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『WIRED』日本版VOL.37 [読書日記]

WIRED(ワイアード)VOL.37

WIRED(ワイアード)VOL.37

  • 出版社/メーカー: コンデナスト・ジャパン
  • 発売日: 2020/06/23
  • メディア: Kindle版
内容紹介
◆SPECIAL FEATURE BRAVE NEW WORLD◆
特集:Sci-Fiプロトタイピング
新しい世界がやってきた。必殺の概念や素型や行動がもはや通用しない、見通しの利かない世界が。しかし、そんないまこそSF作家の言葉に耳を傾けたい。彼/彼女らが生み出す「虚構性を孕んだナラティヴ」は、混迷の時代を攪拌する未来からの視線に溢れているからだ。かつてSFの父ジュール・ヴェルヌは「人間が想像できることは、人間が必ず実現できる」と語ったが、ありうる未来を準備(=プロトタイピング)した今号を実装せしめるのは、あなたかもしれない。
『WIRED』日本版VOL.37は、フィクションがもつ大胆かつ精緻な想像力から未来を構想する「Sci-Fiプロトタイピング」を総力特集。誰も予想できない未来へと現実が分岐したいま、ありきたりな将来分析にもはや価値はない。SF的想像力こそが、FUTURES LITERACY(未来のリテラシー)の必須条件となったのだ。ウィリアム・ギブスン、齋藤精一、藤井太洋、柞刈湯葉、樋口恭介、津久井五月、吾奏伸、石川善樹、北村みなみ、ナシーム・ニコラス・タレブ、ステファノ・マンクーゾ、ドミニク・チェン、塩浦一彗、山形浩生、水口哲也、パラグ・カンナ、篠原雅武、ジュリエン・ノリン、川田十夢、水野祐、筒井康隆、ほかが登場。

新型コロナウィルス感染拡大により、週2回程度の通勤以外は平日は在宅で、週末に特別な行事も入れられず、かつ参加するイベントもオンラインがほとんどである。僕の場合は加えて左肩関節痛(いわゆる五十肩)のリハビリのため、週1回近所の整形外科に通っている。よって、今は基本的に自宅と職場と病院の3地点間の往来しかしていない。買い物も近所のコンビニかドラッグストアで済ませている。

たまの通勤の帰りに、自宅最寄り駅で下りて本屋に立ち寄ることもある。先週の出勤の際、帰りにちょっと道草したくなり、久々に本屋に入って雑誌の棚を物色していて、ダークブルーの派手な背表紙が棚に5冊ほど押し込まれているのを発見した。

幅1.5センチほどの背表紙に、よ~く見ないとわからないほどの小さな文字で、『WIRED』とあった。確かにWIREDの背表紙はふだんからこんなデザインになっているが、おどろいたのは判が四六判に変更になっていたことだ。紙の節約でも狙ったのだろうか。

パラパラとページをめくると、広告のページがものすごく少ない。そのわりに、記事と記事の間に見開き2ページにまたがるイラストをドカンと挿入していたりする。デザイナーさんがいらっしゃるのだろうけど、僕にはそのセンスがよく理解できない。とはいえ、こういう編集、デザインなのはこの手の雑誌ではいつものことなので、理解できない自分の感性に問題があるのだろうと自分に言い聞かせ、WIREDだからというので1冊買った。

特集は「SFがプロトタイプする未来」。ポストコロナ時代の世界や社会のあり方をSF小説家が描いている。なんだか1冊まるごとSF短編小説集を読んでる感じ。

これまた、SF小説をふだんから読み慣れていない僕自身の許容能力の問題もあって、SF作家が描く世界観に、すんなり入っていけないケースも多々あった。読みの集中度が足りないからか、オチが理解できないケースも(涙)。どの作品も、「2020年=コロナパンデミック」をきっかけに世界がどう変わったのか、1~2年後の視点だけでなく、2030年頃とか、今世紀半ばとか、そういう未来の姿を描くことに挑戦していて意欲的だ。人類は、ポストコロナ時代に、テクノロジーを駆使してそんな新しい社会システムを作り出しているんだろうなとは想像できる。でも、そこでのテクノロジーの適用のされ方や、文章化にあたって使われる用語が、僕の頭にスッと入ってこない作品もあった。繰り返すが、読む側のキャパの問題だと僕は捉えていますから。

一方、第二特集「NEW WORLD, NEW PERSPECTIVES 分岐した世界、描き換えられた生存戦略」の7つのインタビューと、加えて『ブラック・スワン』の著者ナシーム・ニコラス・タレブへのインタビューは、比較的読みやすく、受け入れやすかった。それらをいちいち紹介していたらきりがないが、いくつか印象的なのを挙げてみる。

塩浦一彗「都市の緩やかな分散、緩やかなグラデーション」から
 今後、緩やかに都市から地方への分散化/開疎化が進むなかで、可動産やモバイルハウスが当たり前なものとして選択肢に入る機会は増えると思います。

 今回オフィスに出向くことのバカらしさがわかり、開疎化を阻んでいた「働き方」のかせがひとつ取れたことで、この先、「生きる」と「働く」の間に存在した分断は解消されていくと、ぼくは考えています。

 また、多層に少しの人々が緩やかに行き来しながら数百人規模の「スモールバブル」的なコミュニティが盛り上がってくると思います。映画の登場人物がさほど多くないように、ひとりの人生に十分なハプニングを起こす人数は10人くらいでよく、それでなかなか面白い人生になるはず。それが起きる”界隈”というイメージです。


パラグ・カンナ「医療のグリーンゾーンに向かう、新たな「移民」の出現」から
歴史的観点から見ると、パンデミックの発生で人々は悪い場所から逃れたいと考えるため、ヘルスケアが脆弱なレッドゾーンからグリーンゾーンに移動していくでしょう。
 次の隔離やロックダウンがいつ起こるかわからず、自由な都市間移動が難しくなるなかで、わたしたちは地域に密着した生活に慣れなければなりません。それを「半径5ブロック問題」と呼んでいます。食事や友人関係、家族、新鮮な空気、公園などの観点から、少なくとも自分の半径5ブロックではよい生活が送れる場所を求めるようになり、そのための移住を考える人も出てくるでしょう。

―――なんか、今の自分のライフスタイルを示しているような気がしてしまう。ただ、こうした「半径5ブロック」とか「界隈」とか呼ばれる小規模生活圏で、友人関係までもか完結するとは思えないけれど。

「非接触」とか「分散」とかは、今よりももっと指向されるようにはなっていくのだろう。

たまにWIREDを読むのもいいかと思うのは、ふだんの僕の読書の傾向から言って多分レーダーに引っかからなかったであろう本について、貴重な情報を得られることが多いからだ。7月は本書を契機に、そこからの派生で数冊読んでみたい本がリストアップできた。

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