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『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』 [読書日記]

「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考

「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考

  • 作者: 末永 幸歩
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2020/02/20
  • メディア: Kindle版
内容紹介
「こんな授業が受けたかった!」
700人超の中高生たちを熱狂させ、大人たちもいま最優先で受けたい「美術」の授業!!
論理もデータもあてにならない時代…20世紀アートを代表する6作品で「アーティストのように考える方法」がわかる!
いま、論理・戦略に基づくアプローチに限界を感じた人たちのあいだで、「知覚」「感性」「直感」などが見直されつつある。本書は、中高生向けの「美術」の授業をベースに、
- 「自分だけのものの見方」で世界を見つめ、
- 「自分なりの答え」を生み出し、
- それによって「新たな問い」を生み出す
という、いわゆる「アート思考」のプロセスをわかりやすく解説した一冊。「自分だけの視点」で物事を見て、「自分なりの答え」をつくりだす考え方を身につけよう!

今からちょうど1年前、山口周『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』を読んでいた。外資系コンサルタントが、欧米のエリートがアート作品に触れるなどして美意識を磨いている、そしてそれが彼らのビジネスのセンスアップにも役立っているということをアピールされていた本である。これ読んで、「それじゃどうやったら美意識は鍛えられるのか」とか、「それは自助努力でなんとかしなきゃいけない話なのか、美意識を持った若者を量産する方法はないのか」とか、「だからどうしろと?」的な疑問が湧いた。でも、さすがにそこまでは書かれてなかったように記憶している。

周囲を見ていても、アーティスト的に物事を考えて仕事につなげている人は少ないように思うし、わけあって今関わっている高校生による問題解決イベントでも、意識高い系で頭もよく舌鋒も鋭い高校生は物事をものすごく真剣に捉えていて、ゲーム的要素を見落としがちなのかなと感じることがある。

つまり、高校生、というか中学生で高校受験に臨むような時期になってくると、受験勉強に追われて、アーティスト的センスを磨くことは後回しにされてしまう。最近は、中学入学すらが受験によるものにもなってきているので、もっと早くからこの実践は後回しにされているかもしれないが、入試があろうがなかろうが、中学に入学してひと息ついている13歳の頃が1つの節目。ここでそういう視点から美術やその他の授業も行われていれば、社会はセンスの良い若者をもっと高い確率で輩出できるようになっていくんじゃないだろうか。

そういう視点で本書は描かれているようだ。著者は大学で美術教育を研究し、中学高校で美術を教えておられる先生でもあるので、本書はご自身が6回の座学授業で何を教えておられるのかというのを中心に述べておられる。これはこれで美術史として読むにはとても面白くて、作品の時代背景を知っておけば、作品の位置付けや作者が描こうとしたものもよく理解でき、美術館や美術展に出かけても、楽しい作品鑑賞の時間が過ごせるようになるに違いない。

しかし、最後の方に来ると、そもそもその作品はアートと言えるのかどうかという問いも出てくる。さらには、

「真のアーティスト」とは「自分の好奇心」や「内発的な関心」からスタートして価値創出をしている人です。好奇心の赴くままに「探究の根」を伸ばすことに熱中しているので、アーティストには明確なゴールは見えていません。(p. 300)

 私は、ここでいうアーティストは、「絵を描いている人」や「ものをつくっている人」であるとはかぎらないと考えています。「斬新なことをする人」だともかぎりません。
 なぜなら、「アートという枠組み」が消え失せたいま、アーティストが生み出す「表現の花」は、いかなる種類のものであってもかまわないからです。
 「自分の趣味・好奇心・疑問」を皮切りに、「自分のものの見方」で世界を見つめ、好奇心に従って探究を進めることで「自分なりの答え」を生み出すことができれば、誰でもアーティストであるといえるからです。(p. 301)

そうなってくると、これを美術の時間でやらねばならない理由は何なのだろうか(笑)。おそらく美術だけを担当する教員であればこうしたアプローチであってもよいだろう。でも、「自分のものの見方」を育むのは、美術だけとも限らない。音楽だって、技術家庭だって、国語だって、ひょっとしたら、数学の解法を考えるのだってそうかもしれないではないか。

本当にここで書かれた取組みを定着させようと思ったら、美術だけではなく、全校的にこういう要素を取り入れた科目運営がされなければならないのではないかなと思えてきた。

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