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『恋に落ちた哲学者』 [読書日記]

恋におちた哲学者 (きゅんきゅんくる!教養 5)

恋におちた哲学者 (きゅんきゅんくる!教養 5)

  • 出版社/メーカー: 東京書籍
  • 発売日: 2013/04/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
男女3人の奇妙な共同生活、
教え子との禁断の恋、
束縛しない契約結婚、
幼少時のトラウマと淫蕩生活、
禁欲的な抑圧の反動、
患者との不倫、
ニーチェ、サルトル、ウィトゲンシュタイン、ハイデガー、ユング、バタイユ。6人の哲学者たちの濃ゆい恋愛を描くオムニバス・コミック。

週末の読書日記は、軟派な題材選択となりますがお許しを―――。

ニーチェやサルトルという哲学者の名前、僕らの世代は、彼らの業績についてはまったくわかってなくても、その名前だけは野坂昭如のサントリーウイスキーのCM(1976年)で覚えた。それが、今の子どもたちは、こういうコミックで覚えてしまうものらしい。時代は変わったなぁ。

そもそもの経緯は、今週木曜日の我が家の食卓。この日の出勤を終えて、英語でのオンラインイベント2時間に、かなりシリアスな業者向けオンライン説明会2時間を傍聴し、さすがに疲れ果てて、僕はその後の事前申し込みをしていた別のオンラインイベント2件を欠席してしまった。19時30分に帰宅して、そのまま晩御飯の食卓についたが、疲れていたこともあって、泡盛のロックで1人晩酌を始めた。

その時、何かの拍子で、高校の社会科科目の構成の話になった。僕らの世代は日本史、世界史、地理、政治経済、倫理社会。少し世代が下がる妻の世代は、公民科目が現代社会、倫理、政治経済の3科目になった。そこで、今の高校社会科では、哲学はどこで教わるのか、ハイデガーやニーチェ、サルトルはどこで取り上げられるのかというのが、食卓にいた妻と僕、高2の次男との間で話題になった。

すると、それを聴いていた大学3年生の娘が、「なんかどこかで聞いたことがある人の名前ね~」と反応し、自室にすぐに戻り、書棚をあさって探してきたのが本書である。2013年4月発刊で、娘がいつ頃この本を購入したのかは知らない。中高と漫画文化研究会で過ごした娘は、BL系の蔵書も隠し持っているらしいが、この手のイケメン男子が出てくる胸キュン系のコミックも豊富に持っている。

そういうところから、ニーチェやサルトルの名前がインプットされているのである。

もちろん、名前を知っているからといって、こうした哲学者の思想や功績まで理解しているわけではない。ましてや本書はこうした哲学者たちの、ちょっと倒錯している恋愛の話を描いている。だから、哲学者の思索や知の到達点ではなく、もっと人間的な生き方の部分がハイライトされ、それが現代女子の頭にインプットされていく。「あ、あの女学生に一目ぼれしてせっせと恋文を送り逢瀬を楽しんだハイデガーね」という覚え方をしている(笑)。

少なくとも、本人たちとは何の関係もない野坂昭如がテレビのCMで歌っているので覚えたというよりも、ニーチェやサルトルの人となりに一歩だけ近づいた覚え方をしているというだけ、今の娘たちの方がエライかもしれない。

はしがきに、本書で取り上げられた哲学者の紹介が、こんなふうにされている。

マルティン・ハイデガー:(既述の通り)
ジャン=ポール・サルトル:相手を束縛しないという契約を交わして浮気を繰り返す作家
フリードリヒ・ニーチェ:有名な音楽家の妻や才女に恋するもまったく相手にされない若き天才
ジョルジュ・バタイユ:肉欲に溺れ脱我の境地をさまよう悦びと引き換えに大切なものを失う図書館司書
ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン:性欲を断ち修行僧のように生きようとするも我執を捨てきれない大富豪の御曹司
カール・グスタフ・ユング:患者を治療しているうちに相手に引き込まれ動揺しまくる繊細な精神分析医

ちなみに、妻子もあったハイデガーの禁断の恋の相手、教え子とは、ハンナ・アーレントでした。にもかかわらず、アーレントの功績について、本書はほとんど述べていません(笑)。一方で、この不倫関係はハイデガーが支配するもので、アーレントはハイデガーが決めたルールにすべて従っていたらしいとまで書かれている。

すごい―――。

こういう覚え方もあるもんなんだな。想定読者が女子なわけで、ハイデガーをイケメンにして描く方が読者受けが良かったんだろうな~。

息抜きにパッと読むにはいいコミックでした。貸してくれた娘に感謝する。

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