でもほとんど接点がなく、交流を避けているのではないかと勘繰りたくもなる。

同様なのは研究者との交流である。僕が最初に読んだ市販のSDGs解説書は、蟹江憲史『SDGs』(中公新書)なのだが、蟹江先生の著書を読んで、先生がMDGs策定の頃から開発アジェンダの変遷を紐解いて書いておられたのを見て、正直なところちょっと意外な気がした。蟹江先生の著書はもう一度読み直してみたいが、特にSDGs首席交渉官を務められていた南大使や外務省との接点については全く言及がなく、ここもここでパラレルに動いておられたような印象がある。共著者のお二人から見られて、蟹江先生のご活動はどのように映っていたのだろうか。ちょっと知りたかった。
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