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『2030年の世界地図帳』 [持続可能な開発]

2030年の世界地図帳 あたらしい経済とSDGs、未来への展望

2030年の世界地図帳 あたらしい経済とSDGs、未来への展望

  • 作者: 落合 陽一
  • 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
  • 発売日: 2019/11/14
  • メディア: Kindle版
内容紹介
落合陽一がはじめて世界と未来について語る
2030年の世界を見通すSDGs。これから2030年までに何が起こるのだろう。未来を予測するためのデータには、様々なものがありますが、ひとついえるのは、これからの社会は今までとは全く違ったルールによって営まれるということ。現在の世界はどうなっているのか、これから世界はどこに向かっていくのか。SDGsの枠組みを借りながら、世界の問題点を掘り下げると同時に、今起こりつつある変化について語ります。

久しぶりにSDGsとまともに向き合った気がする。

2015年9月の制定から間もなく5年になる。以後、SDGs主流化の取組みを国連――というか国連開発計画(UNDP)が独占していた国に駐在していたりして、僕自身はSDGsと距離を置いていたのだが、2019年4月に帰国して、SDGsロゴのピンバッジを装着している通勤ビジネスマンが急増しているのには本当に驚いたし、「SDGsはビジネスチャンス」とばかりに、ビジネス書としてSDGsを扱っている本も書店店頭に並ぶようになってきた。僕自身も「Sanchaiさん、SDGsコンサルタントやったら食べていけるのに~」と言われたことがあるが、本当にそうだったようで、それを売りにしているコンサルティングサービスも急増した。

制定前の経緯を知っている者としては、この広がりは素晴らしいものだと素直に歓迎する。それでもSDGsを扱った本を読まなかったのは、自分自身でも書けたのではないかとのやっかみもあったことは認めたい。

そんな日本のSDGsは、今、新型コロナウイルス感染拡大の脅威にさらされているように思う。SDG3(すべての人に健康と福祉を)の達成が危ぶまれるからというだけではない。ビジネス界がSDGs制定時に最もポジティブに反応したということは、企業業績が悪化した場合には「それどころではない」として掲げた旗を引っ込める可能性もあるということだ。僕に近い方からも、「今はSDGsと言っても受けない」と言われた。それなら最初からSDGsで儲けようなんて考えんなよと白けてしまったが。

こんな時だからこそ、落ち着いて普遍の価値観と向き合いたいものだとも思う。近所のコミセン図書室も7月からようやく貸出業務を再開したので、そのトップバッターとして手に取ったのが、本書であった。

こういう本を今手に取ったのは、自分が今の会社を辞めても今後10年はこれで食っていきたいと思っているテーマと、1年間のお勤め期間を終えてようやく向き合えるようになり、改めてそれがSDGsとどう紐づけられるかを考えてみたかったからである。取り組み方次第では、SDGsの複数のゴール&ターゲットの達成に寄与することは、2016年にやった頭の体操でだいたい予想はできている。たぶん、今必要なのは、自分がこれから数年間身を置く地域の課題がSDGsのどのゴール&ターゲットと紐づくのかを確認した上で、地域の課題に向き合うソリューションを、自分の属するプロジェクトで提供していくことだと思う。

本書はそこまでミクロな文脈で書かれているわけではないので、直接的に答えをくれる本ではない。しかし、「SDGsはビジネスチャンス」的な論調で書かれている多くの本に比べると、それなりの深い考察があり、読んでよかったと好感が持てた。以下、例を挙げたい。

第1に、SDGs制定当時、よく耳にしていたわりに漠然としか理解していなかった「プラネタリー・バウンダリー」について、その思想的起源と位置付けられる「ガイア仮説」も含めて5ページもの記述があったこと。2009年に発表された「プラネタリー・バウンド」が、2012年の「リオ+20」国際会議を経て2015年の国連SDGsサミットにつながっていく流れが述べられている。

第2に、ジェレミー・リフキンの『限界費用ゼロ社会』への言及である。少なくとも、SDGsと「限界費用ゼロ」を紐づけて、「環境」と「経済成長」が両立する世界の実現する可能性が高まったと論じる本には初めて出会った。個人的には、『限界費用ゼロ社会』を初めて読んだ2016年以来の復習にもなった。自分自身のレンズを通じたまとめだけでなく、人にサマリーしてもらったものを読むのも参考になる。

第3に、SDGs主流化の背後にある欧州の戦略について考察している点。そうだなと思う。文脈は異なるが、循環経済ならオランダ、持続可能な都市ならスペインのバルセロナ市あたりが、グローバル・アジェンダ化をリードしている。米国や日本ではなかなか感じにくい、伝統や文化を踏まえた課題への取組みが見られる。「デザイン」や「アート」がタイトルにつくと本が売れるというのも、日本ではそれらが十分ではないというのの裏返しであるようにも思える。

SDGsは欧州的ライフスタイルから言えば当たり前のことと受け容れられやすいかもしれないが、日本ではなんだか取って付けたような感じで、議論が上滑りしているような居心地の悪さも感じていた。日本政府も、別のアジェンダを重視する声が強まると途端にSDGsに言及しなくなったりもする。日本人のライフスタイルだって昔はサステナブルでは世界最先端を行っていた筈なのだから、それを取り戻しつつ自分事としてSDGsを語れたらいいのにと思う。

久々にSDGsと向き合いながら、そんなことを考えるいい機会になった。

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