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『カイゼン・ジャーニー』 [仕事の小ネタ]

カイゼン・ジャーニー たった1人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで

カイゼン・ジャーニー たった1人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで

  • 出版社/メーカー: 翔泳社
  • 発売日: 2018/02/15
  • メディア: Kindle版

内容(「BOOK」データベースより)
ITエンジニアとしてSIer企業に勤務する江島は、問題だらけのプロジェクト、やる気のない社員たちに嫌気が差していた。そんな中、ある開発者向けイベントに参加したことがきっかけで、まずは自分の仕事から見直していこうと考える。タスクボードや「ふりかえり」などを1人が地道に続けていると、同僚が興味を示したため、今度は2人でカイゼンに取り組んでいく。ここから、チームやクライアントを巻き込んだ、現場の改革がはじまる。チーム内の軋轢、クライアントの無理難題、迫りくるローンチ…。さまざまな困難を乗り越え、江島がたどり着いた「越境する開発」とは。

【市立図書館MI】
この本は発刊当時から話題になっていたが、去年2月に三省堂書店神田本店に行った時にも1階の新刊書/ベストセラー書のコーナーで平積みになっており、一瞬購入したくなったことがある。今から思えば神田・大手町周辺にはソフトウェア開発をやってそうな企業が集積しているエリアだから、神田の書店街でこういうタイプの本の需要がそこそこあるのだろう。

この本が僕が住む市の公立図書館に所蔵されているのを知ったのは1カ月ほど前のこと。少しだけ待たされた後、先月下旬に借りることができた。ざっと読んでみたものの、カタカナや英語の略語が頻出して、読んでいて序盤で嫌気がさしてきた。「カイゼン」という言葉に惹かれて借りてみたものの、内容的にはソフトウェアのアジャイル開発の話で、それをやってない、というかやったこともない僕のような読者には、そもそもその横文字の意味すらわからず、読むのが時間のムダだとすら感じてしまった。

でも、断っておくが、本書の内容が良くないと言っているわけではない。こういう仕事をしていて、こういう横文字を日常職場で使っておられるような読者にとっては、腑に落ちるところが多い良書であろう。そのことはアマゾンでも読書メーターでも、多くの評者がポジティブに評価しているのでわかる。問題は読者である僕自身にあったように思う。

「縁がなかったということで」―――ということなのでしょう。僕は直前に中国の「アドホックモデル」とか「ビルド&フィックスモデル」を活写した本を読んでいて(『プロトタイプシティ』)、その中でウォーターフォールともアジャイルとも異なる開発手法に多少感化されているところがあったので、中国の手法との比較でアジャイル開発の実践を垣間見ることができたという点ではメリットはあったと思う。

ただ、中国の話はハードウェアの話であり、本書はソフトウェアの話。前者におけるアドホックの姿がなんとなくわかった上で後者のアジャイル開発の姿を見ると、ハードかソフトかの違いはあれど、やってることにどれだけの違いがあるのかはちょっとわからなくもなった。ストーリー部分だけサラッと読んで、「ああ、そうですか」というので僕の今回の読書は終わってしまった気がする。

勿論、そうした業界の人と全く付き合いがないわけではないので、彼らが当たり前のように使っている「要件定義」とか「プロダクトバックログ」とかいった言葉が、どういう文脈で用いられていたのかを振り返りながら、「ああ、そいうことだったのか」と理解したところもあった。でも、そうしたところはほんの一部であり、本書の大部分については、「本当にこれはIT業界では当たり前に使われている言葉なのか」という戸惑いの部分が大きい。そうだとしたら、僕らがベンダーと仕事をする際に、相手にどういう役割を務める人がいて、こちらはどういう役割を務めなければならないのかとか、基本的なことを発注する側が学ぶ場がもっと必要なのではないか。

本書で言えば事業会社という方に在籍している僕の立場から言うと、本書のエピローグに出てくる次のような言葉は、我が身に投げかけられた言葉かもと襟を正す必要はあるだろうなと思う。

「理想的な開発を実現するために事業会社に転職したものの、事業会社の中は従来型の開発から変わる気なんてかけらもない。開発はベンダーに丸投げ、しかも、あらかじめスコープを決めきらないと発注は許されない。仮説を立てて検証してアジャイルにサービスつくる、なんて夢のまた夢。絶望だわな」(p.260)

ソフトウェア開発の現場だけで参考になる話ではない示唆も、実は本書にはあるのかもしれないと、エピローグの上記のフレーズを読みながら思ったのだが、今さら気付いても遅い。今すぐそういうレンズで読み直す気持ちにはなれない。

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