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海洋プラゴミを阻止する「緑の兵士」 [持続可能な開発]

緑の兵士は、プラゴミの海洋到達を阻止できる
A Green Army Is Ready to Keep Plastic Waste Out of the Ocean

Taylor Cass Talbott、Scientific American、2019年10月7日
https://blogs.scientificamerican.com/observations/a-green-army-is-ready-to-keep-plastic-waste-out-of-the-ocean/

【要約】
◆街のゴミの山をつついてその中から探しているものを回収する人々を「ゴミ拾い人(Waste Picker)」と呼ぶ。彼らは空き缶や空き瓶だけでなく、リサイクルやリユースを目的として広範なゴミを回収する。彼らは世界でも最も脆弱で負の烙印(スティグマ)を植え付けられた労働者だが、彼らはゴミが海洋に到達しないようにするために重要な役割も果たしている。

◆ゴミ拾い人の機能は地域によって違う。インフォーマルな労働者である場合もあれば、行政との請負契約に基づく組合を形成している場合もある。世界には、約2千万人のゴミ拾い人がいると言われている。組織化の有無を問わず、彼らは多くの都市のゴミの50~100%を管理する。その作業がなければ、ゴミはそのまま海に流れ着く。

◆多くの場合、ゴミは公共空間から排水路に流れ落ちるか、ゴミ収集サービスの届かないインフォーマル居住区に滞留する。低所得国や中所得国に暮らす20億人の人々は、自分たちの出すゴミをオープンスペースや排水路の近くに廃棄するしかない。ゴミ拾い人はこうした街区に深く入り、小規模な回収活動を行うことが可能であり、そこに市当局は事業助成を行う余地がある。

◆こうして、徐々にゴミ拾い人の組織が形成されていく。多くの組合がレジ袋や中古衣類を使って再利用可能な物品を製造・販売したり、中古品を回収して再版したりしている。パリでは、毎日20トンもの廃棄物が回収され、その日のうちに蚤の市で再版に回されている。

◆そう、これは開発途上国だけでなく、先進国の問題である。瓶のデポジット制があれば、資源として地域内で活用できる。住民レベルで分別や洗浄が行われていれば、空き瓶を回収するのはもっと容易になる。

◆米国に住む私たちは、ゴミ拾い人を環境サービス提供者とは見ていないのが現実。むしろ、ゴミコンテナに施錠をしたりして、回収行為に制約を課そうという動きまである。しかし、バンクーバーの空き瓶回収プロジェクトやポートランド(オレゴン州)ウィラメット川流域でのゴミ回収事業、ニューヨーク市のゴミ回収者組織と集積センター「Sure We Can(もちろん缶を扱います)」等、行政がゴミ回収者組織と連携する事例が出始めている。

◆適切な研修や、道具、インフラ、社会保護措置、ゴミ資源への法的アクセス権限や正規契約等の支援が得られれば、ゴミ拾い人はその貢献度合いをさらに増す。我々が彼らのことをもっと研究し、理解を深めれば、正規の廃棄物管理システムに彼らを包含するのを正当化するのは簡単だ。ほとんどの都市開発計画が彼ら不在で策定されてきたが、彼らこそが最も効果的で低費用で、必要とされる廃棄物管理人で、陸地と海洋の双方を守るリサイクル推進者なのである。彼ら緑の兵士たちと、政府は手を組み、海洋プラスチック災害の解決に取り組むべきだ。

これからしばらくの間、少なくとも週1回、プラスチックゴミ問題について、気になった世界の取組みや、知り合いの方の論考等を、このブログで紹介していこうと思っている。某新聞社の後援で、高校生が海洋プラスチック問題の解決法を考えるというイベントに、何の因果かちょっと関わることになった。海洋プラスチックの問題にはほとんど造詣がないが、僕がこれまで駐在経験のある国は、いずれも廃棄物管理に課題を抱えていた。自分にとってもいい勉強だと思うので、自分なりの情報収集と、その結果をブログで開陳していくことにしたい。

その1回目は、知り合いでもあるTaylor Cassさんが昨年発表した論考。彼女とは、彼女が国際基督教大学にロータリー財団平和フェローとして留学していた2012年頃に知り合った。そもそもロータリーフェローになったきっかけは、彼女がそれまでに主に北米と南米で取り組んできた、ゴミをアート作品に仕上げて価値をつける、Live Debrisという活動だった。

そして、ICU留学を終えると、彼女は活動の拠点をブータンに移した。サムドゥップジョンカル・イニシアチブ(SJI)にインターンとして入り、彼女の得意とする、ゴミを資源として再利用につなげる活動を主導した。2016年4月に僕がブータンに赴任が決まった時、当然彼女にも連絡を取った。ティンプーには行ったことがないと言っていた。そう、サムドゥップジョンカルなら、インド・アッサム州から陸路で入れるのだ。また、僕の赴任は彼女のインターン実習期間終了とも重なってしまった。

今、ティンプーでは、Clean Bhutanという市民社会組織(CSO)が、プラゴミを再利用して買い物かごや石鹸箱等、生活雑貨品を作る取組を進めている。女性をターゲットにして、そういう雑貨品製作の研修を実施し、販売店舗まで持っている。その活動が活発になっても、ティンプーのゴミが減ったという実感は正直言ってあまりなかった。また、あまりアート教育に力を入れている様子も窺えなかったので、彼女のようなアート作品を作るという取組みが、政府や市民に理解されたのかどうかについては、僕も確信が持てないというのが正直なところだ。

彼女はその後、結婚とともに拠点を北米ポートランドに移したと聞いている。その彼女の論考を久しぶりに見た。それが今回ご紹介する記事となっている。ゴミ拾い人を「緑の兵士」と呼び、その果たしている役割にまっとうな評価を与え、協働する途を探ろうという主張は、彼女のこれまでの歩みを多少なりとも知っている僕としては、とても彼女らしい主張だと思う。国だけでなく、街によっても仕組みが相当違うので、米国や日本でどこまで通用する議論なのかはわからないけれど、南アジアの多くの国では通用する議論だし、高度な分別ができていないブータンでも検討されるべき論点だと思う。

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