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『正信偈入門』 [家族]

正信偈入門

正信偈入門

  • 作者: 早島鏡正
  • 出版社/メーカー: 法藏館
  • 発売日: 2019/08/09
  • メディア: 単行本
内容紹介
親鸞が浄土真宗の教えを120句にまとめた「正信念仏偈」について、幅広い仏教研究の成果をもつ著者が読み解き、その肝要を解り易く説く。現代語訳と詳細な語註が付された入門書。
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前回、読書に関する2021年の目標について述べた際、その3つ目の項目として、「わけあって、浄土真宗に関する文献を読む」と書いた。今回はその第1弾。

どんなわけがあったかというと、実家の祖母が2002年に亡くなって後、父が続けてきた勤行を、僕がやることになったからである。祖母の後、父は十数年、朝のお勤めを続けてきた。しかし、70代も後半になると、膝を痛めて正座もすることがままならず、たまに僕らが帰省しても、父がお勤めをしているのを見かけたことが無くなった。歩かなくなったので体重が増え、それで余計に歩けなくなっていった。

その父が、先月中旬、急に具合が悪くなって、一時は寝たきりになった。意識も混濁して、すは認知が始まったかと僕らも観念したことがあった。新型コロナウィルス感染拡大の状況の中、あまり褒められたこととは思えないが、母が1人で老老介護をやって共倒れになるリスクも高まったため、やむにやまれず帰省して、年末年始を父に過ごしてもらえるショートステイ先をなんとか確保し、介護初期の交通整理をしてきた。

時は年末、大掃除の時期である。母からは仏壇の掃除もやらねばならぬと言われ、同じく実家に顔を出してくれた弟とともに、仏壇と仏具の掃除をやった。その際、父には車椅子に乗った状態で監督をしてもらった。

掃除が済めばお勤めだ。『真宗大谷派勤行集』を手に取り、『正信偈』と『和讃』を読誦し、蓮如上人が著したといわれる『御文』を読む。これまで祖母が務め、その後は父が務めてきたリード役は、父が車椅子なのでできない。よって子どもの頃からよく勤行集を読んでいた僕が、その役を務めることになった。

大変だった。

東京の生活で普段仏壇に手を合わせ、勤行集を読んでなかったからというわけではない。祖母や父の後ろに座って、漠然と読んでいただけでは覚えられてなかったことも多く、どう読んだらいいんだかわからなくなるときもあった。『御文』に関しては、手に取ってみて初めてわかったのだが、平仮名ではなくカタカナ表記だった。それに加えて、図らずもこんな形で父から僕に代替わりしたお勤めに、涙が湧いてきた。特に、『御文』の奇数頁の左端が、頁を何度もめくったためにすり減っているのを見ると、祖母や父がこれだけ読み込んできた『御文』を、カタカナだとスラスラ読めない今の自分の情けなさを嘆いた。

ずっと故郷にいられるわけではないが、せめて、里帰りしている間くらいは、勤行集や御文をちゃんと読誦できるようになりたい。勤行集に関しては書かれている意味を理解し、漢字だらけの経文の意味の塊をちゃんと踏まえた上で読めるようになりたい。御文については、カタカナ表記に面食らわないよう、舌慣らしをしておきたい。それが新年の目標で「浄土真宗」と掲げた理由である。

それで読んだ最初の本は、『正信偈』の解説本。おそらく最も近年になって発刊されているもので、第1章に正信偈の抄訳と、個別の用語の解説がなされている。正信偈の入門なので、通常その後に続けて読む『和讃』についてまでは解説されていない。僕が本書を評価できるほどそもそも真宗の教え自体を理解しているわけではないが、なんとなく感じたのは、本書はそもそも仏道に入る人向けの入門書なのではないかということである。「これくらい知ってるだろ」という理解の初期条件が結構高めなので、在家信者の息子がぺーぺーの立場でいきなり読むにはちょっとハードルが高かった。

この後他書を組み合わせて読み、それで少しずつ自分の理解を膨らませて行ったらいいのだろう。

今からちょうど10年前、里帰りした実家の書棚で、同じ著者が共著で書かれた『お経 浄土真宗』という本を見つけ、帰省中に流し読みしたことがある。父も亡くなった祖母からお勤めを引き継いで、今日の僕と同じような心境になって、わらをもすがる思いで読んだ1冊だったのかもしれないなと改めて感じた。

今年はもう少し、お勤めがうまくできるようになりたいと思っている。それが今の父に対する親孝行の1つだと信じて…。
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