『鳥取県の歴史』 [読書日記]
内容(「BOOK」データベースより)
古代から現代まで、地域の歴史を凝縮!通史で読む郷土の歴史。地域で活躍した人物や歴史上の重要事件を、県民の視点で平易に叙述。市町村合併に対応。
なんで今、鳥取県???
そんな疑問もおありかと思う。岐阜県生まれで東京都在住の僕が、未だかつて足を踏み入れたことがない数少ない県の1つ―――だと書こうとしたところ、1992年の夏に島根県多伎町にデュアスロン走りに行った際、行きの夜行バスが蒜山高原SAで停車してたから、夜間に鳥取県内を通過したことはある。でも、意識して鳥取県に行ったというのはなかった。
それが、Go Toトラベルじゃないが、所用で来週鳥取市を訪問することになった。しかも20分のプレゼンをやらねばならない。プレゼンの骨格は既に作ってあるけれど、少しぐらいは地元の要素を調べて織り込んでますよというのを見せた方がいいかと思ったので、急遽市立図書館で借りて、読んでみることにした。
新しい土地を訪ねる時の僕の常套手段は、こうしてその土地の歴史を調べることだ。ついでながら、山川と言えば、定番の「歴史散歩」シリーズも有用なので、来週鳥取入りする時にはガイドブックとして携行しようと思っている。
この県史シリーズに寸評を試みるのも難しいが、こと本書に関しては、編著者が竹島の領有権問題について韓国寄りの見解を明確に示しているため、賛否両論はあるかもしれない。
でも、そこを差し引いても、鳥取入りを前に本書を読んでみて、フレッシュな視点をいただいたと感謝するところもある。
1つめは、たとえ編著者が暗に竹島問題のことを含んでいたのだとしても、次の問題意識には頷かされる。
地域振興に対する県民の内発的エネルギーは、地域の歴史を学ぶところから導き出される。地域の過去を客観的に検証し、先人たちのチャレンジ精神に学び、そこから歴史の教訓を描きだして、現在と未来のためにどのように生かしてゆくかを考えてこそ、歴史の学習は有効な役割を果すことになる。東京中心に国際交流の話を展開していてはダメで、鳥取には鳥取の国際化のあり方があるべきで、そうして視点を鳥取に移して考えないと、今回のプレゼンはしくじりそうだ。これは大きな気付きだったと思う。
だが鳥取県においては、残念ながら歴史の研究も不十分であるし、歴史から学ぶ姿勢が少なすぎるように思われる。たとえば、環日本海交流を中心とする地域の国際化についてである。(p.6)
2つめは、伯耆国が江戸時代には綿花生産が盛んで、「伯州綿」として有名だったという記述。僕が来週プレゼンをやる相手に、インドの綿花生産の話をぶつけてみたら、話がいい方向に展開しないかなという期待を抱かせた。この点は自分のプレゼンの中にもちょっと紛れ込ませようかと思う。
3つめは養蚕なのだが、これは1890年頃から日露戦争(1904年)頃までの間にワッと盛り上がって桑園面積が急増したが、その後は二十世紀梨の果樹園に置き換わっていったらしい。本書には引用はなかったけれど、その置き換わっていくプロセスを、1960年代に経済地理学の研究者で、インドの養蚕村調査の際に1980年代の現地の様子を教えて下さった大迫輝通先生が論文で発表されている。このあたりの話までプレゼンに紛れ込ませるべきかは悩ましいが…。
初めての土地に赴くのに、こういう本を読んでおくのはありだと思います。
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