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『ペスト大流行』 [読書日記]

ペスト大流行: ヨーロッパ中世の崩壊 (岩波新書 黄版 225)

ペスト大流行: ヨーロッパ中世の崩壊 (岩波新書 黄版 225)

  • 作者: 村上 陽一郎
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1983/03/22
  • メディア: 新書
内容紹介
かつてペストの大流行は三千万の人命を奪った。医学から神学まで、社会を揺るがす大パニックの実態。

初刷1983年3月。ってことは、僕が大学1年目を終えた頃の本だ。1936年生まれの科学史の泰斗が書かれた1冊も、発刊から40年近くも経て新型コロナウィルス感染拡大を受けて脚光を浴びるなんて、想像していなかったに違いない。本書でも書かれているけど、ペストは300年に1回は大流行してきているらしい。そのサイクルからいうと、西暦2160年から2210年の間らしい。その頃に本というメディアが未だ存在しているのかどうかはわからないが、その昔にヨーロッパで大流行した黒死病を扱った日本語の文字情報としては、将来も有用がられるに違いない。

歴史から学べとジャレド・ダイアモンドは言っていた。その意味で、その昔ヨーロッパで黒死病流行とともに起きたことは、今の僕たちにも教訓を示してくれていると思う。隔離政策が出てきたのは黒死病がきっかけらしいが、ユダヤ人迫害も起きたらしい。スケープゴートにできるユダヤ人がいない地域では、別の人々がスケープゴートに仕立てられている。これなんかはすごく注意が必要だと思う。「アジア人お断り」的なことを今後海外で言われるケースはないとは言えないし、ひどければハラスメントの対象にされてしまうかもしれない。

同様に今後に危惧を抱かせられたのは、黒死病という災厄に直面した人々がとったと言われる2つの極端な行動パターンである。1つは、死が不可避であると悟った人々が、し残したことを片付けようと、この世のあらゆる快楽と放縦とに身をゆだねようとする態度だという。まあ、そこまでの切迫感は現状ではないのだが、「どうせうつっても若ければ死には至らないから」とあえて夜の街に繰り出す若者とか、うつることを厭わない行動に出てしまうケースは、今後も増えないとは限らない。

2つめのパターンは、ペスト流行を神の怒りの顕現とみなし、人間が重ねてきた罪に対する懲罰と理解して、厳しい贖罪行為に身をゆだねようとする態度だったという。もっと端的に言えば、自身に鞭を打つ行為が大流行したんだとか。この辺は自分もクリスチャンじゃないからわからないけど、これやられたらありがた迷惑にしかならんわなぁ。

新書なのだから、さらっと俯瞰できれば十分だと思っている。これをもっとコンパクトに理解したいなら、こんなHPがあるのでご覧いただくとよい。
世界史用語解説 授業と学習のヒント「黒死病/ペストの大流行」
https://www.y-history.net/appendix/wh0603_1-090.html

なお、1983年に出された本に今頃注文付けてもしょうがないのだが、この頃日本ではどうなっていたのかについても言及があればよかったかも。14世紀のヨーロッパでのペスト大流行の頃は、日本では南北朝時代末期で、室町幕府が安定期を迎えようとしていた頃ですけど…。

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