再読『市民自治の育て方』 [仕事の小ネタ]

市民自治の育て方 ー協働型アクションリサーチの理論と実践ー (関西大学経済・政治研究所研究双書)
- 編著者: 草郷 孝好
- 出版社/メーカー: 関西大学出版部
- 発売日: 2018/03/23
- メディア: 単行本
この本は、まだ4月下旬に読了してブログで紹介したばかり。その前回は、「協働型アクションリサーチ」という部分に惹かれて、その部分を中心にブログでも紹介したのだが、ここ2週間ほど、アイデアソン、ハッカソンとか、未だ全然読了に至ってないけれど市民のハッキングによる参加型都市開発といったテーマに関連した本を読んでいくうちに、前回まったく言及しなかったある章が、別の意味を持ち始め、それで改めて熟読しようと思った次第である。
それは、第4章「オープンデータの活用と市民自治力の向上を考える~政府の「オープンデータ2.0」戦略と官民データ活用推進基本法などをてがかりに~」(松井修視)である。前回読んだ際には、「アクションリサーチ」という言葉自体が本文で全く出て来ず、他の章と比べて明らかに異質だったこの第4章は、正直言うと「流し読み」した。ところが、その後ハッカソンで官民協働で地域の課題解決に取り組む事例を見ていくと、当該地域にあるオープンデータを活用して、課題の洗い出しと解決につながるようなアプリの開発に取り組まれるケースが結構目立つことに気付いた。また、未だ読了していないので詳述しづらいが、欧州には、市民が自らデータを生成して都市の変革に関わったり、ブロックチェーンを用いて市民がデータを保管・管理・利用するという動きが既にあると聞き、それじゃ日本ではどうなんだろうと疑問にも感じた。いずれも、市民による自治を促進する動きであり、それで本書の第4章を思い出したという次第である。
本書はしがきには、この第4章の概説として「市民自治の発展に欠かせない行政の情報インフラ構築に着目し、今日、世界各国で進展するオープンデータ制度をとりあげ、日本における同制度が、「官民データ活用推進基本法」の制定をきっかけに、「基盤整備の段階」から「データ活用による課題解決の段階」へとバージョンアップし、市民による地域課題の解決に、より有効なツールとして働く可能性があることを示唆する」とあった。この「官民データ活用推進基本法」は2016年12月施行なので、わりと最近の日本の取組みまでフォローしてくれている章だといえる。
同法のいう「官民データ」には、「人工知能関連技術」「インターネット・オブ・シングス活用関連技術」「クラウド・コンピューティング・サービス関連技術」等によって生成されたネット上のすべてのデータを含むものであるらしい。その意味では、単に行政側が収集・提供するデータ以外にも、域内の民間事業者が収集するビッグデータや、欧州では既に進んでいる市民が何らかの提言を行政に対して行うために自ら収集するデータ等も含まれるように読めるのだけれど、本章を読むと、「地方公共団体において地域の問題を住民が自主的に発見し、自らの力で、あるいは地方公共団体と協働で解決していく、ということは、そこでは必ずしも積極的には想定されていない」(p.83)とも指摘されている。そこらあたりが、まだ日本では課題なのだろう。
そういうのを市民レベルで始めようと思ったら、第一にデータに関するリテラシーが市民の間で十分じゃないこともあるし、第二に、もし必要なデータを行政が収集していない場合に、住民サイドが自ら収集するのに必要となるデータのハード、ソフト両面の知識が、一般の住民にはあまりないことがボトルネックになると思う。そういう技術ノウハウを持ったエンジニアやクリエーターが地域の課題解決に積極的に関わり、それを行政と住民がともに多とする雰囲気が醸成されていく必要があるだろう。新型コロナウィルス感染拡大を契機に、そういう萌芽が見られるようになってきたように思う。
オープンデータ、オープンガバメント―――もうちょっと理解を深めておきたい。
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