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『木戸幸一』 [仕事の小ネタ]

木戸幸一 内大臣の太平洋戦争 (文春新書)

木戸幸一 内大臣の太平洋戦争 (文春新書)

  • 作者: 稔, 川田
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2020/02/20
  • メディア: 新書
内容(「BOOK」データベースより)
木戸孝允の子孫で、日米開戦前から終戦まで内大臣を務めた木戸幸一。彼の軌跡をたどると、陸軍との深い関係、対英米協調路線への反発など、意外な姿が浮かび上がる。その一方で、日米戦回避、終戦に尽力した“天皇側近”の複雑な思考と行動に迫る、初の本格評伝。

巣ごもり読書は続いている。が、本書は積読蔵書の取り崩しではなく、新規購入。しかも、読了後は職場の同僚に譲るつもりで、早めに読んだ。

僕は4月から職場が変わり、その仕事からは外れることになった。居残っていたらやっていたであろうその仕事の中で、わけあって『木戸幸一日記』を読むことになった。図書館の書庫で確認したけれど、上下巻に分かれている『木戸幸一日記』はただでも分厚く、本当に日記だ。誰々とゴルフに行ったとか、そういうことまで記録されている。

こういう、歴史の目撃者的な人物の日記を読むときには、いつ頃どこで何が起こったか、当たりをつけてからその該当時期の日記を読まないと、本当に知りたい情報には当たらない。漠然と大部な『木戸幸一日記』など読んでるのは効率が悪いから、何年何月頃を読めばいいかが予想できるような参考図書があると非常に都合が良い。『木戸幸一日記』を読めと言われたのは割と最近だったから、それなら最近出たばかりの文春新書を参考図書として先に目を通しておいてもよいかと考えた。

ここまでの「勉強」で、僕は木戸幸一という人物にはあまりいい印象を持っていなかった。東條英機を首相に推挙したというのもそうだが、昭和天皇が皇太子の頃に欧州歴訪し、とりわけ英国王室の自由な姿を見て皇室のあるべき姿をそこにイメージされていたにも関わらず、反アングロサクソン路線に国をリードしていく片棒を担いだ。当然東京裁判では有罪だろうと思っていたら、死刑は免れて終身刑になっている。親枢軸路線に固執しながら戦争突入に導き、にもかかわらずドイツの欧州戦線での苦戦と日本海軍の敗北を見ると、一転、東條を見限って「皇室の存続」を第一にと言い始める。そもそも『木戸幸一日記』自体、何かあった時にエビデンスとして誰かに読まれることを想定して、ヤバいことはあえて書いていなかったと思われる節もある。

とはいえ、結局、近衛文麿や昭和天皇の影のようなポジションだったから、読んでいくと結局、この本は通史の概説のような形になってしまう。確かにその節目節目で木戸の果たした役割はあったと思う。でも、それが歴史上のファインプレーだったのかというと、なんかちょっと違う。最後の元老・西園寺公望との接し方とか、口はともかくとして、実際のところは胡散臭いと思っていたんじゃないかという感じがする。なんか、いろんな意味で、明治日本を造ってきた元勲の功労を無にして、かえってグチャグチャにしちゃった印象である。

なんで日本は戦争に突き進んじゃったのか―――それを考えてみる上では、本書も1つの参考にはなる。
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