再読『ステップ』 [勝手にブックカバーチャレンジ2020]
内容(「BOOK」データベースより)
結婚三年目、三十歳という若さで、朋子は逝った。あまりにもあっけない別れ方だった―男手一つで娘・美紀を育てようと決めた「僕」。初登園から小学校卒業までの足取りを季節のうつろいとともに切り取る、「のこされた人たち」の成長の物語。
新型コロナウィルス感染拡大の影響で、公開延期となってしまった日本映画の中に、重松清原作の『ステップ』が含まれていた。重松作品が映画化されたものは少なくはないが、公開を知った当初、それがなんで『ステップ』なのか(『赤ヘル1975』あたりの方がいいようにも思えるのだが)、主演がなんであの(『全裸監督』の)山田孝之なのか、などといった疑問が渦巻き、まあそれでも公開されたら映画館には足を運ぶだろうとは思っていた。
それがこんな事態になり、僕自身も2月以降そもそも映画館に行っていないし、その間クラスターが発生しやすい映画館自体もリスク要因となって、公開予定だった映画がどんどん公開延期となっていき、そもそも『ステップ』の公開予定時期すら忘れていた。
それを思い出させてくれたのが、先週末日曜の昼下がりに、気分転換のために自宅周辺をウォーキングしていた時に聴いていたラジオ番組だった。伊藤沙莉がゲストで出て、主に自分が出演したこの映画のことを語っていた。ドジな保育園の保母「ケロ先生」役って、どう見たって伊藤沙莉がハマる(下映像)。
そんなわけで、伊藤沙莉のゲスト対談を聴いていて、そうか、そろそろ公開される予定の時期だったんだと気付いた。ここのところ難しい本が続いていた自分の読書の中でも、そろそろ小説が欲しいところだと思い始めていたので、映画公開前に、一度原作を読み直しておこうと思い立った。
『ステップ』は、元々単行本として出たのが2009年3月で、僕はそれを、インド駐在から帰国した直後の2010年6月末に読み、ブログでも紹介している(2010年6月30日)。それによると、当時相当な勢いで重松作品を読んでいて、限界効用が提言してきた中で、「最近の重松作品のラインナップ的にもかなり秀作の部類に入る。とてもいい作品」だと評価していた。重松作品はタイトルの付け方が素っ気ない、ワンワードのものがかなり多く、『ステップ』というタイトルを聞いて秀作だとイメージできる人は少ないと思う。ましてや本作品の場合は、単行本であっても文庫本であっても、表紙の装丁が桜色を背景にしてスーツ姿のパパと幼稚園児の娘が描かれている。しかも単行本の方は父娘が歩いている(ステップを踏んでいる)シーンだ。このかわいらしい装丁で、50代のオジサンは身構えるのである。
でも、これは重松清の代表作品の1つだと断言できる。山田孝之主演というのは見てみないとわからないのだけれど、妻に突然先立たれれて、娘・美紀との2人生活をスタートさせて以降、主人公・健一が出会う女性の配役―――伊藤沙莉、川栄李奈、そして広末涼子が、みんな原作のイメージと合っている(このキャストを見ていると、原作のどの部分がカットされているのかは大体想像がつく)。見てみてもいい映画だろうと予想する。
さて、なんで作品のタイトルが『ステップ』なのかというと、重松さん本人が語っているが、「義理の~」という意味で使われる英語の接頭辞stepから来ているのらしい。そうすると、作品の焦点は、むしろ主人公・健一と義理の両親との関係性、義理の兄との関係性、後半登場するナナさんと美紀との関係性、ナナさんと健一の義父母との関係性、といった点になってくる。確かに健一・美紀の父娘の10年間がベースとしてあるものの、2人と周囲の人々との関係の変化を意識して読んでいくと、結構味わいある作品といえるかもしれない。
これから読むという人には、その辺意識して読まれることをお勧めする。
タグ:重松清
2020-04-15 07:42
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