『貧しい人を助ける理由』 [持続可能な開発]
内容(「BOOK」データベースより)
日本人さえ豊かでいられればそれでいいのか? 金持ち国に住む我々と「遠くの見知らぬ貧しい人」とのつながりが、どれほど密接かつ多岐にわたるのか。金持ち世界に「自国民第一主義」が蔓延する中、その逆風に立ち向かい、「貧しい人を助ける理由」を次々に挙げていく。
この監訳者は今月に入って二度目だな。たまたま偶然だろうけど―――。
この本のことは、発刊された2017年秋の時点で既に知っていた。当時僕は海外駐在だったし、タイトルもベタだったし、さらにB5判のハードカバーで300ページぐらいあるんじゃないかと勝手に思い込んでいて、ずっと読む気になれないでいた。それが、近所の市立図書館に所蔵していることを知り、借りてみたところこれが意外と薄く、しかも訳文も読みやすくて、とてもいい本だと見方を改めることになった。
ベタなタイトルで引いちゃった潜在的読者は多いのではないかと思うが、内容的にはおススメする。特に、「持続可能な開発」の時代だからこそ考えるべき論点が含まれているし、なんでSDGsでことさらに気候変動ばかりが大きく取り上げられているのかも、わかった気がした。
2つめは、援助の役割の相対的低下を論じている点。これも同感で、この論点での深掘りはされていないけれども、貿易や移民受入なども含めた「政策の一貫性」を主張されている点も好感が持てる。援助なんかよりも、貿易の方がよっぽど貧困削減への貢献度が高いと見られているわけだし。ややもすると僕自身も忘れがちな論点だが、米国が綿花に生産補助金を給付しているおかげで、世界の綿花価格が低迷して、インドの綿花栽培農家の自殺問題につながっていく、そんな因果関係もあるかもしれない。
3つめは、僕がこれまでに読んでいた文献が、結構多く引用されていた点。自分の文献選択のセンスも悪くはないなと確認できたのは嬉しい。とはいえ、知らない文献もあったので、それらを中心にこれからも読むようにしたい。もしそういうことを人にしゃべらないといけない仕事を今後やるのであれば…。
ということで、本書は購入して座右に置いておいてもいい本だと判断する。
コメント 0